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幼少期(1)

駄文ですみません。

主人公の性格は悪いです。

 ふわふわと身体が水中を泳いでいるような感覚だった。

 温かくて心地よい空間に安心して身を委ねることにした次の瞬間、何者かの手によってそこから引きずり出された。



「おぎゃああぁぁ」


「産まれましたよ!可愛らしい女の子です!」


 ……あれ?

 ここどこ?今の赤ん坊の泣き声ってもしかして私?


「あなた…ごめんなさい。跡継ぎを産んで差し上げられなくて」


「仕方ないさ。次に期待しよう」


 今のってお父様とお母様の声よね?

 

 二人の顔が見たくても何故か瞼が重くて開かない。しかも物凄く眠いんですけど。

 ていうか私って確か死んだはずよね? 夫の愛人に刺されてそのまま意識がなくなって、それから……。


 それから?

 それからどうなったの?


 あれこれ考えている間に急激な眠気が襲ってきた。


 ああ眠い…

 もう駄目。限界かも…。

 

 眠りの世界に身を落とす直前、私は心の中で絶叫した。


(いったい何がどうなってるのよ~~!?)




***


 結論からいうと。

 私はどうやらタイムスリップしたらしい。


「美散お嬢様~。いないいないば~!」


 使用人のタエが私をあやしているので仕方なく、きゃっきゃと喜んでいるフリをする。


 状況を簡単に整理すると、私は23歳の時に夫の愛人に刺し殺されて、気がつけばタイムスリップして赤ちゃんに戻っていたってことみたい。アンビリバボー!

 信じられない話だけど、生前と同じく桜庭財閥の一人娘、桜庭美散さくらば みちるとしての人生をやり直すことになったのである。


「おい。旦那様と奥様はいつ頃戻られるんだ?」


「さあ…。奥様と美散様が退院されてすぐに、二人して別宅の方に行かれてしまわれたからねぇ…」


 お父様とお母様は生まれてまもない赤子の私を本邸の使用人達に任せて、二人仲良く別宅に行ったきり1ヶ月も戻ってこないらしい。

 お父様は男の跡継ぎを望んでいたから私には興味ないらしいし、お母様はお母様で私の世話をするより夫の側にいたいみたい。夫第一主義のこの人に母性愛を求めるのは無謀ね。


 ……面白いほど死ぬ前の人生と同じだわ。


「タエさん。美散様が赤ん坊に見えないおっかない形相をしているぞ」


 おっと。いけない。可愛らしく微笑んでおかなきゃ!


「何をおっしゃっているんですか竹林。お嬢様はこんなに喜んでいるでしょう」


「あれ?でも確かに今…」


「無駄口はいいから、自分の仕事に戻りなさい」


「はあ…わかりました」


 庭師の竹林が居なくなり、その場には私と世話係に命じられたタエだけが残った。


 タエの私に対する慈しんだ瞳を見て胸がチクリと痛む。


 前の人生での私は、別宅にいることの多い両親に会えない寂しさから、度々癇癪を起こしては暴れ、我が儘を言っては困らせてタエや使用人達を散々振り回した。


 さすがに今は精神年齢的にあの頃のように両親を恋しがることはないが、せっかく与えられた二度目の人生は使用人達から好かれるように努力しなくちゃね。

 あの頃のように陰で桜庭一族の恥娘なんて言われたらたまらないもの。

 性格や環境は変えられないかもしれないけど、努力や選択肢によっては前とは違った人生を送れるんじゃないかしら?

 我が儘放題やりたい放題に育って、23年後にグサリと刺されてご臨終なんてあんまりだもの。


 という訳で、とりあえずは赤ちゃん生活を受け入れて、せいぜい保護欲を掻き立てられるような愛らしさを振りまいて周りを懐柔しないとね。


「う~!だああぁ!」


 私は気合いの声をあげた。


 私の奇声(?)を聞いたタエは、何を勘違いしたのか嬉しそうににっこり微笑んだ。


「あらあら美散様。いないいないば~!」



 ……なんだかなぁ。

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