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総喰の悪魔  作者: ブロッコリー
第1章 少年達は誓う、悪魔への復讐を
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第6話 入団〜始まりの第1歩〜

第6話 入団〜始まりの第1歩〜を投稿しました。急遽の予定で投稿の時間を早めることにしました。申し訳ございません。今回はリオン達が悪魔への復讐の第1歩になります!読み返したい方がいたらブックマークがオススメです!

ミオと別れたあと、リオンとマイルは丘を下り、父が指定した集合場所へ向かっていた。

マイルがなにやら熱く語っていたが、

まったく頭に入ってこなかった。

なんでだろう?

ミオからした、

ローズマリーのいい匂いが頭から離れない。

そうか、おれはあまり花に興味はなかったのだが

実はローズマリーが好きだったようだ。

自分のことなのに何故か納得してしまう。

そんなことを考えていると

 西の空は茜色に染まり、夕日が二人の影を長く伸ばす。

 丘を越え、森を抜けると、そこには懐かしい顔が待っていた。懐かしいといっても数時間ほど離れていただけなのだが。


「リオン!」

 先に気づいたのはルルだった。

 彼女は小さく手を振り、いつものように明るい笑顔を見せた。

心に少し空いた穴が塞がるように胸が軽くなる。

これが癒しというのだろう。

彼女の笑顔にはそれだけの破壊力がある。

そこらへんにいるモブらならば一撃でやられてしまうだろう…

「遅いよ、二人とも。心配したんだから!」

「ごめん、ちょっと買い物に手間取ってな。マイルがいろいろ吟味するもんだから」

おれはいい歳の男子だ。いわゆる複雑な時期、

そういう時期ってやつだ。

俺がこの柄のほうがカッコイイとか言って駄々をこねたせいで時間が"多少"かかってしまったのは

口が裂けても言えない…

「え?僕のせいにするの?」とマイルが苦笑する。


 そして――その後ろに立つ男。

 しっかりとした体格に、どこか抜けた笑みを浮かべるリオンの父、オルリオが腕を組んでいた。

「おーおー、ずいぶん遅かったじゃねぇか。女の子とデートでもしてたのか?」

「してねぇよ!」

俺の父は変なところで勘がいい。

若い頃はとてもモテていたようだから、

そういう類のものは本能で感じてしまうのがしれない。

「ふっ、図星か?」

 父のオルリオの軽口に、リオンは顔をしかめた。

 その様子を見てマイルとルルが笑い出し、久々に穏やかな空気が流れる。

最近は空気が重くて息をすることさえ億劫だった。

でもこうやって触れ合うだけで、

俺も自然と笑顔になる。

 父は「ま、もう夕方だ。宿を取ってある。今日はそこで一泊するぞ」と言った。

 そして四人は並んで町を歩き、古びた木造の宿へと入った。すこし蜘蛛の巣が張ってあったり、

不安な要素はまだまだあったが、

中に入ってみると案外心地いい。

人が賑わっている。

俺はこの雰囲気、嫌いじゃない。

買い物の荷物は予約した部屋におき、

1階に向かう。

 夜。

 宿の食堂には、香ばしい匂いが漂っていた。

 テーブルの上には、普段では考えられないほど豪華な料理が並んでいる。

 肉の煮込み、焼きたてのパン、野菜のスープ、そして果実酒。この宿の1階には居酒屋がある。

2階が俺たちの泊まる予定の部屋があるのだ。

今日は久しぶりのご馳走のようだ。

あぁ、考えるだけでよだれが止まらない。

 ルルが目を輝かせた。

「うわぁ……すごい! お祝いのごちそうってやつだね!」

「父さん、これ全部……?」

「おう。最後くらい贅沢させてやろうと思ってな。あ、おかわりもしていいから安心しろよ」

「ありがとうございます。こんなに……豪華なの、久しぶりです」


 マイルは少し緊張しながらも微笑む。

 その隣で、リオンは肉をフォークで突き刺して口に運び、しばらく無言で味わった。

肉は値が張る食材で中々食べられるものではない。

正直すぐにでもうまい!と叫びたかったが

それ以上に肉の美味さに舌が感動し、

言葉が出なかった。

「……うまい」

 やっと言えたその一言に、父がにやっと笑う。

なんなんだこいつは。

ただ感想を言っただけなのに…

「だろ? うまいもん食って、柔らかいベットで眠る。これほど幸せなことはねぇだろ。

そういやリオン、お前夢はあんのか?

