X11:辛苦のSHOW TIME
□前回までの話□
少しばかり精神が病んでいる青年、漸芽 信。
ついに開幕した死者を生むファーストゲーム。
生き残れるか運命を握る2つの鍵。
そして、ジャングルに潜む扉。
その先に待ち構えるのは希望か、絶望か。
人類は歩むべき本来の道を踏み外しだした…
強爆裂の欠片に気づいたものの行動に移す前に爆発は起こった。
欠片だと言うのに強烈な威力があり、人を簡単に吹き飛ばす。
その勢いのまま後方で爆風によってしなっていた木にダイレクトに激突する。
辺り一面には爆発の際に起こった砂煙が蔓延していた。
「……どこだ?」
ひしひしと感じる。
あいつがまだ生きていることを。
あいつから受けた痛みを知るこの体が、感じている。
ふと耳に一つの足音が。
「そこか!!」
足音が聞こえた方向に斬鉄剣を振る。
斬鉄剣の刃から鋭い風が発せられた。
風の刃は一直線に煙を切り裂き、気彌の体すれすれのところを通り抜けていく。
「とうとう力を出す気になったか? だが忘れるな……俺本来の神力を!!」
再び煙の中に身を隠す気彌。
奴の本来の神力?
「このままじゃ……」
気彌の本来の神力……それは千里眼。
全てを見通すことの出来る眼。
ホント、厄介な奴を敵に回したもんだよ……俺は。
信は気彌がいると思われる場所に飛び込み、切り込みにかかった。
「どこを狙ってる? 俺はここだ」
声のするほうに、斬鉄剣を再び振る。
風の刃が何かを切り刻む。
しかしそれはただの木。
「ほらほら? ここだって言ってるだろ」
声のするほうに攻撃を仕掛けるもそこにはただの木があるばかり。
一体どういうことだ?
信の後ろにうっすらと大きな眼が3つ、光り輝いた。
「……!!」
後ろから何かが迫ってくる。
信は危険を感じ、その場でどこかに逃げるでもなく、跳んだ。
信のいた場所を地面ごとえぐる何かは煙の中に消えていく。
「これは……! デイアスか!?」
「ご名答! だが、気づくのが遅すぎたな……!」
頭上からデイアスが口を大きく開けて迫ってきた。
地面ごと食い千切り、そのまま喉に流し込む。
「やったか――?」
「まだまだぁぁあああ!」
斬鉄剣を盾にデイアスの起動を反らすことに成功し何とか一命を取りとめていた信。
「ならこれはどうだ? ――――羅生門――――」
足元に扉が出現する。
重力には逆らえず落下するが淵に何とか手をやり、頭と手だけを地上に出した。
「……怪物と闘う者は、その過程で自らが 怪物と化さぬよう心せよ」
気彌の足音が近づいてくる。
「……おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ……フリードリヒ・ニーチェ著、善悪の彼岸146節……知ってるか?」
目の前で気彌が俺を見下ろす。
「博学アピールか……?」
けなすが立場が悪いことに変わりは無い。
「深遠に落ちて朽ちろ」
扉の中に落ちまいと支えていた手を足でなぎ払われてしまう。
「なっ……!」
扉の中に完全に吸い込まれ、扉は完全に閉じられた。
暗闇の中をグングンとスピードを上げ深淵を落ちていく。
「終わったよ……」
自分がどれだけの時間落ちていたのか分からない。
今どれだけの落下速度で落ちているのかも分からない。
ただ再び扉の中に落ちるまでは。
新たな扉を通過後、先程と同じ光景が眼下に広がる。
ふと目の隅に白い何かの塊が移る。
その塊は横一直線に閃光のように空を走り抜ける。
信めがけ。
やっと外に出れた安心感を力に変え、斬鉄剣を横に構えると体を横に回転させる。
白い塊が通過する時、体の回転で車輪のように回る俺はソレの上を走って攻撃を受け流した。
さすがに体で直に受け流すとなるとダメージの予測が出来ない為、斬鉄剣を盾にして回っていったのだが、それで幾分かは奴にダメージを与えれただろう。
あの白い悪魔、デイアスに。
デイアスは大きく旋回し再びこちらに向かって飛んでくる。
空中ではさすがに不利なのが分かるが今は耐え忍ぶしかない。
デイアスとの衝突に向けタイミングを見計らっている時だ。
再び扉が下に現れ、次はデイアスの目の前に落とされた。
「ック――!」
斬鉄剣で何とか直撃は防げたものの横方向に飛ばされてしまう。
そして次は飛んでいった方向に扉が出現し再びデイアスの前へと戻されてしまう。
「ありえねぇ!!」
このままでは永遠に空中での攻防を繰り返さなければならない。
それも俺が死ぬまでエンドレスに。
