一章 ②異世界到着
目を覚ましてすぐに目に飛び込んできたのは、見渡す限りの大草原
遠くまで見渡すと綺麗な川が流れており
上を見上げると翼を大きく広げたドラゴンが大空を我が物顔で飛んでいた
少なくとも、自分が今まで住んできた世界ではあり得ない光景を目にして、
初めて異世界に来たのだと実感した。
先ずは、手に入れた能力の確認でもしてみるか
そう思い手に入れた能力を確認しようとしたが…
「……そういえば、制限をかけられてたんだっけ?」
規則だからとはいえ、好きな時に使えないのは面倒臭いな…
『魔法適性』を使おうにもこの世界の魔法を知らないしな
「……王都を目指してみるか」
このままここにいても危ないし、何より食料もないしな
幸いにも、少し遠くに川も見えるし、沿って歩いていけば町も見つかるだろう
そう思って川に向かって歩き出そうとすると、突然ズボンのポケットが振動し始めた
「何か入れてたっけ?」
そう思いながらポケットの中に入っていたものを取り出してみると
「は〜い♪ついさっきぶりだね☆
元気にしてたか…」
ブチッ
俺は電話を切り、入っていたスマホをその場に置き、川に向かって歩き出した
「ちょっと待ってよ〜♪僕と君の仲じゃないか♪」
遠くから聞こえる神様の声を無視しつつ、川に向かって歩き出した
「おや?話を聞かなくていいのかい?食料とか欲しいものがあるんじゃないの?」
……くそっ、
そう、今の俺に最も必要なものは食料だ
戦う意志があれば草原にいる生き物は倒すことができるだろうが、食べられるかどうかも怪しいのだ
……まぁ、まず火を起こせない時点で倒しても無意味なのだが
「……何の用だよ」
背に腹はかえられず神様の話を聞くことにした
「あれれ〜♪結局話を聞くのかな?
やっぱり君は、僕がいなきゃダメだなぁ♪」
……人は水だけでも一週間は生きていけると聞いたことがある
やっぱりここに置いていこう
そう思ってスマホを地面に叩きつけようと、手を振り下ろ…
「まぁ、ぶっちゃけた話、スマホさえあれば、しばらく食料には困らないんだけどね♪」
…そうとしてその手を下げた
くだらない話を聞くだけで食料が手に入るなら、安いものだ
「話はそれだけか?」
そうとわかれば、こんな会話さっさと終わらせてしまおう
「うん♪もう言うことはないかな♪
じゃあ、僕は眠くなったからまた起きた時に電話す…」
ブチッ
これ以上、耳障りな声を聞いているのが、余りにもキツかったので、こちらから一方的に切らせてもらった
「……さてと、このスマホはどうやって使うのかな?」
旅に出る前に、食料の確保の仕方だけは知っておきたい
俺は手当たり次第にスマホの中身をいじくりはじめた
いじくりだしてから約5分後、食料と書かれたアイコンを発見した
試しに押してみると、何もない空中からコンビニ弁当が現れた
……しかも、ご丁寧に賞味期限が、俺が元の世界にいた最後の時間になっている
無駄な嫌がらせに、若干殺意を覚えつつもスマホのアイコンを確認してみる
すると、アイコンの横に、さっきまでなかったゲージのようなものが出ている
恐らくこれが、残りの食料の出る数なのだろう
他にも財布のアイコンや、薬のアイコンも見つけた
「じゃあ、腹ごしらえも済んだことだし行ってみるか」
こうして俺は川へと歩を進めた