表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

【AI小説】星のメガネ|2026

掲載日:2026/06/10

 ミクがそれを見つけたのは、百円ショップのパーティグッズ売り場でした。星の形をしたメガネ。レンズの周りにはキラキラのラメがついています。フレームは明るいピンク色で、つるの先には小さな星の飾りがついています。


「かわいい!」


 思わず手に取ると、指先にプラスチックの冷ややかな手応えが伝わります。レジでお感を払うと、ミクはすぐにそれをかけてみました。


「うん、かわいい!」


 ミクは大満足だった。


    ◇◇◇


 家に帰っても、ミクは星型メガネをかけたまま過ごしました。宿題をする時も、夕飯の時も、お風呂に入る直前まで。


「ミク、いつまでそのメガネをかけてるの?」


 お母さんが、少し心配そうに言いました。


「だってかわいいんだもん!」


「でも、もう3年生なんだから……そんなおもちゃみたいなメガネ、ずっとつけてたら変よ」


「変じゃないもん!」


 ミクは少しムッとしました。


 もう3年生なんだから、もう3年生なんだから……。お母さんはよくそう言う。でも、かわいいものが好きなことは悪いことじゃない。ミクはそう思った。


「明日は学校に持っていかないでね」


「はーい」


 ミクは返事をしました。


    ◇◇◇


 次の日の朝、ミクはお母さんとの約束をすっかり忘れて、星型メガネをランドセルに入れて家を出ました。角を曲がったところで、誰にも見られていないことを確かめてから、そっとメガネをかけました。


「やっぱりかわいい」


 車の窓に映る自分を見て、ミクはニコニコと歩き出します。その時、向こうから一人のおじいさんが歩いてくるのが見えました。大きな荷物を両手に抱えて、よろよろと歩いています。


「大丈夫かな……」


 ミクは駆け寄りました。


「おじいさん、お手伝いしますよ」


「おお、ありがとう。助かるよ」


 おじいさんは嬉しそうに笑った。


 ミクは荷物の片方を、自分の小さな掌で受け止めました。ずしりと重いその重みを、おじいさんの代わりに半分だけ背負います。


「本当にありがとうね。いい子だねえ」


「どういたしまして」


 その瞬間、不思議なことが起きました。おじいさんの肩のあたりから、小さな光の粒が、ぱらぱらとこぼれ落ちたのです。まるで、線香花火。キラキラと輝く光の粒子は、ふわりと宙に舞って、そのまま透明な空気に溶けていきました。


「え……?」


 ミクは目をこすりました。でも、光はもうどこにも見えません。


「気のせい……かな?」


 ミクは不思議そうに首をかしげながら、学校に着く前にメガネを外して、大事にランドセルにしまいました。


    ◇◇◇


 お昼休み、ミクは学校の裏にあるウサギ小屋に向かいました。ここなら誰もいません。ミクはもう一度、星型メガネをかけました。校舎の窓ガラスを鏡にしてポーズを決めていると、


「ミク!」


 突然名前を呼ばれて、心臓が跳ねました。生き物係のユウカが、小屋の中で掃除をしていました。


「あ、ユウカ……」


「そのメガネ、かわいいね」


 恥ずかしさで爆発しそうだったが、ミクはポーズの流れのまま、なめらかにユウカへと向き直った。


 「ありがとう。……手伝おうか?」


 二人でウサギのフンを片付け、新しい餌を用意しました。もぐもぐと口を動かすウサギの背中に触れると、指先に温かな命の鼓動が伝わってきます。


「ミク、ありがとう! 助かったよ!」


 ユウカが笑顔で言った瞬間、また起きました。ユウカの周りから、線香花火のような光がキラキラとこぼれ落ちたのです。


「やっぱり……!」


 気のせいではありませんでした。そして、もっと驚いたことに、ウサギたちの柔らかな毛並みの隙間からも、小さなキラキラがこぼれていました。


「ウサギからも……?」


 ミクは目を丸くしました。人だけじゃない。動物からのキラキラも見えるんだ。


    ◇◇◇


 ミクが学校からの帰り道でも星型メガネをかけて歩いていると、公園で転んで泣いている小さな男の子を見つけました。


「どうしたの? 痛かったね」


 ミクが声をかけると、男の子は服で涙を拭いました。


「いたい……」


「砂、払ってあげるね」


 ミクが屈んで、男の子の膝についた砂を優しく払ってあげました。


「ほら、もう大丈夫だよ。痛いの痛いの、飛んでいけ」


「ありがとう……」


 男の子がニコニコと笑った瞬間、また、あの温かなキラキラが舞いました。


 ミクは優しい気持ちになりました。このメガネがあれば、誰かを助けた時のキラキラが見える。それが嬉しくて、ミクは星型メガネを大切に握りしめて、家に帰りました。


    ◇◇◇


 家に帰ると、お母さんが夕飯の支度をしていました。


「おかえり、ミク」


「ただいま」


 ミクは星型メガネをかけたまま、お母さんを見ました。そして、ふと思いました。


 お母さんは、いつもミクのために料理を作ってくれる。朝早く起きて、お弁当を作ってくれる。洗濯も、掃除も、全部やってくれる。それなのに、ミクは「ありがとう」って、ちゃんと言ったことがあっただろうか。


「お母さん」


「なあに?」


「いつも、ありがとう」


 お母さんが驚いたように動きを止めました。


「え? 急にどうしたの?」


「ううん、ちゃんと言いたかったの。いつもありがとう、お母さん」


 その瞬間、お母さんの体全体から、今までで一番たくさんの、温かな光が溢れ出したのです。線香花火のように、キラキラと輝く光のシャワー。


「お母さん、このメガネ、すごいんだよ!」「あのね、このメガネをかけると、キラキラが見えるの」


「キラキラ?」


「うん。誰かを助けたり、優しくしたりすると、その人からキラキラした光がこぼれるの。線香花火みたいに」


 ミクは夢中で話し始めました。おじいさんの荷物を持ったこと、ユウカと掃除をしたこと、男の子の砂を払ったこと。そして、そのたびにキラキラが見えたのだと、嬉しそうに伝えました。


「かけてみて!」


 ミクはメガネをお母さんの顔にそっと添えました。


 お母さんはメガネをかけたまま、しばらく静かにしていました。やがて、その瞳に小さな涙が浮かびました。


「本当だ……。私にもキラキラが見えるよ」


「え?」


「ミクから、キラキラがこぼれてる」


 お母さんは優しく笑って、ミクを見つめました。


「ありがとう、ミク。優しい子に育ってくれて、お母さん嬉しいよ」


 ミクも嬉しくなって、お母さんに抱きつきました。二人の周りを、たくさんのキラキラが舞っていました。それは線香花火のように、いつまでも温かく、優しく、輝いていました。




──THE END──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