それにはやはり相手も気づいているようで、さすがに攻撃方法を変えてきた。
「デイアス×羅生門 in 駁」
デイアスの動きが変わる。
すると気づかないうちにデイアスが真上にいた。
かと思うと下から現れ俺を上空に吹き飛ばすとさらに上から地上に向かって叩き落す。
今まで以上の落下速度で全身の皮が剥がれそうなぐらいに波打つ。
だが関係ない。
この勢いを利用しない手は無いのだから。
「待ってたぜ? この時を……!」
信は気彌目掛け落下していく。
気彌は微動だにせず再び信の目の前に羅生門を出現させた。
「何度も同じ手はくうかよ!!」
斬鉄剣を振り風の刃を放つ。
その威力の反動を利用して扉への落下起動をずらす。
しかしその程度では次の対策を打たれるだけ。
気彌はさらに扉の数を増やし落下する辺り一面に扉を出現させた。
さらにデイアスも軌道をずらさせまいと再び一瞬で後方に現れる。
不意に何かに掴まれる感触がした。
***
目の前に写る光景。
先ほどまでの光景。
そして、目の前に立つ女。
「……まさか!?」
脳裏に一つの答えが導き出される。
萩野が瞬間移動させた――
「なんだよ、それ……」
焦点がうまく定まらない。
胸の衝動を、興奮を抑えられない。
「もしかしたらあいつをヤレ―――――!?」
強烈なビンタが俺の左の頬に命中した。
「――――!??」
言葉を出そうにも、何を言えばいいのか忘れてしまった。
さっきまで言いかけていた言葉さえも。
「……あの時何をしようとしたの……?」
考えるまでも無い。
しようとしていたことを素直に話す。
「敵を殺そうとしたんだよ! 危険な奴なのに、倒せるときに倒しておかないと今後どうなるか分からないのに!!」
萩野は唇をギュッと噛み締め、顔を見せようとしない。
「人殺しになって欲しくないの……それに――」
萩野は涙を流していた。
いつもは五月蝿くて邪魔な存在なのに、今日の萩野の様子は少し違っていた。
「死んで欲しくないの! 心配してるの!!」
なんだよこれ……。
この俺の中の虚しい気持ちは何だ?
「……それぐらい、分かってよ……」
胸が締め付けられた。
何を言えばいい?
俺はこういうとき、なんていい返せばいいんだ?
「俺……あの……、ゴメン……」
今の精一杯がたったの三言だった。
***
少し休憩を取ると、再び足を進めることになった。
右ポケットに手を突っ込み、鍵があるか確認した時だった。
「あれ……? なんで……」
ポケットには金の鍵が2つ。
見知らぬ鍵しか入ってなかった。
俺の銀の鍵は?
それにこの鍵はいつの間に……
ポケットを探っても他には何も出てこない。
このことは黙っていよう。
この鍵があれば2人は扉を見つけた時点でクリアできる。
俺は襲われる可能性があるのだこの2人に。
人間、極限状態になれば何をしでかすか分からない。
こうなってしまった以上成り行きに任せるしかないだろう。
顔を前に戻すと2人が歩みをやめていた。
「早く進めよ?」
尚も動かない。
「俺だけでも行くぞ?」
そういって2人の間を掻き分け、前に進んだときだ。
仮面をつけた誰かがそこに浮いていた。
木にロープを巻きつけ、首を吊って死んでいた。
目をそらし、別の道を行きかけようとした時、見知らぬ声が耳に入ってきた。
「……制裁を、制裁を、制裁を……」
この言葉、どこかで聴き覚えがある。
辺りを見回した。
「どうしたの!?」
萩野が声をかけてきた。
「この声……どこかに誰かがいる……」
「声? 何のこと?」
萩野たちには聞こえていないのか。
「……聞こえる……アソコ」
ミルクちゃんの指差す方向には死んでいるはずの仮面の者。
「我等に制裁を、彼らに制裁を、愚かなる者どもに制裁を!!」
仮面の者のぐったりしていた顔が正面を向き、手でロープを引きちぎると地上に降り立った。
とにかく近くに落ちていた使えそうな木の枝を手にした。
「……制裁を、制裁を、制裁を……」
「逃げようよ?」
「逃げても絶対追ってくるぞ、コイツ」
「ヒッヒッ!」
手に火の玉を発生させたかと思うと、こちらに向かって投げてきた。
しかし狙いは定まっておらず、火は辺りの木々に燃え移った。
とにかくやるしかないと思い、丈夫そうな木の枝で仮面の者の頭部に殴りかかる。
仮面の者は微動だにせず、木の枝が折れてしまった。
「どうなってやがる!?」
「やっぱり逃げよう?」
逃げられるはずがない。
辺りは既に火事で逃げ場のない状態になっていたからだ。
――――ッピシ!
