第7話 戦術
第7話戦術を投稿しました。
すこし時間がなくて早足で作りました。
文がすこし変ですが、ご了承ください
ぜひ楽しんでね!
団長の長い挨拶が終わると、会場に静寂が戻った。
空気はまだ張り詰めている。新兵たちの肩には緊張が、胸には高揚が宿っていた。
話に聞いていた通り団長の迫力は凄まじい。前回の団長が事故で死んでしまい、
新たな団長が見つかるまでの間、
特管の団長が代わりを務めてくれているようだ。
たしかに兵団の団長にしては
威厳や風格が違いすぎる、これが修羅場をくぐってきた者の差なのだろうか…
俺がそう考えていると司会者が口を開く
「続いて――副団長アミナ・マミナル様による、入団の証授与式を行います」
いきなり特管の団長のサポートといっても困難だろうから、
と軍の仕事と並行して特管の副隊長が
この仕事をになっているようだ。
もう数年はまたないと会えないような人なのに
ここで会えたのは奇跡すぎる。
そう興奮していると
壇上右手に立つ司会者の声が響いた。
ざわめいていた会場がぴたりと止まる。
アミナ副団長が歩み出るたびに、革靴の音が石の床に反響し、音だけで空気を制するようだった。
これが、副隊長の圧力…
見られてすらないのに冷や汗が止まらない。
もし俺が悪魔だったのなら近付いただけて
逃げ出してしまうだろう
細身ながらも背筋の伸びたその姿。赤髪の髪が照明を受けて淡く光る。
副団長の名を知らぬ者などいない。魔力戦では団長に次ぐ実力者であり、
“巧緻のアミナ”という
異名を持つ。
「新兵は壇上前に一列で並びなさい」
司会者の指示に、整列する足音が響く。
リオンは喉が乾くのを感じた。
汗を出しすぎたせいだろうか、手汗も止まらない。身体の穴という穴から
水分が抜け落ちていくようだ…
隣ではルルが真面目な顔で背筋を伸ばしている。
心のどこかでは怯えているような表情だ。
マイルもやや緊張しながらも、時折深呼吸して落ち着こうとしていた。
みんな怖いのだ、圧倒的強者を目の前にして…
団長こそ迫力はあったが
俺たち新兵を怖がらせないように配慮していたのか
落ち着いた魔力を出していた。
本で読んだことがある。
択烈した魔力操作ができるものは
人々の印象を操作する魔力を編み出せるのだと
しかしながら副団長には
そのような行動は見られない
逆に高圧的な魔力を感じる…
壇上前の床には、すでに名札が小さく並んでいた。
司会者が手元の紙をちらりと見ながら声を張り上げる。
「モブA!」
「モブA、兵団へようこそ、心より歓迎する…」
モブA?なんてヘンテコな名前なんだ、
親の顔が見てみたいくらいだ…
どこにでもいるような在り来りな名前
呼ばれて悲しくないのだろうか…
共感性羞恥のせいのなのか知らないが
その名前が呼ばれるたびに
俺の心はズキズキと痛む…
順に名前が呼ばれ、各々が一歩前に出て副団長から小さな銀の徽章を受け取っていく。
副団長は全員同じ言葉を
投げかけている訳ではないようだ。
もちろん被っている者もいたが
適当に言っているだけではないと本能的に感じる
「フィン・ベルント」
「はい…」
落ち着いた様子で立ち上がり壇上へ登っていく
他のモブ共のように慌てふためく様子はなく
どこか大人びている、
この先のなにかを見据えているような瞳
この少年を境に呼ばれる新兵に変化が生じた
『ベン ソリーテ』
どこかお調子者で頼りなさそうな雰囲気ではあるが
他の誰よりも固い信念を持っているようにみえる
クセなのかしらないが彼には
緊張するときは右耳をイジる習慣があるようだ。
『ネロ ミネルヴァ』
この男はさっきのベンと違ってとても頼りになりそうだ。なんて言えばいいのだろう。
そう、兄貴のような存在感を醸し出している
壇上へ上がっていくその表情には
自信とやる気が溢れているようだった
『アミリア エクイタス』
この少女のような感じの彼女は異質な雰囲気だ。
ルルとはまた違う…
これをカリスマ性というのだろうか
