X15:戦場を駆けて
破滅のスイッチはどこにでも眠っている。
その起爆剤となる要因もそこら中に転がっている。
一度発動すればその逆鱗を抑えることは難しい。
風壬は前方に大きな鉄の壁を作り出していた。
鋼鉄製の分厚い壁に大きな振動が広がっていく。
「……なんだよ……あの化物は――」
震えを抑えられない風壬は四方に注意を払っていた。
「まだか……デモックス!!」
***
疾風迅雷の如くジャングルを目にもとまらぬ速さで走っていた。
「この力……これがあれば……!」
突然行く手を阻まれる。
「――デモックス!?」
黒焦げになっているデモックスが目をギンギンに光らせながら信を掴みあげた。
『小賢しい……神獣如きが――!!』
ネルガルの声が聞こえたかと思うと地面が割れ、デイアスは奈落の底に沈み、地面は元通りとなった。
「悪い、ネルガル」
再び信は仲間の元へ戻る為に急いで出発した。
***
「来た――! 来い!! デイアス!!!」
風壬はデイアスを召喚しはじめる。
そこら中に草木が芽吹き、芽吹いた地面がもぞもぞと動き出す。
それらの場所から複数の小さなデイアスが飛び出した。
その数8体。
「体の質量が減った分、攻撃力防御力共に劣りはするが、速度は奴を凌駕するはずだ……」
小さなデイアスは鉄の壁を飛び越え、向こう側にいる何かと戦闘を始める。
ものの数秒で静けさが広がる。
「倒した……のか?」
物音を立てず、気づかれぬよう向こう側を覗こうとした時だ。
突然強力な圧力に押し込まれたかのように地面にへばりついた。
起き上がることが出来ない。
ふと周囲に目をやると先程までの風景と違うのに容易に気づくことが出来た。
ものすごいスピードで周囲の風景が上から下へと流れていく。
スピードは緩み、風景は静止した。
真っ青な空に包み込まれ。
何かは足に力を溜め、勢いよく足のばねをフルに使いジャンプした。
地面とえぐりあげた鉄の壁を掴むとそのまま元の地面があった場所に向け投げ飛ばす。
先に鉄の壁と地面が落下し轟音とともに粉々に砕け散る。
破片が周囲に散らばり剣山の如く風壬が落ちてくるのを待つ。
何かは空を蹴り上げ、風壬の足を掴みその場で高速回転したかと思うと再び剣山に向け投げ飛ばした。
「まだ……だ!!」
剣山の周囲が光だし、木々が急激に成長し風壬を包み込み落下のスピードを和らげた。
***
「何……だ、あれは……」
信は上空に浮かぶ黒い影に気づいた。
「風壬……か?」
ネルガルの力を借り跳躍する。
手にはシックル・オブ・ッザ・ゴッド・デスを2本携え、乱回転しながら影に切り込みに掛かる。
しかし目の前にいた人物は風壬ではなかった。
「はっ!? ミルク……ちゃん?」
勢いを利用している今の攻撃を中断することが出来ない。
跳躍と回転の勢いは止まらず信はミルクに刃をつきたてた。
『ほうほう……これはまた、何故崩壊者が――』
シックル・オブ・ッザ・ゴッド・デスは強大な力に押されるかの如く折れ曲がり、紙切れのようにグシャグシャになると砂塵となって消えた。
『気をつけろよ……小僧……幾万の死を体験したくなかったらな……』
ネルガルはそういい残しミルクの体にまとわり付いた。
「――なんで!?」
ミルクは抗うかのように体をよじり、世界に響くほどの重低音の雄たけびをあげた。
目には黄色い光が宿り、まるで獣のように体を曲げる。
頭には天使の輪のようなものが浮かび、背中には十字架を背負っている。
「風壬……一体ミルクちゃんに何をしやがった!!」
一旦ミルクちゃんから距離を取り異様なほど木が育っている密集地帯に急降下する。
すると萩野が倒れているのが視界の隅に入った。
「――――ック」
萩野はゲームオーバーか……風壬!!!!
萩野を抱きかかえながら周囲を確認する。
すると大きな木の塊が宙に浮いていた。
綺麗な流線型の形をしており、微かに心拍音のようなものが聞こえる。
それがあちらこちらに何十個もある。
そしてそれらに取り囲まれるかのように風壬が立っていた。
「あの餓鬼の力……アレを手に入れれば俺は実質最強クラスに……!」
ミルクちゃんを睨み付け不敵な笑みをこぼす。
異様な光景を横目に信は斬鉄剣を右手に握り、じわりじわりと背後から風壬に近づく。
「目覚めよ……神殺しの……パーティの始まりだ!!」
風壬は覚悟を決めたかのように宣言をした。
一人の少女の命を奪うという決意を。




