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転生するには恥ずかしい死因

 『プロフェッショナル――活動の流儀――』


―――あなたにとって恋愛とは


 「僕にとって恋愛とは、なんですかね、尊ぶべきものですかね。恋や愛をしてる人間の表情って美しいんですよ。その一端に関われると僕はうれしいですね」


―――100組以上の恋を成就させ、皆さんから『恋愛マイスター』と呼ばれている件については


 「僕はあんまりそういう風には思ってないですね。ただお願いされたことに真摯に取り組む。その結果がたまたまうまくいっただけなので」


―――プロフェッショナルとは、


 「関与はしても干渉はしない。あとは必要以上の喜びを求めないこと、だと思います」


 信念をもって恋愛というものに向かい合う望月《もちづき》満《みつる》さんは、今後どれだけ多くの人間を幸せにするのだろうか。


◇◇◇

 

 懐かしいドライブに入っていた映像を見て、体の内側からこそばゆい気持ちになる。なんでこんなのが残ってたんだ。 

 この映像はたしか、僕がカップル成立100組目を祝されて謎の勢力もの元作られたNHKの人気番組のオマージュ動画だ。

 最初はノリノリで撮影に参加していたものの、完成したものを見たときに恥ずかしさが上回って差し止めしてもらったものだ。


 僕は動画を消去しようとするが、少し申し訳ない気持ちになり秘密のファイルに移す。ちなみにそのファイル名は『国家機密のため厳重注意』である。

 それにしても、


「どれだけの多くの人間を幸せにするのだろうか、ねえ」


 寝転がりながら異世界ファンタジーハーレム小説を読んでいる僕には、縁もゆかりもない話だろう。

 

 かつて恋愛マイスターと呼ばれたその男は、現在二次元の恋愛に思いふけっている。

 五時のチャイムが鳴るまでの今日の行動ログは、寝返り32回、トイレ2回、それ以外は布団の上から微動だにせず今日一日を終えようとしている。まるで人間界のナマケモノである。


 だがその天地の差のある行動の変化には理由がある。それは『燃え尽きてしまった』のである。

 100を超えた恋愛のサポートをしてきた結果、一つ一つの新鮮さがなくなっていき、150を超えてからは異常にモチベーションが消え去っていった。

 

 そこで辿り着いたのが、二次元である。


 質の良いラブコメをオールウェイズで提供してくれるコンテンツに首ったけになってしまった望月 満はだんだんと活力を失われていき、今に至る。


 ぐ~っとお腹が鳴るので時計を確認すると、スマホの左上の時計が5時28分を示しており、さすがにミイラになるつもりはないので晩御飯を買いにコンビニに向かう。


  

 夏の夕方はあまり日が落ちてはおらず、一日中家に引きこもっていた僕にはその光がじんじんと差し込む。

 それに加え、夏は普通に暑い。早く帰りたい。


 そんな理由ですたこらさっさとコンビニまで歩いていくと、女性二人がそのコンビニの前で喧嘩をしている。

 

 金髪に白い肌、それを引き立てる白いワンピースを着た方が「私の方が彼の事先に好きになったんだから先に別かれてよ!」といい、

 

 それに対して、茶色の髪に小麦肌、その引き締まった身体を見せつけるスポーティーな恰好の方が「私の方が先に告白して付き合えたんだから、そんなの関係ないでしょ!」と言い返す。


 どちらも可愛らしい女性だ。喧嘩の種の男には、少し嫉妬してしまうね。


 なんとかしてやりたいのだが、関与はしても干渉はしない、僕がここで何かをすることはすでに干渉になってしまうのだ。


 現在は確かに恋愛マイスター(笑)だが、プロフェッショナルとして、人生のモットーとして掲げてきたものはそう簡単に曲げることはできない。

 

