表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

X02:預言者とチルドレン

自慢ではないが、他人よりは勘が冴えている方である。

唐突過ぎて何を言っているんだと思われたかもしれない。


近々お気に入りのメーカーのシューズが出そうだなと思っていたら翌日に発売され、昨日の映画の帰り、今日の晩飯はオムライスかなとか考えていたら、実際そうだった。

ここ最近勘は冴え渡っていくばかりで上昇気味。

自分でも怖いよ……

なんて言っても大した事じゃないことばかり当たるだけで、今日この町で大量殺人が起きるとか考えても実際にそうなる訳ではないしそもそもこんな町で起きるはずがない。


それにしても学校への登校中の今、一つの悩みが問題となっている。

「重い……」

重いのだ……重い、重たすぎる……身体……

例えるなら30kgの重りを背負っているような感じだ。

昨日の事が堪えたんだろうな……

って、どんだけ俺貧弱!?

にしてもこんなダルすぎる身体で学校に行きたくない訳なのである。


その行きたくない学校へ向かう登校のルートはいたって簡単。

まず住宅街を通り、近くの繁華街を通り抜け、学校へのルート。

所要時間20分程で学校には辿り着く。

そして現在位置、繁華街。

もう少しで、信号待ちで長いことで地元の人間に有名な横断歩道に差し掛かる。

あの角を曲がれば、あの角を曲がれば少しだけ休憩できる。

しかしその願いは一瞬でかき消された。

歩行者信号は赤信号なのに人々は横断歩道を渡り歩く。

車は青信号でも通れないせいかズラーっと渋滞状態。

クラクションや運転手の罵声が周囲に反響する。


その原因はすべて、横断歩道と渋滞中の車の間にいる一人の男のせいだった。

フードで顔を隠しており良く見えないのだが、たぶん年齢は二十歳前半。

体全体も白衣で身を隠している。

白衣といっても医者が着るようなものではない。

ローブと言った方が正しいのかもしれない。


「――を分け与えよう。君たちは本当に特別な存在……"チルドレン"になれるのだから……」

車のボンネットの上で男は語っている。

その周りには傍観者が40名ほど。

同じ高校の生徒も数名見える。

だがどうでもよかった。


こんなオカルト集団にはなりたくはないし、ココで休憩するにも逆に疲れそうだ。

とにかく今は学校に向かうことを最優先事項にしたい。

その方が結果的に楽な話なのだから。



「さぁ、もっと人を集めなくてはな……」

男はそうつぶやくと、今から力の証明をすると語った。

傍観者達は男の言うことを信じているわけではない。

ただ面白そうな奴がいる、それだけの好奇心で見ているだけのこと。


携帯を片手に男を写す人々。

怒りをつのらせている渋滞組みの運転手集団が、男と傍観者組みに抗議を仕掛けてきた。

『そうだな……まずは、ゴミを片付けよう。ついでにその邪魔な車も……』

運転手集団の耳には届かない声で、しかし、それ以外の者にははっきり聞こえる声でそういい終えると、それは起こった。


男が手を高々と上げ、勢いよく振り下ろすと同時に、渋滞を起こしていた車と運転手集団は一瞬にして消え去ってしまった。

傍観者達は何が起こったか分からないでいたが携帯で写真を、動画を撮りつづけていた。

次は一体何を魅せてくれるのだろうかという好奇心により。

そして、今の出来事により傍観者達は更に集まりだした。

数は80、140と、噂が人々を繋げここに連れてくる。

「ほうら、今から力を与えよう――――憐れなチルドレン達よ」

傍観者達は沸々と興奮を増していた。



***



学校の校門にたどり着くと、翔太が目の前に現れた。

俺はコマンド無視を発動。

しかし、翔太には聞かないようだ。


翔太の攻撃。

キング・オブ・ナイトについて語り出す。

精神的ダーメージ80。


俺のターン。

コマンド逃げる発動。

なんとか逃走に成功したようだ。


教室に入り自分の椅子に座ると一つため息をつく。

朝のSHRショートホームルームが始まるまでは暇になる。

ココから何をするか……翔太が教室に入ってきた時に俺が一人だと必ずあのアニメについて語りだすだろう。

だが、俺が誰かと絡んでいたとしたら?

