序章 俺と少女と冤罪と
「俺、世界を救う旅やめます☆」
ある夕食の席で俺は言い放った。
周りは唖然として開いた口がふさがらない様だ。
それもそうだろう。
世界を救う筈の勇者が率先してこんな事を言い出したのだから。
俺がそんな事は御構い無しとばかりに、そのまま席を立って出て行こうとすると視界の端に何か動くものが見えた
「ちょ、ちょっと待ってください!」
声のした方に目を向けると、目が覚めるほど美しい銀髪の少女が、ガタッと椅子を揺らし抗議をしてきた。
俺の一人旅を止めようとでもいうのだろうか?
まぁ、どんなことをされても俺は意見を変える気がないがな
と言うよりもこの事は一週間前からずっと計画していたことだ、今更変更などありえない
去り際にキザなセリフでも残していきますか
「止めても無駄だぜ?俺は自由な旅に出ると決めたか…」
「私も一緒に連れて行って下さい!」
「は?」
何だって?
「私も一緒に連れて行って下さい!」
ん?よく見ると見た事が無い顔のような…?
確認を取るべくみんなの方に顔を向けるが、みんなも知らないようでキョトンとしている
「いや、悪いけど俺は自由に旅がした…」
「私にあんな事した責任、とって下さい!」
空気が凍った
何だって!?責任!?何の!?彼女とは初めて会ったばかり…のはず!
オイルの切れたロボットのような、ぎこちない動きで周りを見渡すと、皆が魔物程度なら凍死させられそうな視線でこちらを見ている。
ま、不味い…!なんとか弁明しなければ
「ご、誤解だ!俺はこの女の子と初めて…」
「私の初めてを奪ったじゃ無いですか!」
もはや空気は存在を忘れたかのように固まって動かない
ユウイチに至っては、射殺さんとばかりにこちらを睨みつけている。
…そういえばあいつ、ロリコンだったっけ…
ああ、なんでこんな事になってしまったのだろうか?
ちっぽけな俺の脳は現実逃避をすべく、周りの喧騒をシャットアウトし、この世界にきた時のことを思い出していた。