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X12:愚者による狂乱の狂喜

施設の外で楽しく遊ぶ幼い男の子二人、少女が一人。

その光景を思い出しながら目を開く。

身体を起し、ベッドの上にある携帯に手を伸ばし電話を掛け始める。

「俺だ、拓……例の件について何か分かったか?」

『大まかだけどお前が満足できる程度の情報を得たぜ?』

気彌は深呼吸し覚悟を決めたかのように話を聞きだした。

『奴らアラガミの目的は世界を統べる事だといっていたがコレはあながち間違っちゃいない』

「あながち……?」

『あぁ、どうやら奴ら、神様を殺しに掛かるらしい』

「随分たいそうなもんを奴らは敵に回すんだな?」

『嫌……そうでもないみたいだ、どうやら奴らも同じみたいだからな』

同族同士で潰しあう……一体何の意味が……?

「奴らが神だという証拠は?」

『知らない方がお前のためかもしんないぜ……?』

「そうか……」

『それにしてもお前は何を企んでるんだ? この前は国のある研究機関を調べてくれというし、その次はアラガミたちについてだ。さっきの油井たちへの復讐の任といい、さらにソレのサポートをしろって、お前の目的って一体……』

「なぁに、俺は俺のやり方で、あいつとは違うやり方で再建を願ってんのよ」

『再建……?』

「あぁ、日向達の目的でもあり、俺の目的でもある、帰る場所のな……」

そういって気彌は携帯の通話を終了した。

「始めようか……表裏一体の過激な活劇を……」

鋭い眼光が遠い未来を見据えていた。



***



それにしても、こいつらも俺らがいたホームにいたんだよな……

ジャングルを歩く気彌と蛾裡と日向。

こいつらと俺のチーム、紅があればアラガミ達を潰して、ホームの再建が出来る筈――!?

『言い忘れていることがあった。このゲームには全てのゲームにおいて共通のルールが制定されてある』

「ゼウスか――」

『つまり多くの神力使いを倒した者ほど、生き残る可能性が高くなる! そのことを忘れず、ゲームを楽しんでくれ』

「気彌!!逃げ――!!!!」

突然蛾裡が爆発した。

「蛾裡!?」

蛾裡の近くにはアラガミと、拓の姿が。

「やぁ、裏切り者」

アラガミがにこやかな笑顔で返事をする。

すぐさま逃げ出す日向と気彌。

蛾裡のことが心配だが今はそれどころではない。


アラガミが呆れたように愚痴をこぼす。

「まだまだ不完全か……脆弱で愚かなチルドレンよ」

拓は喋らず、蛾裡から奪ったバクで続いて逃げる日向を殺す。

「止めろ拓!!」

拓は震える声を絞り出しながら応えた。

「悪い……俺は、自分の命が……大切……なんだ……!」

気彌は常備していたナイフを投げつけ拓の胸を貫かせた。

「アァ~ラァ~ガァ~ミィ~!!」

歯を食いしばり全ての殺意をアラガミに向ける。

「チーム紅の全総力を持ってお前を殺してやる!!」

「ほう、ソレが出来ればいいんだがな?」

アラガミは気彌の頭を鷲掴みし地面に叩きつけた。

「前にもこんな光景を見たな?」

「放しやがれ――!!」

もがく気彌を尻目に余裕を見せるアラガミ。

「今回は対価としてお前が手に入れた拓の力を貰おう……なぁに、日向と蛾裡の力をお前が使えるようにはしてやる。拓の人を操る神力に比べれば安いものだ」

意識遠のく中、必死に気彌はアラガミの手を引き離そうとした。

しかし圧倒的に力の差がありすぎた。

「さっさと眠れ――」

気彌の意識は完全に潜り込んだ。

心の奥底へと……



***



「ど・れ・に・し・よ・う・か・な、天の神様の言うとおり~♪」

誰から始末するか悩む風壬。

「や~めた。やっぱりこういうのはおんにゃの子からだよねぇ?」

そういうと萩野とミルクの頬を撫で回す。

「安心しろよ? お前は最後だ、クズ」

体は動かず、意識を保つので精一杯な信。

風壬を止めたいがどうしようもない。


風見は両腕の袖を巻くりあげ、地面に両手を叩きだした。

すると辺りの木々がざわめき、鳥達が大空に舞い上がった。

「こんな力でも役には立つんだよなぁ」

一体どんな神力を使用したのかは分からない。

唯一つ言える事は、辺りの木々が異様な動きを見せているということ。

一本の木がまるで生きているかのように、枝を伸ばして彼女ら2人の腕を掴み、宙に吊るし上げた。

「まだ意識はあるかよ? あぁ!?」

風壬が不意に信の横っ腹を蹴り上げる。

無抵抗な信の髪を持ち上げ、顔を近づけた。

「俺の本来の神力は木を操る神力。こんなことだって出来るだぜ?」

髪を離したかと思うと、何かに意識を集中しだした。

再び辺りの木々がうごめき、枝を萩野とミクルに伸ばす。

まるで触手のように動く枝は、彼女らの体の隅々に絡みつき、徐々に締め上げていく。

少女達はまだ意識が残っているのか、頬を赤らめながら無抵抗に攻撃を受け、辱められていることに悔しく泣いた。


「……ッ」

悔しくて、悔しくて、信も涙を流したかった。

2人が辱められて、傷つけられて、泣きたいわけじゃない。

無力だからといって悔しいわけではない。

こんな変態にやられるからでもない。

だからといってその理由が分かるわけでもない…

悔しい、悔しい……


ぶつぶつと独り言を言い続ける風壬。

「そろそろ、飽きてきたな……犯すか?」


「………ッ!」

もぉ、こんなのはいやだ。

あいつらが傷つけられるのも見たくない。

俺がかっこ悪いとこも見せたくない。

なら、どうする?

そんなの決まってる。

「………せッ!」

「あぁ?」

風壬は辺りを確認した。

声が聞こえたからだ。

しかし、声の主はこの動けない3人ではない。

そう固定観念をもっていたため、気のせいだと自分に言い聞かせた。


「……だせッ!」

再び聞こえてくる声。

だが辺りを見回しても、誰もいない。


「……をだせッ!」

先ほどから聞こえるが、どこから聞こえるかも分からないでいたため、風壬は吼えた。

「誰だ―――――!?」

突然顔面横に強烈な右フックが入った。

「根性をだせ、俺!」

「まさか……そんな……」

普通であればあり得ない光景。

普通であれば想像できやしない光景。

風壬はそれを目の当たりにしている。

そう、2本足で立つ信。

そしてその右手に握られた、燃え盛る刀。

「これでSHOW TIMEは終わりか?」

信は自分でかっこよく決めたつもりでいた。

そして、段々冷静になってくると、目の隅にちらちらと見える赤い何かに気づいた。

その赤い何かは右手から出ているらしい。

それを見た途端に斬鉄剣を投げ出した。

「ウワッチィ!!」


風壬は自分の力に絶対の自信を持っていた。

それを目の前にいる、先程まで平伏していた男に破られたのだ。

プライドを傷つけられて黙っている彼ではない。

「あぁぁぁぁあぁぁぁぁあ! お前チョンボだわァァアァア!!」

両腕を地面に叩きつけた。

「後悔し切れないほどの絶望を味わえ!!」

大地が軋み、大気が揺れる。

空気中の水分が減ったのか喉が渇き始める。

「冥土の土産だ……骨の髄まで堪能してくれよ?」

風壬の殺意の矛先が完全に信に向けられた。

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