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第6話

       6


「ここは日本どころか地球のどこかですらなくて、日本に帰れるのは『審判の日』にだけ。それも『魔宝』を持っている人だけ……。噓でしょ、そんなことって……」

 進也が説明した深刻な事実を受けて、果奈は呆然としたようだった。

「残念だけど、これが現実なんだ。果奈ちゃん、ケータイ持ってる?」

 淡々と進也が問うと「持ってるよ」と、果奈はスクールバッグの中を漁り出した。

 すぐにスマホが出てきた。「でも何でケータイ? まさか、これが繋がらないとか?」

 果奈の発した疑問に、進也は無言で頷いた。果奈は訝しげにスマホを操作し、耳に当てた。

「なにこれ、プルルルすら言わない。完全な無音? ──家族と外国は何回か行ったけど、こんなの初めて。やっぱりここって……」

 顔を上げた果奈は、進也を見つけてきた。顔つきには、混乱と怯えが滲んでいる。

「そう、『異世界』なんだ。ケータイが機能しないとか、地球社会の常識が通用しない面はたくさんある。当然それだけ、危険は多い。

 でもさっきも言ったけど、俺たちがついてる。いや、俺たちだけじゃあない。おんなじ境遇になった人が協力してギルドを作ってて、みんなで協力体制を取ってるんだよ。ちなみに俺たちは、ウィリシアってギルドに所属してる。本部はここから割と近くだよ」

 元気づけるべくはきはきと喋るも、果奈の表情は浮かないままだ。

 決意を固めた進也は、両手で果奈の両肩を掴んだ。

「君はこれから、俺たちと一緒にウィリシア・ギルドの本部に行く。そこでこの世界での立ち回りや、生きていくための力を身につけるんだ。心配しないで。ウィリシアはきちんとした団体だし、君を手荒に扱ったりはしない。というか、万が一そんな真似をしてきたら言ってくれ。俺たち三人で、本部をぶっ潰してやるから。こう見えても俺、けっこう強いんだ」

 進也は全力で力説した。両側のあいかと柚月も、果奈に暖かい視線を送っている。

「ありがとう。正直まだ状況についていけてないし、不安はすごく大きいけど、──私、がんばるね。家族も友達も、みんな向こうで待ってるんだもん。俯いてる暇はないよね」

 きっぱり言い切ると、果奈は健気に笑った。

(ちょっとは前向きになれたか。良かった。でもここからだ、大事なのは)

 あいかたちと仲良さげに会話する果奈を見やりつつ、進也は静かに思考を巡らしていた。

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雪銀かいと

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