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X04:摩訶不思議な世界

悪夢を見た昨日、あの後は眠ったまま起きなかった。

再び眠りにつくことで悪夢を見てしまう可能性を考えもせず。

だが、何も無かった……何も。


扉を横にスライドさせ教室内に入る。

いつもならこの時間には大半の生徒が教室内にいるはずだ。

しかし生徒の半数以上がまだ登校していない。

「……?」

遅刻しているだけだろうと思い席に着いた。

しかしSHRが始まってもこの状況は変わらない。

少し考えるがこんなに生徒が出席しない状況が思い当たらない。

高3なら就職試験等の可能性もあるが俺たちは2年だ。

病気という線も薄い。

例えそうだとしても、それならばこの状況なら学級閉鎖が行われるはずだ。


ふと出席していない生徒たちの大半の共通点を思い出す。

「そういえば……」

繁華街で騒動を起こしていた男を面白がって見ていた野次馬の中に、このクラスの生徒の多くが混じっていた。

あの一件が何か関係あるのか……?


SHRで先生は登校していない生徒全員が最近流行の風邪だと説明する。

その可能性は先程ないという結果に至った。

先生の態度から何かを隠していることは明白だ。

一体何を隠そうとしているんだ。


それを誤魔化されるように、俺一人だけ先生に怒られてしまった。

宿題のレポートを提出できなかったから。

考えること事態が無意味に思えてきた。

俺には関係ない……

それに明日になったらどうせみんな元気に登校してるさ。

多分……きっと……


悪夢を見てからの憂鬱さはまだ晴れない。



***



学校帰り、繁華街の例の横断歩道の場所に警察は尚もいた。

青いビニールシートと共に、道路を封鎖してまで。


やっぱりあの夢はココでの事件を……?

いや、そんな事件が現実で起こってたまるか!

あれは夢だったんだ……



***



家にたどり着くと、人との接触が途絶える。

今日は親もいない。

いや、今日から俺は一人で生活しなくてはならない。

結婚記念日で、朝早く両親はハワイへと旅立った。

中学までは一緒に連れて行ってもらっていた思い出がある。

だけど今じゃ留守番係として家に残される。

これから1週間、一人寂しい思いをすることになる……


制服のボタンを一つずつ外しながら携帯を手に取りテレビをつけた。

いくつかチャンネルを変えると、緊急速報が目に入った。

ニュースキャスターの声が五月蝿く早口で喋る。

翔太の声に負けず劣らず俺の聴覚から攻撃を開始し、脳を刺激しているのは確かだ。


「昨日の朝起こった事件現場はココ――」

テレビに映し出されるのはビニールシートで壁が作られている例の場所。

「――昨日、ある一人の男がここで何らかのパフォーマンスをし、目の前で渋滞状態だった車とその搭乗者達が一瞬で消える――」

まさか……

「夢と、同じ……?」

小刻みに体が震え始めた。


「――近くで男の話を聞いていた人たちは無事だったようです。しかし、彼らは小さく何かを口ずさんでいたようで――」

次に鳥肌が立ち始める。

「――未明、消された車と搭乗者が、見るも無残な姿になって――」

完璧だ……

「――と思われるその男はいまだ見つかっておらず、警察当局では――」

あの夢は、完璧過ぎるほどにあの時の光景を見せてくれていた。

ニュースキャスターは次にお詫びの言葉をしめした。

「尚、何故今になって速報として報道したかといいますと、最初に私達が現場に駆けつけたときにカメラが誤作動を起こし、皆様の元にいち早くこの事件を伝えることができませんで――」

テレビの電源を切った。

気づくと憂鬱さは消えている。

しかし、次には吐き気が増しているのを感じた。

「――――っう!」



***



翌日、やはりクラスの大半の生徒が出席していない。

「みんな……」

野次馬だったはずの傍観者たちは無事だったはずなのに、何故学校に来ないのか。

そして何故先生たちはそれを病気と偽り隠そうとしているのか。

分からないことが多すぎる……


そんな状態が数日続き、今日に到る。

最近のニュースを見ていると、例の事件をきっかけに不思議な出来事が数多く起こっている。

つい先日、ビルが氷付けにされていた事件もあった。

夜中、街中で大きな炎の柱が急に出現した事件もあった。

意味の分からない、尋常じゃない事件が最近、この現実世界で起こっている。

いや起こりすぎていた、ありえないほどに。


2階に上がり、自分の部屋に入る。

パソコンを開き、電源を入れた。

画面に左耳の折れたウサギのキャラクターが描かれたロゴが現れ、次にデクストップが画面に表示される。

インターネットのアイコンをダブルクリックすると、行きつけの掲示板サイトに向かった。


---------------------------------------------------------------------------------

ボク◆coWddy : 俺が今話題の男だと言ったら?死にたくなかったらみんな住所と電話番号教えて消えな!


