3.遠方に友有り
遠くに住んでいる友人がいる。
一応異性で、高校の同級生だ。
数少ない親友と呼びたい人の、あまり質のよくない元彼(ついでに言うと可愛い後輩の一人にも手を出してすぐに別れた野郎)だったりするので、私の中の彼の人間性に対する評価はかなり低く、何で未だに付き合いがあるのか不明だが、人付き合いの悪い私が必要に迫られずに一番頻繁に連絡をとっている相手ではある。
…殆ど、向こうから惚気か自慢としか思えないようなメールが来て、私がその内容を返信で混ぜっ返しているだけだが。
「彼女が三日間会えなくて連絡とれなかったせいで拗ねて面倒臭い。
他に仲のいい子もいるし、揺れる」
…前置きもなく、数ヶ月ぶりに来たメールがこれだが、まぁ、いつもの事なのであまり気にならない。
「この年齢だから、別れるなら早めにした方が親切だと思うよ。
どうしたいかは、当たり前だけど、君次第。」
私の返信も、大概な内容かもしれない。
そもそもこの男は私に相談を持ちかけている訳でもなく、何となく愚痴る相手が欲しいだけなのだ。
私は、文字通り寂しい「オヒトリサマ」なので、奴のような男のメールでも、それなりに和む。
希薄、というより、あまりに乏しいが故に、貴重な交友関係だ。
食事をしたり、お茶を飲んだり、他愛のない事を話したり…「友人」とそんな事をするのは、年に一度あるかないかというくらい。
職場の人間関係は非正規であるが故に就業時間のみの間柄だし。
仕事が恋人、と言えるような働き方も出来ずにいる。
一番親しいのは、いつ干したかも思い出せない万年床の煎餅布団だろう。