細川晴元
管領晴元
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## 復讐の狂王・細川晴元 〜主家を舐めるな、三好の犬ども〜## 第1章:没落の天才、闇に嗤う
「ははははは! 見ろ、見たか! あの馬鹿どもが勝手に自滅していくぞ!」
薄暗い隠れ宿の一室で、俺――細川晴元は狂ったような笑声をあげていた。
かつては管領として畿内の頂点に君臨し、天下をこの手で転がしていた天才、それが俺だ。それがどうだ。飼い犬だったはずの三好長慶(筑前守)に噛みつかれ、住み慣れた京の都を追われ、今やこうして泥水をすするような流浪の身に落ちぶれている。
だが、今日届いた知らせは俺を最高に愉快にさせてくれた。
阿波の国主であり、我が細川本家を支えるはずだった兄弟の細川氏之(持隆)が、暗殺されたというのだ。
しかも、犯人は長慶の弟――三好義賢(実休)。
「氏之め、平和ボケして三好の犬どもを甘やかすからそんな目に遭うのだ。だが……これでいい。これで三好は、主家を二度も殺した『大逆無道のクズ』として、日ノ本の歴史に未来永劫刻まれるわけだからな!」
俺はボロボロの衣の袖を噛み締め、怒りと歓喜で身体を震わせた。
長慶、お前は俺から全てを奪った。権力も、地位も、プライドも。
なら、俺は亡霊になってでも、お前を地獄へ引きずり落としてやる。
「三好の犬ども……。我が細川京兆家の執念、骨の髄まで味わわせてやるよ」
## 第2章:血の宴、狂いゆく守護の牙
時は少し遡る。阿波・見性寺。
氏之をハメるための「病気見舞いの宴」を主催した三好義賢の心は、すでに限界を迎えていた。
(なぜだ……。なぜこんなことになっちまった……!)
義賢は、激しく震える手で氏之に酒杯を捧げていた。
彼は兄・長慶の「天下新生」の夢を信じている。だが同時に、目の前にいる主君・氏之の「阿波の民を戦火から守る」という静かな優しさも、誰よりも理解し、慕っていたのだ。
「氏之様……。一献、お受けくだされ」
「義賢よ。お前も、長慶と同じ夢を見るか」
氏之の曇りのない瞳が、義賢の罪悪感を鋭く抉る。
「……時代が、我らを止めてくれないのです! 兄者一人に泥を背負わせるわけにはいかない! ここであなたが動かねば、阿波の三好は瓦解するッ!」
義賢は涙を堪え、血を吐くように叫んだ。
対する氏之は、すべてを察したように寂しく笑った。
「誰も彼も、天下という呪いに狂わされるか。よいだろう。私の命で三好が、阿波が救われるなら安いものだ。……だが忘れるな、義賢。因果は必ず巡るぞ」
「兵ども、であえええええ!!」
義賢の悲痛な絶叫。それが合図だった。
乱入した兵たちの刃が氏之の身体を滅多刺しにする。血飛沫が義賢の顔を赤く染めた。
「う、あああああああッ!!」
崩れ落ちる主君の遺体を抱きしめ、義賢は獣のように慟哭した。
(俺は主を殺した。兄者の夢のため、三好の未来のため、俺は今日、本物の怪物になったんだ……!)
## 第3章:復讐の包囲網
「おいおい、そんなに泣くなよ義賢。お前が殺してくれたおかげで、最高の舞台が整ったんだからさあ!」
俺は各地の反三好勢力へ、狂ったように密書を送り続けていた。
河内の畠山高政、近江の六角義賢。長慶の傲慢な天下取りにビビっている連中は、俺が「細川晴元」という錦の御旗を掲げてやると、 面白いように食いついてきた。
「長慶、お前は天才だよ。だけどさ、組織がデカくなりすぎたんだ。足元がグラグラなんだよ」
氏之の呪いか、俺の怨念が通じたのか、三好家には次々と不幸が襲いかかっていた。長慶の自慢の弟たちが病死し、溺愛していた嫡男も世を去った。無敵だった三好長慶の精神が、内側からボロボロに崩壊していくのが手に取るようにわかる。
「さあ、仕上げといこうか。三好の牙をもぎ取る時間だ」
永禄5年(1562年)、俺は畠山高政の大軍勢を動かし、和泉国・久米田へと進軍させた。
迎え撃つ三好軍の総大将は――あの時、氏之を刺して鬼になった男、三好義賢だ。
## 終章:因果の銃弾、久米田の残光
どんよりとした曇り空の下、久米田の戦場に鉄砲の轟音が響き渡る。
陣幕の中、総大将の三好義賢は、死人のような目で手向けの酒を地面に零していた。
彼の脳裏には、あの日浴びた氏之の返り血の感触が、今もこびりついて離れない。
「兄者の天下はもう終わりだ。……氏之様の言った通り、血で築いた城は、血で崩れる」
義賢は静かに筆を執り、自らの人生の幕引きを悟ったかのように、呪われた辞世の句を書き付けた。
『草カラス霜又今日ノ日ニ消テ因果ハ爰ニメクリ来ニケリ』
(ああ……氏之様を殺したあの日の因果が、今、俺の首を絞めに巡ってきたのだな)
直後、畠山軍の決死の突撃が三好の本陣を急襲した。
鳴り響く銃声。義賢の胸を、無数の鉄砲の凶弾が撃ち抜く。
「これで、ようやく……あなたへ、顔向けが……」
血の海に沈みながら、義賢はゆっくりと目を閉じた。
数日後、義賢戦死の報を聞いた俺は、誰もいない庵で狂喜乱舞した。
「ひゃはははは! 見たか長慶! お前の片腕をもぎ取ってやったぞ! 氏之の仇だ、俺の復讐だ!!」
俺は勝った。三好の天下の土台を、完全にぶち壊してやったのだ。
このわずか1年後、俺自身も病に倒れ、この世を去ることになる。だが、最期の瞬間に俺の顔に浮かんでいたのは、 復讐を遂げた者だけが持つ、歪で、最高に満足気な笑顔だった。
天下を巡る男たちの狂宴は、こうしてすべてが灰へと帰していくのだった。
(完)
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畿内の三好と晴元のノンフィクションです。




