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総喰の悪魔  作者: ブロッコリー
第1章 少年達は誓う、悪魔への復讐を
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第5話 海の見える丘で

遅れてすみません。第5話海の見える丘で を投稿しました!今回はルルはあまり登場しません!ぜひ楽しんでください。感想やブックマークなどをしてくれるとモチベーションがかなり上がりますのでよろしくお願いします!

 マイル「こんな暗い話はよしてさ!はやく丘に行こうよ。夕方までに買い物もしないといけないんだから。」

リオン「はぁ、買い物もしなきゃいけないのか。」

マイル「だって僕たち今日で退院だよ?あと1週間もすれば兵団の寮生活になるし

物は揃えないとちゃんとした物がないらしいからね」

リオン「もうわかったよ、はやく行けばいいんだろ?」

丘は病院の近くで徒歩15分程

その丘はノルン区からは遠くに位置しているので

リオン達はそこまで頻繁に行く土地ではなかった。

かなり久しぶりに来たので変わった周りをみて話題が尽きなかった。

丘に着くと

潮風が、緩やかに髪を揺らした。

 丘の上から見下ろす海は、今も変わらず青い。けれど、幼い頃に見たそれとは、どこか違って見えた。


「……ここ、まだ残ってたんだね」

マイルが小さく呟く。

リオン「お前残ってるって知らなかったのに行こうとか言い出してたのかよ…」

マイルは賢そうに見えて少し抜けている。

今のように計画性のない行動などがだ。

ここはかつて二人が小石を投げ合い、海に沈む太陽を競って眺めた場所。

足元の草は伸び放題で、木の柵も半ば朽ちていたが、潮の香りだけは昔のままだった。


 リオンは、静かに頷いた。

「ずっと変わらないと思ってたけどやっぱり違うな。葉っぱや木も…変わってないのは風の音とか匂いだけ。」

 そう言って、彼は丘の端まで歩み出た。風が顔にぶつかり、海の匂いが胸の奥をくすぐる。遠くでカモメが鳴いた。


 マイルが横に立つ。

「リオン、あのとき本気で泳ごうとしてたよね。僕が止めなかったら、確実に溺れてた」

リオン「泳げると思ってたんだよ。あの時はまたま、子どもだったからな。」

マイル「……いや、今もあんま変わってないように見えるけどね…」

 マイルが笑う。

 リオンは少しだけ唇を動かし、笑ったようで笑わなかった。

 その横顔を、マイルはちらと見つめる。海よりも深い、けれど冷たい何かがその瞳に宿っている気がした。


「リオン、最近変わったよね」

「そうか?」

「うん。前はもっと……感情が顔に出てた。今は何考えてるか分からない」

「成長した、ってことなんだろ。俺も、お前も」

 マイルは答えに詰まり、少し間を置いて笑った。

「そうだね。成長か、リオンらしい…」


 沈黙が流れる。風の音が二人の間をすり抜けていった。

 リオンはポケットから小さな石を取り出し、丘の下に向かって放る。石は音もなく転がり落ちて、やがて見えなくなった。


「俺たち、またここに来られると思ってたか?」

「いや。もう来ることはないかなって思ってた」

「……俺もだ」

 その言葉のあと、リオンはほんの少しだけ笑みを浮かべた。

 遠くの水平線が、白く光っている。


「ねえ、リオン」

「ん?」

「もし、この先……全部が終わったら、またここ来ない?次は、3人で…」

「終わったら?」

「うん。全部終わったらだよ。」

 マイルは海を見たまま、何かを誓うように呟いた。

 その声音に、どこか覚悟のようなものが混じっていた。

 リオンは返事をしなかった。ただ、視線を海へと向ける。


 波がゆっくりと寄せ、そして引く。

 その繰り返しの音だけが、二人の間に残った。


 マイルがふと、リオンの背に目を向ける。

「リオンさ……あの町は好き?」

この丘から遠くに少しだけ見えるリオン達の故郷をみながらマイルは言った