夢とか目標があった方が人生楽しくなるぞ」

「夢ねぇ……俺は、もう決まってる」

 リオンは少し俯き、拳を握った。

「俺は……悪魔を殺す。全部殺して、この世界から消し去ってやる」


 静寂。

 ルルがスプーンを止めた。マイルも何も言わずにリオンを見た。

せっかくいい雰囲気だったのにそれを壊してしまったことは申し訳ない。

だがそれ以上に俺の想いは止まることを知らない。

 父はしばらく黙っていたが、やがて低く笑って言った。

「いいじゃねぇか。男ならそれくらいの覚悟でいけ。……ただな、忘れんな。

お前には絶対に守らなきゃいけねぇルールってもんがある。それが“生きて帰ること”だ。

これぐらい守ってくれねえと

母さんも安心して死ねねえよ」

「……あぁ、わかってる」

 その夜、食堂のランプの光が静かに揺れた。

 笑い合い、語り合い、やがて夜は更けていった。


 翌朝――。


 リオンは一番に目を覚ました。

 窓の外はまだ薄明るく、鳥の声がかすかに響く。

 昨日までの笑顔が夢のように感じた。

 彼は静かにベッドを抜け出し、カーテンの隙間から外を見つめる。

 遠くの山の向こうに、朝日が昇ろうとしていた。

 リオンは小さく息を吸う。

「……これからだ」

 悪魔を殺す。その誓いを、もう一度心の中で刻む。俺はやると決めたことは絶対やるという性分だ。必ず遂行してみせる…


 部屋を出てリビングに行くと、父が台所で何やら格闘していた。

 パンの焼ける匂いと、その中に少し焦げた香りが混ざりこみ、漂う。

「おはよう、リオン。起きるの早ぇな」

「父さんこそ……何やってんだよ」

「朝飯だよ。これから当分会えなくなるんだし、最後くらい親父に作らせろってんだ」

 父は手ぬぐいで汗をぬぐいながら、焦げたパンを皿にのせた。

 隣には湯気を立てるスープ。

「焦げてるぞ」

「初めてにしちゃあ上出来じゃないか?

文句言うんじゃないぞ。

腹に入ればどんな食べ物でも一緒だ!」

 そういい父はニカッと笑う。

父の笑顔に、リオンもつい笑ってしまう。


 そのあと、マイルとルルも起きてきて、四人で簡単な朝食を取った。

塩のかかった目玉焼きに焦げたパン、

そして形の歪な具だくさんなスープ。

どれも食欲をそそる見た目ではなかったけど

食べてみると案外うまい。

 ルルはパンを手にして「ちょっと焦げてるけど……うん、好きな味だよ」と笑う。

その褒め方はかなり不器用すぎないか?

俺が言われたらまあまあ傷付くぞ…?