語ってきても、もう一人のほうを身代わりにして逃げることができる。

ならばやることは一つ。

「よし、あいつの所に行くか……」

決心し俺は立ち上がった。

そして窓側に座る破間ハマ ジンの元に歩み寄った。


破間 仁――名前から想像できるのは喧嘩が強くて、学校の番長的存在。

対戦格闘ゲームにいそうな奴。

最初このクラスに破間 仁という男子がいると知って第一に思ったのがそれだ。

そして見たときの第一印象は、いじめられっ子だった。

第一印象はそのままの仁の人生を表しており、実際相当ないじめられっ子だった。

けれども俺が仁と付き合うようになってからは、仁に対してのいじめが減ったようではある。

何故かって? それは俺には変な噂があるからだよ。

ヤクザとつるんでるとか、ココじゃ言えないこととか、皆変な方向で勘違いをしている。

名前とか見た目の問題なのかな?

もう慣れてそんなこと気にはしないし、どうせそいつらとはつるまないからどうでもいいんだけど。


でもな、俺って仁とは友達じゃない。

最低な言い方で言えば玩具。

いい意味で言えば翔太と同じ扱いぐらいのモン。

仁の方は俺のことを親友だと思っているみたいだけど……


仁で遊ぼうとしたのだが、いつの間にかにSHRが始まりそうだったのでそれはやめた。

こんな俺を最低だと思う奴は、どうぞご勝手に。

でもな、人間ってそんなもんだろ?

自分を隠し悪事を働く者。

いじめられているからって、その恨みを自分より弱いものにはらす奴。

世の中そんな人間ばっか!

俺はそんな世界に変えられた被害者だ!!


今日の学校もつまらない。

勉強をしなきゃいい学校に入れないかもしれない。

けど、そういう奴ほど本性が悪人って奴が多い気がする。

テレビでもよく誰かが犯罪を起こして、身の回りの人間のインタビューで、『いい人でしたよ』『勉強もできる子でした』『そんなことをするような人には見えませんでした』ってそういうコメントが多い。

だから何? って感じなのかもしれない。

中には本当に悪い奴じゃないのがいるのかもしれない。

けどそれがどうした?

世の中の大半は悪だ。

欲望に負けて、周りに圧迫されただけで犯罪を起こすような奴らばかり。

どこからどう見ても腐っている。

俺のはまだ一般論なくらいだ。

一般論であって欲しい。

そうでなければこんな思考、生き方しか出来ない俺はどうすればいい?

こういう生き方しか出来ないのに……

可哀想な生き方といわれて惨めになればいいのか?



***



学校での一日も終わり、下校時間になり下駄箱を出る。

校門前では翔太が待ち伏せをしていた。

翔太につかまる前に裏ルートを使い、さっさと帰ることに。


下校中、朝の一騒動あった場所にブルーシートの壁ができており、警察が厳重に誰も入れないようにしていた。

報道陣も今駆けつけたところらしい。

中継の準備をしている。

「――次はちゃんと繋げろよ!」

「おーい、もう1台用意して来い!!」

何か普通じゃない、騒がしい。

偶然にも朝変なことを考えていたから、だから気になった。

だが朝の奴らみたいに野次馬になりたいわけでもない。

だから家に帰る道を急いだ。

どうせ待っていたってアソコじゃ何の情報も分かりゃしない。

テレビ局が中継の準備をしていたことだし、家でテレビを見ていたほうが分かりすい。

だから急いだ。

なんだか急いで帰らなきゃって思ったから。


***


家に着くと、今日の疲れが溜まっていたせいかどっと眠気が押し寄せてきた。

階段を上がり、2階にある自分の部屋に入ると制服のままベッドの上で眠った。

先ほどの中継を見たいという欲望さえも忘れるほどの眠気により深い深い、眠りへと。

破間 仁:(男)高校2年生

補足  :いじめられっ子。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング←よろしければクリックお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