 リオンは短く息を吸い、少し間を置いてから答えた。

「好きだな。でも、同じくらい怖い」

「怖い?」

「過去が多すぎる。どこを見ても、思い出が勝手についてくる」

「……そういうものなのかなぁ、でもね、リオン。過去からは逃げちゃダメだよ。

過去は消えることはない一生の呪いで一生の宝物だよ。なんだか矛盾してるよね。

だから大切にしよう、

どんなに苦しくても、悲しくても

僕たちが出来るのは波みたいに寄せて返すだけ、

でもそれは、一時的なものに過ぎない」

「そうかい、一応頭には入れておくよ。それでお前はどうなんだ?」

「僕は――」

 マイルは言葉を飲み込み、空を仰いだ。

 雲の切れ間から射す光が、二人を淡く照らす。


「僕は、まだ好きでいようと思う。

何があっても」

「それは、強いな。」

「違うよ、僕は、

君が思っている程強い人間じゃない。

なにより僕はリオンと違って物事を深く考えない、楽観主義者だからね。」

 マイルは笑いながら、草の上に寝転んだ。

 リオンも隣に腰を下ろす。二人の影が、ゆっくりと重なっていった。


 風がまた吹く。

 そして、どちらともなく呟いた。


「――海の色、こんなに深かったっけ?」


 その青は、記憶よりもずっと濃く、どこか悲しげだった。

 けれどその中に、確かに「希望」に似た輝きがあった。

マイル「じゃあそろそろ町に行って買い物しようか、ついでに昼ごはんも町で食べちゃおう」

リオン「あぁ、わかった。」


丘の上は静かだった。

 少し湿った風が草を撫でて、海の匂いを運んでくる。

 眼下に広がる町の屋根が朝日に照らされ、白く光っていた。


「……行くか、リオン」

 マイルが立ち上がって言う。

「買い物、だろ?」

「うん。寮に入る前に生活用品をそろえないと」

「石鹸とか、歯磨き粉とかか?」

「そう。あとタオルもね。君が洗わないで放っておく未来が見えるから、余分に買っておく」

「なんで俺のことそんな信用してねぇんだよ」

 リオンがむっとした顔で言うと、マイルは笑いながら肩を叩いた。


「信用してるよ。……信用しているからこそ

心配なんだ。リオンはトラブルメーカーだからね」


 二人は丘を降りて町へ向かう。

 潮風の中に、懐かしい記憶が混じる。

 ルルと三人で走り回った、あの夏の午後の声。

 あの頃は、笑い声が海の音よりも大きかった。


 リオンは視線を海の方に向けた。

 青く光る水平線が、遠くて、少しだけ寂しそうに見えた。


 町に着くと、人の声とパンの焼ける香ばしい匂いが混じり合っていた。

 昼前の通りは活気に満ちていて、屋台の店主たちが声を張り上げている。


「おーい、焼き立てだよー! まだ温かい!」

「こっちの魚も安いよ!」


 リオンとマイルは並んで歩きながら、あちこちの店を眺めた。

 木造の雑貨屋に入ると、天井から吊るされたランプが小さく揺れている。

 棚には木の歯ブラシ、麻のタオル、石鹸、油紙に包まれた洗剤のようなものが並んでいた。


「……すげぇな。全部、同じ色してる」

「リオン、適当に選ばないでよ。ほら、この歯ブラシなんかいいんじゃない?」

「いや、こっちの方が柄がかっこいい」

「見た目で選ぶなってば」


 そんなやりとりをしていると、横から静かな声がした。


「それ、使いづらいよ」


 二人が振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。

 風に揺られて長い髪が頬にかかっている。

 そして、深い青の瞳。

 海の底を閉じ込めたような色だった。


「……え?」

 マイルがきょとんとする。


「軸が硬くて、すぐ割れる。おすすめしない」

 少女は淡々とそう言いながら、別の棚に並ぶ品を手に取った。

 木目の柔らかいブラシだった。


「こっちの方が長く使える」

「へぇ……よく知ってるね」

「別に。ただ、見たことがあるだけ」