「おう、ありがとうよ。そう言ってくれるのはルルだけだな」

俺もどうにかいい感想を言いたかったんだがあまり思い浮かばない。

リオン「父さん作ってくれてありがとうな。

このパンも、今まで食べたどのパンよりも香ばしくてザクザクしてるし、

スープも、めちゃうまい…」

父「褒めてくてたとこ悪いんだが、聞いてて悲しくなってくるな。もっとマシな褒め方ないのか?」

相変わらずの腹立つ笑顔でこちらをみてくる。


俺はできる限りの長所をかき集めて感想を述べたと言うのに、残酷な親父だ…

マイルはというとずっと黙ったままだな。

食事もあまり進んでいない。

愛想笑いをしすぎて逆に気持ち悪い顔をしている。


普段口が達者なマイルでも喋ることが叶わないだなんて、そこまで酷い味ではなかったのだか。

あいつの舌は肥えていたのか、贅沢ものめ。


そう軽口を心の中で叩いたあと

 食後、リオンは寮へ持っていく荷物を整えた。

 マイルとルルも手伝いながら、

歯ブラシや生活道具を鞄に詰めていく。準備が進んでいく内にどんどん緊張してきたが逆も然り、

新たな生活に心踊らされている自分もいた。

「これで準備は完了だね」

「あぁ。……もう行く時間か」

 玄関に立つと、父が腕を組んで見送っていた。

「リオン」

「なに?」

そう俺が返事をして振り向いた瞬間、

視界が真っ暗になった。

なんだ?なにが起きたんだろう。

俺はすぐに今の状況を理解できずただただ「暖かい」そう思っていた。

父さんの、心臓の音がする。トクトクと鳴っていてとても落ち着くし、

安心する。

生きてるんだって…

俺の視界は父さんで埋まってしまっているみたいだ

俺の背中に父さんの腕がまわっている。

ハグされているのだろう。

この歳になると少し恥ずかしい。マイルたちも見ているのに、

これは公開処刑じゃないか?

