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塔の悪魔  作者: 炯斗
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005/

「カノトちゃんさ、噂話って興味ある?」

「それなりには」

そう返すと、フィルメクオコットさんは大仰に驚いて見せた。

「意外〜!てっきり『ないですね』キリッって返されると思ったよ」

こちらとしても驚かれるのは予想内だった。

「んーじゃあさ、これこれ。読んだ?」

差し出されたのは簡素な冊子だった。留め具もなく、折った紙が重ねられているだけのものだ。学業区内で偶に刊行されている『新聞』だ。内容は地域情報誌といった方が近い。大教室や休憩室、購買などに置かれており、無料で手に出来る。発行元は新聞部となっている。安くはない紙を無料配布するのだから金持ちの道楽なのだろう。

とはいえ、外界に興味のない研究者には貴重な情報源でもある。私も今迄に二度程目を通した事がある。

「昨日出た今月号なんだけど、『噂特集』が載っててね〜」

月刊だったのか。であれば、毎号読んでいることになる。

フィルメクオコットさんはパラパラとページを捲り目的の掲載箇所を探す。間もなく紙面を卓上に拡げ、コンコンと指で突いた。

『塔に纏わる噂話』:新入生に向けて塔内の不思議な噂をご紹介!謎を解くのは君かも知れない!?

『新着!気になるあの話』:今ホットな最新の噂をご紹介!話題に乗り遅れるな!

「毎年この時期になると塔の噂まとめが出るんだよ。気付くと内容変わってたりするから油断できないんだ」

「へぇ」

ざっと目を通す。塔に纏わる方は、聞いたことのあるものから知らないものまで、よくもまあ…というほどリストアップされている。聖霊の隠し部屋、刻紋の亡者辺りは有名どころか。購買の竜、これは気になる。不老講師、紫の霧、蠢く雨、囚われの悪魔、この辺りはまだ知らない。というか。

「『悪魔』…?」

聞いたことのない言い回しだ。

「おっカノトちゃんお目が高いね。それは一昨年までは表出してなかった噂だよ。実しやかに囁かれてはいたけどね」

「これだけ説明が載ってないですね?一番解らないのに」

例えば『紫の霧』なら『それは日時選ばず立ち込め、意思あるようにうねり、人目を感知すると瞬時に散じるという』というように、簡易ながらに内容説明がなされている。

「『塔には悪魔が囚われている』。本当にそれだけなんだよ、昔からずっとね」

「『悪魔』って何ですか?」

『魔』というのは現象だ。善も悪もない。その『魔』でないとしたら、力の名称か、『常軌を逸した』といった意味合いの形容詞だ。

「さあねぇ。それこそ他で聞いたことない言葉だし。まあ意味解んないのも噂の醍醐味?」

『囚われている』というのだし、何か悪いものなんだろう。塔内に魔溜でもあるのだとしたら、警戒するに越したことはない。そういう警告だろうか。

そう考えながら次に目を滑らせる。新着の噂。

『話題の新鋭占い師、占術局が論文を隠蔽か』

『特許王、新たな術式構築か』

『新星現る!とびきりキュートなアイドル!?』

なるほど。記事によると特許王は新たな特許の申請のために来塔する可能性が高い、ということらしい。

「何か気になるのある?」

マジマジと読んでしまった私にフィルメクオコットさんはワクワクと問い掛けてきた。

「論文の隠蔽…事実だったら協会の信用に関わりますね」

「学長はそういうとこ厳しい人だからないと思うけど、占術局だしなぁ。あそこは結構勝手やってるって聞くねぇ」

学長はイコール協会の長だが、魔術師協会も一枚岩とは言えないらしい。

「特許申請受付は…暫く賑わいそうですね」

「だねー。一目見ようって人が多く詰め掛けると思うよ。オススメはね、カフェ・ハルマの通路寄りの席。受付が見えるんだよね〜。ちょっと変な姿勢取ることになるけど」

そこまでして覗き見してもだいぶ豆な気がする。

「…キュートなアイドルは…」

コメントが見付からない。しかしフィルメクオコットさんは自慢げに何某かのカードをチラつかせた。

「何を隠そう、ファンクラブ会員なのさ!」

「…実在していた」

ということらしい。

「カノトちゃんの使い魔は見た目が似てるから気を付けなよ〜」

しかもニンゲンじゃない。

「使い魔は今交換中なので」

「えっ!?イイヒト!?」

「いえ友だちと」

フィルメクオコットさんの目が雄弁に「友だち居たんだ…」と語っている。まあ、二ヶ月めにして漸く出来た友だちだ。…友だち…といって良いと思う。使い魔を交換したくらいだし。うん。

「そっかあ、よかった〜。そうだよね〜」

そんなに友だち作らないタイプにみえるだろうか。確かに社交的なタイプではないが、生活に困らない程度に知り合いは必要だと理解している。

「アタシもトモダチだよね?」

「えっ」

「『えっ』!?」

一拍の間が生まれる。

「フィルメクオコットさんは先輩なので…」

「ルームメイトじゃん!トモダチでいいじゃん!?」

本日、二人目の友だちが出来た。

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