 そう言って少女は視線を逸らした。

 冷たいようで、どこか儚い声だった。


「なぁ、お前も買い物か?」

 リオンが声をかけると、少女は小さくうなずいた。

「……そう」

「ひとりで?」

「うん」


 それ以上話す気はなさそうだった。

 けれど、マイルはその沈黙にどこか興味を持ったようで、穏やかに笑った。


「俺はリオン。で、こっちがマイル。君の名前、聞いてもいい?」

 少女は一瞬だけ迷ったあと、答えた。


「……ミオ」


「ミオ、か。いい名前だね」

「そう?」

「うん、ミオに名前を付けてくれた人はきっと素敵な人だったんだろうね」

 リオンがつぶやくと、ミオはわずかに目を細めた。


「素敵、ね。……たしかに、そうかも。」



---


 買い物を終えたあと、外に出ると太陽は真上にあった。

 通りの屋台から、昼食を求める人々の声があがっている。

 マイルが小さくお腹を押さえた。


「そろそろお昼にしようか」

「そうだな。腹減った」

 リオンが周りを見回していると、

 さっきのミオが店から出てきて、通りの端を歩いていた。


「なあ、マイル」

「ん?」

「ミオ、ひとりだ。……誘ってみるか?」

「え? いいのかな」

「いいじゃねぇか。せっかく会ったんだし」


 リオンは軽く駆け寄って声をかけた。


「おい、ミオ! 一緒に食わねぇか?」


 ミオは少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに視線を逸らした。

「……私はいい」

「そう言うなよ。ほら、奢るって」

「……奢られる理由がない」

「理由なんていらねぇよ。たまには人と食うのも悪くないだろ」


 マイルもそっと近づいて言葉を添えた。

「ね、良かったら。ひとりより、少しは気が楽かもしれないし」


 ミオは数秒だけ沈黙し、それから息を吐いた。

「……わかった。少しだけ」


 リオンとマイルは顔を見合わせて笑った。



---


 三人は屋台の横にある石段に腰を下ろし、

 温かいスープと黒パンを手にした。


「うまっ!」

 リオンが一口飲んで叫ぶ。

「塩気ちょうどいいな!」

「リオン、うるさい。こぼすよ」

「悪い悪い」


 マイルが苦笑しながらも楽しそうに笑う。

 一方のミオは、黙ってパンを小さくちぎって口に運んでいた。

 風が吹くたびに、黒髪が揺れた。


「ミオはこの町の人?」

「……違う。用事があってここにきた。結構長い間いるからまた会えると思う」

「そうなんだ、それはうれしいな」

「そう言ってもらえると、とてもうれしい」


 淡々とした声。

 けれど、その言葉の裏に、ほんの少し寂しさのようなものが見えた気がした。


 マイルは優しく微笑んだ。

「それでも、今日会えてよかったよ。……なんだかあっという間だったね。会う機会があれば一緒にまた話そう。君のおかげで助かったことも多いし」


 ミオは一瞬だけ顔を上げ、二人を見た。

 その深い青の瞳が、光を受けて少しだけやわらいだ。


「……そう?」

「そうだよ」

「……ありがとう」


 その言葉は、小さくて、けれど確かに温かかった。



---


 食べ終わると、ミオは静かに立ち上がった。

「ごちそうさま。行くね」

「もう行くのか?」

「うん。ありがとう……楽しかった」


 そう言って、ミオは通りの向こうへ歩いていった。

 その背中が風に揺れ、長い黒髪がひらりと翻る。


 マイルが呟いた。

「……綺麗な人だね」

「ああ。なんか、不思議な気持ちだ。」


 二人はしばらくその背中を見送っていた。

 遠くで鐘の音が鳴り、午後の陽が町を照らしていた。



どうでしょうか?楽しめましたか!次回は日曜の午後9時頃に投稿します。時間帯が変わってしまい申し訳ないです。感想やブックマークもよろしくお願いします。

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