そう思っていると父が腕に力を込める。ギューっと

すこし苦しいけど、なぜか安心するんだ…

「お前は俺の息子だ。どれだけ強くなっても、優しさだけは忘れるなよ」

父さん、声が震えてる。

父さんがそんなんじゃおれ、覚悟した意味がなくなっちゃうじゃないか…

おれの頬に透明で少し塩っぱい液体が零れた。

その時静かに、時間が止まった気がした…

この涙は悲しくて流れてるんじゃない。

そう思いたい…これが、親離れってやつなのかな…

「……わかってる」

 その言葉に、父は腕の力を緩めゆっくり頷いた。

そしておれの頭をぐしゃぐしゃっと撫でる。

まったく、ぶっきらぼうさ相変わらず健在だな。


 外には、エーテルで作られた透き通る馬の馬車が停まっている。

初めて見た時はびっくりした。

馬は透けるものなのかとひとりで考え込んでしまうくらいに。

なんでも馬を模倣して造られたものらしく

本物の馬よりも足がはやくて、

食事もエーテルさえあれば問題ないので主に街ではこの馬が使われているらしい。

この馬を生成するには専門の魔術師に頼むか、

魔力操作が上手いやつにしか無理らしい。

触ってみると少しひんやりしている。

魔力の流れも伝わってくるしなんとも不思議なものだ。

 淡い光を放ちながら、馬の形をした魔導体が鼻息を鳴らした。

「じゃあな、父さん。また帰ってくる」

「おう。帰ってこいよ、立派な兵士になってな」

 リオンは頷き、マイルとルルと共に馬車へ乗り込んだ。

窓の隙から見送ってくれている親父を覗く

父は何か言いたげに唇を開きかけたが、

結局言葉にならなかった。

 代わりに、手を振った。

その手が小さく揺れるたびに、

胸の奥が痛んだ。

 俺が体勢を戻すと

街道を走る馬車の中で、ルルが静かに言う。

「ねぇリオン……怖くない?」

「怖いさ。でもな、誰かがやんなきゃ、何も変わらねぇ」

リオンは俺の覚悟が伝わったのか表情がキリッとして、静かになり一言呟く

「……そっか」

 マイルが微笑みながら窓の外を見る。

「始まるんだね、僕たちの“戦い”が。昔の僕たちからは想像できないよ、」

ルル「そうだね、あの頃は何も考えずに生きてた。でも今は違うよね?もう、なにも知らない私たちじゃない…」

俺は黙って頷く

緊張して俺の身体は少し震えていた

でもルルたちの覚悟を、想いを聞いてからは不思議と気にならなくなった。こうやってずっとお前たちと一緒にいられておれは幸せ者だな…

母さんに怒られちまいそうだ

ははっ、

少し笑ってしまった俺をみてマイルやルルも共に笑い出す。

まったくさっきまでいい雰囲気が台無しじゃないか

まあ、そんなところも好きなんだけどね


やがて、兵団本部が見えてきた。

 分厚い石造りの城壁が、夕陽に照らされて黄金のように輝いている。

 その前には、すでに何百もの若者たちが整列していた。

 皆、胸を張り、顔を上げている――けれど、その瞳の奥には、恐れと期待が同居していた。


 俺たちの馬車が止まると、重い扉の音が響いた。

 中に入ると、広間の空気は一変した。

 埃と油の匂い、擦れた軍靴の音。

 張り詰めた緊張が肌を刺す。

 誰もが、これから始まる「戦い」を感じ取っていた。

荷物を預けて

 列の最後尾に並ぶと、リオンは自然と拳を握っていた。

 掌には汗がにじんでいる。

 心臓がうるさいほど鳴っていた。

 ――でも、怖くない。

 父の言葉が、頭の中で繰り返されていた。

 「どれだけ強くなっても、優しさだけは忘れるな」

 その言葉を盾のように握りしめながら、リオンは前を見据えた。

今のおれにはこの言葉がなによりも大切だ

この言葉が俺を支えてくれる、守ってくれる

どうか見守ってくれよ、


 壇上に立つひとりの男。


 それが、兵団長――サノバイル・サラータだった。

 彼が一歩前に出た瞬間、広間のざわめきがピタリと止んだ。

 重低音のような声が響く。


「――諸君。今日この日を、よくぞ迎えた」


 静寂の中に、言葉が落ちる。

 その一言だけで、会場全体が緊張で震えた。


「この国の東側に位置している

ラリーゼ(東)は今、

悪魔どもに蹂躙されている。

 幾千の民が喰われ、未来を奪われた。

 だが――それでも我々は立ち上がった。

 この場に揃っている者たちがその証拠だ

恐怖を知らぬ者など、

この場に一人としていないだろう。


立ち止まれば、喰われる

怯えれば、奪われる

それほどまでに我々は無力だ。

だからこそ私は信じている、

我々の信念こそが!

悪魔への復讐、罪の代償を償わせることへの、

勝利への糧なのだ!!」


 マイルが隣で小さく息を呑んだ。

 ルルは唇を噛みしめ、目を閉じていた。

 誰もが、己の中の弱さと向き合っていた。


 リオンは、気づけば兵団長の言葉に引き込まれていた。

 言葉が、心の奥に深く刺さる。

 自分は勇気を持てているのか? 本当に、悪魔と向き合う覚悟があるのか?

 答えは、わからない。

 それでも――やるしかない。

俺の中の答えをYESにする、しなければならない


「我ら兵団は、この国の盾であり、矛だ。

 お前たちは今日から、命を懸けて国を支える者となるための道を歩むためにここにきた

 仲間を守れ。命を繋げ。恐れを超えろ!

それが私たちの、人類の進撃になる!」


 その言葉を聞いた瞬間、リオンの胸に熱が宿った。

 父の言葉と、今の団長の声が、重なって響く。

 優しさを忘れず、人であれ。

 それが、この戦場での唯一の真実のように思えた。


 サノバイル団長が、ゆっくりと口を開ける

その動作一つ一つに感動させられる

「我らの使命はただ一つ――“悪魔の殲滅”。

 この地を取り戻すため、我らは血を流す。

 それでも、諸君。恐れるな。

 我々の想いや、祝福の未来は

決して奪われはしない!」


 その言葉に呼応するように、広間全体が震えた。

 誰かが拳を掲げた。次々に続く。

 「おおおおおっ!」という叫びが爆発し、床が鳴った。

 その中で、リオンはただ静かに目を閉じた。


 母さん……俺、行くよ。

 この手で、全部終わらせる。


 ルルが泣きそうな顔でリオンを見た。

 マイルは真剣な表情で、何かを噛みしめるように頷いていた。

 三人は、言葉を交わさずにただ見つめ合う。

 そして小さく頷き合う。


 ――これが、俺たちの「始まり」だ。


 会場の外では、鐘の音が鳴った。

 兵団入団式を告げるその音が、国中へと響いていく。


 リオンは胸に手を当て、そっと呟いた。

「……悪魔を、殺す。そのためにここにいる…」

 その声は、誰にも聞こえないほど小さかった。

 だが、その言葉こそが、少年リオンの決意の証だった。

楽しんでいただけましたか?時間は火曜の9時です。予定が変わらない限りこのサイクルは変わらないのでご了承ください。ぜひブックマークや感想をお願いします!

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