紅い瞳に艶のある金色の長髪の黒髪だ、
ミオと同じでとても美しい髪をしている
雰囲気は大人っぽいが顔をみれば
少し幼く見える
骨格からしても若い
体格も小柄なようだし仕方ないだろうが
苗字からしてもここら辺の者ではない気がする
この国はある程度は苗字で
地元の人間は把握することができる。
小さい頃は
そんなの分かるわけないと思っていたが
案外そうでもないらしい
ずっと住んでいれば町のことをよく知る
そうしていくうちに理解していくのだ
そう考えている内に
ルルやマイルも授与を終えてしまった
ついに俺の出番がきた
足取りが重い、こわい、
あんなに憧れていた副隊長がこんなにも
冷酷そうな人だっただなんて
「リオン リベルタス」
「はい!」
「ようこそ、兵団へ。辛いこともあるだろうが鍛錬を忘れずに励むことだ」
その手から渡された勲章は少し暖かい
どんなに怖い人でも手は暖かいのだな
その事実に少しだけ安心する
俺が両手で受け取った
兵団の紋章――それには
五神の内の麒麟の模様が
刻まれている。
「……これで、あなたも兵団の一員です。誇りを胸に刻みなさい」
低く響くアイラ副団長の声に、リオンの胸が熱くなる。
渡された徽章の重みは金属のそれ以上だった。
全員への授与が終わると、司会者が壇上に戻る。
「――これにて授与式を終了いたします。新兵の皆様のご活躍を、心より楽しみにしております」
一拍おいて、声が響く。
「起立!」
一斉に立ち上がる新兵たち。
「敬礼!」
会場中に一糸乱れぬ敬礼が広がった。
副団長が軽く頷くと、司会者が声を張り上げる。
「敬礼は通常のものです。では、各自、担当の教官の指示に従いなさい!」
それが、式の終わりの合図だった。
新兵たちがぞろぞろと会場を後にし始める。
リオンたちの班の前に立ったのは、濃い茶髪を後ろで束ねた中年の男性――教官ラリルだった。
鋭い目つき。声は低く通る。
「お前たちは今日から我ら兵団の一員となる。名ばかりの兵士で終わるつもりなら、今すぐ帰れ」
背筋が一斉に伸びた。
ラリルは周囲をゆっくり見渡すと、口元だけで笑った。
「……冗談だ。だが気を抜くな。あと十分もすれば訓練を始める。心構えをしておけ」
あんたの言う冗談は、冗談に聞こえねーよ…
そう言ってラリルが背を向けた、そのとき。
反対側の扉が開き、別の一団が入ってくる。
推薦組だ。
推薦組は近くにある名門校からの卒業生のようだ
その卒業生がここを進路先に選んだのだ
頭のいい学校を通っていたのに
わざわざ兵団に
入るのは今しがた理解できない
推薦組のメンバーの中には
見覚えのある顔――ミオの姿があった。
「ミオ!」
ルルが思わず声を上げる。
ミオは足を止め、こちらを見て柔らかく微笑んだ。
相変わらず整った顔立ちだ。だがその笑顔の奥に、少しの疲労が見えた。
この兵団に推薦で入るには書類の手続きなど
かなりめんどくさいらしい
ミオの疲労の原因もきっとそれだろう
「ルル、リオン、マイル。また会えてよかった 。
リオン達が兵団に入ることは知っていたのに、
私も入ると伝えるのが遅くなってごめん」
「そんな……謝ることないよ。ミオも入団、おめでとう!」
「ありがとう」
ミオが軽く頭を下げる。
その隣にはネロが立っていた。
黒髪を無造作にまとめた青年で、どこか飄々とした雰囲気を持つ。
「お前たちが例のリオンか。話は聞いてるぞ。
中々面白いやつららしいな」
軽く肩をすくめるネロに、マイルが苦笑する。
「面白いって、褒め言葉として受け取って
いいんですか?」
「もちろんだ。こんな狭い兵団の中でいる
唯一面白そうなやつだ。
たのしいそうなことは
たくさんあるほどいいだろう?」
そこへ、後ろから低い声がかかった。
「おしゃべりはそこまでだ」
ベンだった。推薦組の中でも最年長で、既に小隊長候補と言われている。
鋭い視線に空気が一瞬で引き締まる。
「ラリル教官が呼んでる。集合だ」