突然仮面の者の仮面にヒビが入り、割れて地面に落ちた。
「あぁ……あぁああ?」
目はどこを向いておるか分からず、口からはヨダレが流れっぱなしだった。
「何なの!?」
「薬でもきめてんのか!?」
さっきから喋らないミルクちゃんが気になり、ミルクちゃんの方を見ると、目をつぶって何かを呟いていた。
「ったく、こうなったら俺の拳に賭けるしかないのか?」
仮面の者が突然自分の顔を手で覆い始めた。
「あぁぁぁぁぁああ!! 見るな見るな!!! 私を憐れむな!!! 力を見せるな!!!!」
自分の顔に火をつけだした。
「早くあの火を消さないと、あの人が!!」
萩野はそういうが、もぉあの人を助けたところで、きっとあの人は救われない。
再び襲いにきて返り討ちにあうのだから。
この戦いの中で生き残れる術を失うからだ。
だから……
拳を仮面の者のがら空きの懐にぶち込む。
頭のときとは違い、攻撃として当たったのが分かった。
仮面の者はそのまま気を失った。
すぐさま、ミルクちゃんが男の火をケアを使い消し去り治癒して助けた。
辺りの火も、戦いの最中にミルクちゃんが力を使い消していたらしく、元通りに戻っていた。
俺は仮面の者のポケットに手を突っ込んだ。
「何してるの!」
萩野の問いかけに答えず、ある物を掴んだ。
「……鍵……」
ミルクちゃんがそう呟く。
「そう、俺達が生き残るにはこの鍵が必要なんだ」
信の手には金の鍵が握られていた。
これで3人分の金の鍵はそろった。
後は俺の銀の鍵を手に入れれば、みんながクリアできる。
しかし鍵のことについてタイミングを逃せば怪しまれてしまう。
金の鍵の事を2人に話し、渡そうとした時。
2人ともその場に倒れこんだ。
「どうしたんだよ? こんな時に――」
そういう俺も急に疲労が増して、今にも倒れそうだった。
「よくも、人様の獲物を横取りしてくれちゃってぇ~」
「誰だ……!」
ジャングルの向こうから一人の男がこちらに向かって歩いてきた。
「無駄だ……お前は僕に何の抵抗も出来ない。こんな単純な罠に引っかかるお前はね」
呼吸が荒くなり出し、喋るのも辛くなり始めた。
「何を……する気、だ……?」
「あぁ? ゴメン、聞こえねぇ~よ!」
体がまったく動かない。
「でも一つ、冥土の土産として教えてやるよ!!」
そろそろ正気が保てなくなり始めた。
「俺様は風壬。木を操る神力の持ち主!」
神力を話すと言うことは勝ちを確信していると言うことか……
「お前達は俺が持つ神力の一つ”体力奪いの神力”にやられてるんだよ!!」
「……ッ」
このままじゃ、やられる。
「さぁお喋りはココまで。始めようか……? ……SHOW TIMEを……ね」
仮面の者:(男)不明
神力 :火
発動条件:不明
補足 :意味不明な言動。
風壬 拓也:(男)高校1年生(推定)
神力 :木
発動条件 :不明
補足 :他者から奪った体力奪いの神力で信らを追い詰める。