ガミカミ◆0)/.l : なにいってんの?あほじゃないの?ってか〒とTELLってw教えるわけねーだろ?カスが!


ハルキ◆hasyo : ボク、お前偽者だろ!俺が本物なんだよ!


漣◇pl1rmm, : みんなやめてよ!そんなこといわないでさ・・・


ボク◆coWddy : 偽善者はウルセーヨ!さっさと教えろよ!


ボク◆coWddy : あれ?タイピング遅くない?怖気づいた?ソレトモ入力するのに時間がかかってんの?


ボク さんが入室しました。


ボク◇ffi09e : 死ね死ね死ね死ね!


ボク◆coWddy : ってか俺の偽者現れたし!ウザ!!

---------------------------------------------------------------------------------


「こういう腐った人間がいるから……」

眺めてるだけではなく、この掲示板に入室した。


---------------------------------------------------------------------------------

名無し さんが入室しました。


名無し◇glehh : お前ら、目障りなんだよ!一生その話スンナ!


カガミンさんが退出しました。

ハルカさんが退出しました。

KouennkaI(・v・) さんが入室しました。


漣◇pl1rmm, : 急にそれは・・・みんな仲良く話そうよ?


漣◇pl1rmm, : あっ!・・・カガミンさんとハルカさん行っちゃった…


ボク◇ffi09e : うわ、名無しだって!?キモ!!


KouennkaI(・v・)◆59kuex2 :皆さん忙しそうですね、誰かはなしませんか?


ガミカミ◆0)/.l : ネチケット守れよ!


ボク◆coWddy : お前らは俺の力に嫉妬してるんだな?視ね死ね氏ね死ね!


キタ=狐◇k5esa5/ja : kouenkaiさん話しましょう!!


漣 さんが退出しました。

幽鬼 さんが入室しました。

名無し さんが退出しました。

---------------------------------------------------------------------------------


無意味なことをしたと思った。

こんなことをしても何も変わらない、変わるはずもない。

この掲示板のリンクにある4.5chものぞいて見た。

予想通り、既にフラッシュまでどこかの職人が作っていた。

しかも完成度がよく、まるであの事件現場をリアルタイムで見ていたかのような出来栄え。

見ていると気持ちが悪くなってくるので、ページを閉じようとした。

「あれ……?」

何回も何十回も閉じるボタンをクリックするが戻らない。

Alt+F4でもブラウザは閉じず、他のキー入力も受け付けず、コンセントを抜いても画面はそのまま。

「どうなってるんだよ……?」

どうすることもできない俺は、その場でじっとしていた。

その間もフラッシュは流れているので、なるべく見ないように。

音量はゼロにして。


そういえば明後日辺り、親が帰ってくる。

そんなどうでもいいことを考えている時だった。

画面に突如ノイズが走り出す。


『ッザ! ザ――――』


壊れたかと思うとすぐに直った。

しかしさっきの続きのフラッシュが流れない。

画面が真っ黒に変わる。

「壊れてるのか? それとも、ウィルス……か?」

冷静に考えればコンセントを抜いても画面が表示されていた時点でその2つの可能性は無かった。

だが普通ではありえないことが起こっていたのだからそう思いたかった。

そうであって欲しかった。

そして画面が真っ黒になっているのはやっと電源が落ちたのだと。

しかしすぐにその期待は裏切られることとなる。


不意に画面の真ん中に大きく白いラインが引かれた。

画面いっぱいにラインが伸びると、白いラインの中央が上下にゆっくりと開き、それは巨大な目となった。


スピーカーから物凄いノイズ音が爆音と共に発せられる。

両耳を手で塞ぐが嫌な音は鳴り止まない。

ノイズ音に混じってスピーカーからではなく画面から声の様なものが聞こえてきた。

「…………ソコ……カ……」

かすかに笑い声が聞こえた後、爆発が起こった。

パソコンではなく、今いるこの家が。

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