その言葉に、リオンたちはすぐ姿勢を正した。
ラリル教官は訓練場の入口前で腕を組んで待っていた。
「全員そろったな。では行くぞ」
石畳を踏みしめながら、新兵たちは訓練場へと向かう。
外の空気は冷たく、朝の霧がまだ残っていた。
訓練場に入ると、円形の広場が広がっていた。中心には淡く光る魔法陣。周囲には数人の魔力測定官が立っている。
「本日の訓練は二つだ。魔力操作の技術確認、そして空間把握の確認」
ラリル教官の声が響く。
「まずは空間把握だ。自分と周囲の空気、流れ、魔力の粒子を感じろ。目で見るな、意識で捉えろ」
言われても、どうすればいいのかわからない新兵たちは戸惑いの表情を見せた。
だがルルはすぐに目を閉じ、静かに息を吐く。
彼女の髪がわずかに揺れ、空気の流れが変わる。
測定官の一人が数値を告げた。
「空間把握、54パーセント。上々だな」
ルルは小さく笑う。
マイルも続いたが、結果は「およそ35パーセント」。
平均的だが、悪くはない。
リオンの番が来た。
深呼吸して目を閉じる――だが、何も感じない。
風の音、他人の息遣い、ただそれだけ。
「……うまくいかないな」
俺には、才能がないのだろうか。
血液検査では問題はなかったようだし操作は可能なはずなのに。なにもできない
そんな自分にイラつきはじめていると
ラリルが近づく。
「焦るな。感じ取れないなら、触覚を使え。そこにある桶の水に手を入れてみろ」
言われた通り、リオンは水に手を沈めた。
冷たい。だがすぐに、水の中の“流れ”が指先に触れる。
水の粒子のひとつひとつが、彼の魔力に反応しているようだった。
「……あ、これか……」
リオンの声が漏れた瞬間、測定官が頷く。
「空間把握、44パーセント。感覚を掴んだな」
リオンは息を吐いた。
次にラリルが指示する。
「その空間を思うように動かせ。水を浮かせてみろ」
リオンが意識を集中させると、
次の瞬間、水の一部が球体になり、ふわりと宙に浮かんだ。水面がわずかに震えた。
指先が熱を帯びる。
――浮いた。
それはたった一滴だったが、リオンにとっては世界を動かすほどの一歩だった。
周囲が小さくどよめく。
それが初めての成功だった。
「よし。魔力操作、悪くない。制御を覚えればすぐ戦闘に使える」
ラリルの短い言葉に、リオンの胸が熱くなる。
おれ、やれるんだ…戦えるんだ…
その事実をこの身で感じ、感動した
てっきり俺にはなにもできない、
ただの弱者なのかと思ってた
でも、おれは戦える、やれる、
たったそれだけなのかもしれないけれど
俺の心を満たすには十分すぎた
一方、周囲ではいくつもの魔法球が浮かび、消えていった。
ルルは安定した操作で水を自在に動かしており、ミオも余裕の表情を見せる。
ミオはなぜだか知らんが
逆に水の量を増やしているようだ
あいつには才能があったってことなのだろう
しかしなんであんな長時間浮かせられるんだ?
俺なんか数秒やっただけで頭痛が酷いってのに
ミオはそのまま空高く浮かせ
風船のように大きくし破裂させた
その水の粒子はあまりにもこまかくて
霧のようになっていた
教官たちも興奮がおさまらないのか
ずっと騒いでいる
まったく俺だって頑張っているというのに
悲しいものだ
そしてネロは片手だけで水を刃のように変形させ、
近くの木を切り落としていた
水にあれだけの強度を持たせるだなんて
どれだけ緻密な魔力操作をしたんだ…
先生たちは…、
今年は粒ぞろいだと騒いでいる
俺もその粒の1つになれているだろうか
ただの砂になってないだろうか
そんな、小さな不安が頭をよぎっていた
訓練場に、さざ波の音と魔力の唸りが混じり合う。
新兵たちの顔には汗と、確かな手応えが浮かんでいた。
――こうして、リオンたちの初日の訓練は幕を開けたのだった。
楽しめましたか?時間が足りなくて少し歯切れが悪かったかもしれません
次回は2日後に投稿予定です。
時間は午後7時か午後9時です。
また読んでね!!




