三章 ➄落ち着いてください!
そして冒頭へと戻る…
俺たちはすっかり疲れ果てた体を引きずりながら、ドロシーの案内に従って安全地帯へと歩いていた
しかし、なんであんなところに鐘響石があったんだろうか?
誰かが意図的に仕掛けたとか…?いや、それは考えすぎか…、そもそも俺たちにそんなことをするメリットがない
だとするとやっぱり偶然か?
……まあいいや、あとは安全地帯に行ってから考えよう
疑問に一旦結論をつけ、ふと仲間のほうを振り返り、あることに気がついた
「……ヴィヴィがいない?」
ちょっと待て!?いつの間に居なくなった!?
「おい!リリ!ヴィヴィはどこいった!?」
「い、いきなり何よ!それにヴィヴィなら私たちの後ろに……あれ?」
「あれ〜?ヴィヴィさんがいませんよ〜?」
どうやらリリとミツキも気がついていなかったようだ
くそっ!いつからいなかった!?
「ど、どうしたんですか?」
「ヴィヴィがはぐれた!探しに行かないと!」
「ち、ちょっと待ってください!」
ヴィヴィを探しに行くために走り出そうとした俺の腕を、ドロシーが必死に引きとめる
「ちょっ!?ドロシー!?早く探しに行かないと!」
「落ち着いてください!もう、魔力も切れてフラフラじゃないですか!こんな状態で行っても単なる足手まといです!」
ドロシーがわざときつい口調で俺を叱咤する
……ドロシーの言う通りだ、突然のことに焦りすぎて自分が今、どういう状態かをすっかり忘れていた
「幸いにも安全地帯はすぐそこです。そこで一旦準備を整えましょう」
「……ああ、そうだな。完全に取り乱していたみたいだ」
「後ろの二人にも呼びかけてきださい」
「おーい!リリ!ミツキ!急いで安全地帯に向かうぞ!」
「分かったわ」「アイアイサ〜」
一応ヴィヴィもパーティについてこられるだけの実力はあるはずだ
なんとか無事でいてくれよ…!
結論から言うと、ヴィヴィはすぐに見つかった。なぜなら…
「なんで俺達よりも先に安全地帯にいるんだよぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「なぜって、『位相変更』使えますし」
俺たちが安全地帯に着いたとき、ヴィヴィはどこから持ってきたのか、ティーセットを一通り出して紅茶を嗜んでいた
「誰にも言わずに『位相変更』使うなよ!どんな時でも『ホウ・レン・ソウ』が基本だろ!」
「……わかりました、善処します」
ったく…、びっくりさせやがっ……ん?
待てよ?先に安全地帯に着いてたってことは……
「あのー…、ヴィヴィさん?」
「なんでしょう?」
「もしかしてさっきの俺達の会話を…」
「ああ、すべて聞こえていましたよ?」
………うわぁ、超恥ずかしい
気分としては、コスプレしている最中に友人に会ったような感じである
………時間を巻き戻す魔法でも作ろっかな?
「……私のことを心配してくれたのは嬉しかったですけどね」
「ん?なんか言ったか?」
「……別に、なんでもありません」
そう言ってヴィヴィはそっぽを向いてしまった
…?おかしな奴だな?
「じ、じゃあそろそろ行きましょうか」
「そうね、休憩も取れたし」
「レッツゴーです♪」
「そうですね、行きましょう」
「え?俺まだポーション飲んだだけなんだけ…」
「行きましょう」
「………はい」
…こちらの世界でも女性に頭が上がらないのは共通らしい
俺たちはまだ疲れの残る体を引きずりつつ、ウルカル山脈を超えていった




