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1000文字小説

無人島

作者: 池田瑛

朝目覚めると箱の中にいた。その箱の中から出ると、そこは無人島だった。平坦な地形、島全体が白い砂浜。コンパスで描いたような小さな円形の島。その島の中心には、最初に僕が箱だと思った、港にあるようなコンテナが不自然に置いてあり、その横には何かの悪い冗談のように椰子の木が生えていた。

 僕は、打ち寄せる波を避けながら浜辺を歩き、島を一周した。2分もかからなかった。水平線しか見えないなぁという感想を抱きながら、僕はとりあえずネクタイを外した。そして、革靴についた砂を払った。

 鞄は何処にあるという疑問が頭を過ぎった。鞄には取引先から徴取した最新の月次売上が入っていた。紛失したら始末書を書かねばならない。慌ててコンテナの中に戻った。鞄はあった。資料もあったし、家の鍵もあった。社員証もあった。携帯もある、しかし圏外だった。

 コンテナの中には、誰の物かは知らないけれど、ノートパソコンが落ちていた。試しに起動してみたら動いた。何故かは知らないけれど、インターネットにも繋がった。トップページとして出てきた見知らぬ通販サイトには、タイムセールの文字と共に文庫用の本棚の画像が大きく表示されていた。990円は安いな、と馬鹿なことを考えながらクリックをしたら、「ご注文ありがとうございます。翌日配送いたします」というウインドウがパソコン画面の中央に現れた。阿呆らしいと思い、パソコンを閉じた。


 悪い夢だと思った。そして、僕は寝ることにした。ただ、コンテナの中は酷く暑かった。コンテナの壁は、夏にスーパーで買い物をした後の、駐車場に置いた車のボンネットみたいに熱かった。とりあえず、床は熱くはないので、鞄を枕にして寝そべった。


 寝耳に水という言葉が適当だろう。水の気配で僕は飛び起きた。コンテナの床が濡れていた。僕の背中も濡れていた。コンテナから飛び起きると、島は海になっていた。空を見上げると満月が僕の頭上にあった。

 コンテナの上によじ登り、僕は月を眺めながら、海水がコンテナの上にまで上がってこないことを願った。コンテナの壁にぶつかった波が、飛沫となって僕の体に落ちてくる。


 朝になり、潮が引いたので、コンテナの中に戻った。コンテナの中には、本棚が置いてあった。ご丁寧に納品書まで置いてあった。納品書には「ご新規のお客様につき、組立無料サービス」とも書いてあった。僕はそれを見て、思わず笑ってしまった。

読んでくださりありがとうございます。

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