 ごめんね、と思いながら僕はおにぎり数個とロー〇ンのサクサク食感のつな揚げ158円(税込)を購入する。


 ビニール袋に詰めてもらい店を出ると、騒々しかった喧嘩もひと段落していた。


 恋愛で付き合える人間がいれば付き合えない人間もいる。なんとも悲しい事実だが、関与する以上はそれと向き合わなければならない。


 過去の悲しい出来事を思い返しながら彼女たちの方を見ると、金髪の、おそらく付き合うことが出来なかったであろう女性が走り去っていく。


 強く生きろよ。男なんてものは星野数ほどいるんだからな。時に、逃げるは恥だが役に立つからな。


 そう心の中で女性に向かってエールを送ると、どうやら本当に星の光のようなものが彼女目掛けて向かっていく。


 いや、あれは……トラックだ!


 このコンビニは住宅地の真ん中にポツンと建っているもので、見通しが悪く、その上幅も狭い。どうやら走ってきているトラックには気付いていないのだろう。


「麗華(れいか)、危ない!!」

 小麦肌の女性が叫ぶ。

 突然の叫び声に反応するも時すでに遅く、彼女の立っている場所はトラックの進行ルートの上だ。



 僕は叫び声と同時に無意識に、今日一日分蓄積していたエネルギーを開放して金髪少女に追いつき手を引いて後ろに引っ張り、僕は作用反作用の法則に則ってトラックの方へと向かって加速する。


 ドンッ、と鈍い音と共に強い衝撃を感じ、視界がどんどん薄れていって,,,ないね。

 

 なんかすげー意識残ってるな。

 ただ完全に残っているわけじゃなくて、例えるならご飯の後の怖い顧問の先生の授業受けるときのような、ぼんやりした感じの意識だ。


 残った意識をなんとか手繰り寄せて周りを観察しようとするが、頭から下がまったく言うことを聞かない。


 トラックの運ちゃんが急いで降りてきて、「大丈夫か!今救急車呼んだから、頑張れよ」と声をかけてくれるがなんとも返事できない。


「ごめんなさい!私のせいで、本当にごめんなさい!!」

 金髪少女の麗華さんがワンピースの裾を握りしめ謝りながら大粒の涙をこぼす。


 燃え尽きてしまった僕に残っている後悔はあまりない。最後に人を助けて死ねるのなら本望だろう。できれば今読んでる『異世界に転生したら魔法の才能があってハーレムできちゃった』の続きが読みたかったな。なんかよくあるやつで面白かったんだよな。


 ぼやけていた意識も夕日が落ちるとともに薄くなっていく。顧問に起こられる恐怖以上に、睡眠欲に軍配が上がっている。


 だんだんと狭まってく視界の中に、謝罪と啜り泣きの音でいっぱいになる。

 

―――そうだ、後悔なら一つある。


 この子を悲しませ続ければ、僕はきっと成仏することできずに一生この辺りを彷徨う地縛少年になってしまうだろう。


「……最後に、辞世の句を聞いてくれないか」

 掠れる声を何とか雑巾絞りで絞り出す。


「……っ、分かりました。しっかり聞き届けます!」

 涙を止め、一瞬で決断する姿に僕はなんてカッコいいんだと思った。


「ピンチ時 さっと飛び出て 瀕死の身」


―――――――――――――――シーン


 滑ってしまった。超恥ずかしい(*ノωノ)

 恥ずかしさのあまり心拍数が上昇し、体から生暖かい血液がドパドパとあふれ出ているのが分かる。

 え?俺、こんな最後なの?マジで嫌なんだけど!


 そんな思いとは裏腹に、意識はドンドン消え去り、その瞳が開くことはなかった。


 望月《もちづき》 満《みつる》 享年18歳 

 死因:恥ずか死

読んでくださりありがとうございます!

受験生ですのでちょっとずつ、週1本書けたらいいなぐらいのペースでやってくつもりです!


もし面白ければ、星やブックマークしてくださると承認欲求モンスターの僕が夜な夜な喜びます(笑)

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