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塔の悪魔  作者: 炯斗
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200/

「クノくん!そっちから来てくれるとは嬉しいなぁ!」

クーシェ先生は両手を広げて歓迎してくれた。喜色満面だ。

「ん」

玄獣学研究室を訪れている。夜分にも関わらず研究生たちはそれなりの数が居るようだけど、先生は構わず部外者を招き入れる。研究生たちも特に先生の動向に興味はないようだ。常に自由な人なのだろう。

「先生、特許王、知ってる?」

「んんん~? ごめんねぇ、先生ヒトにあんまり興味がないからねぇ…」

「そっか」

じゃあ仕方がない。

「その特許王がどうかしたのかい?」

「えーと。塔に来るって、聞いたから」

「ふぅん?」

何処か不穏なものを感じて、先生を見上げる。瞳に剣呑な色を見た気がした。

「先生?」

「うん?いやいやぁ、君が興味を持つ相手なら、先生も俄然興味が沸いて来るなぁとねぇ?」

先生は伸びをしながら研究生たちに「誰か、知ってるかい?」と問い掛けた。

「そりゃあ有名人ですよ。人物自体は先生以外皆が知ってますよ」

なかなか手厳しい。

「いつ、どこに来る?」

答えてくれた研究生に問い掛ける。彼は目を細めて視線を外し、少し口を尖らせた。

「そこまでは。ただ彼には師事した特定の講師はいないらしいので、学長の処へ行くんじゃないですかね?」

表情の真意は解らないけれど、丁寧に対応して貰えたので礼を言う。彼は研究生たちに引き摺られ、そのまま居なくなってしまった。よく解らない。名前を聞こうと思ったのに残念だ。

「気にしなくていいよぉ。抜け駆けは許されないからねぇ」

それぞれの作業をしている筈の研究生たちが一斉に力強く肯いた。この研究室には独特の空気ルールがあるのかも知れない。

「それで、何用なのかなぁ?」

「用は、特には。『会いたかった』?」

「 」

先生は呼吸と瞬きを忘れてしまったようだ。我関せずに見えた研究生たちもこちらに視線を向けている。

「同郷、なので」

小刻みに震え始めた先生に、研究生の一人が駆け寄った。耳打ちして曰く。

「先生、先生。恐らく、特許王の方の話ですコレ!」

「えっ!??」

「会ってみたいな、って」

ガンッ!と先生は突然倒れ込む勢いで床を叩いた。とても吃驚した。

「…先生?…大丈夫?」

「………………大丈夫じゃあないけど、気にしないでいいよぉ」

長い沈黙の後、ゆっくり上げられた先生の顔は笑顔ではあった。

「先生勘違いしちゃったぁ。うん、訊き方が曖昧だったねぇ。反省反省」

どうやら返答を間違えたらしい。つまり、ここに来た理由を問われていたのだろう。なるほど。

「すみません。ここには、先生とお話ししに来ました。特に用は…ないです」

「クノくん」

お邪魔になるようなら退室しようかと思ったけど、先生に真顔で呼び掛けられて動きを止める。

「抱き締めていいかな?」

「ダメです!」

「先生ステイ!」

研究生たちから一斉に制止されていた。



明け方、部屋に戻るとココットはもう起きて朝食の準備を始めていた。

「ただいま」

「あれ〜、おかえりなさい」

そういえばココットは玄獣学を取りたいと言っていた。

「玄獣学の先生、変な人だね」

「クーシェ先生?変な人だよね〜」

やはりその認識で合ってるみたいだ。

「玄獣への愛がすごいんだよね。それ以外はゆる〜い感じみたいだよ」

「そうなんだ」

「でも気に入った相手には結構粘着質みたいだから、クノちゃんは気を付けた方がいいかもね」

手遅れの気配がする。その警告は遅かったかも知れない。

「クノちゃんは『塔の噂』聞いたことある?」

歴史のある施設にありがちなものだ。七不思議とか都市伝説とか呼ばれるものの一種。

「幾つかは」

「クーシェ先生も数えられてるんだってさ、ソレに」

曰く、不老長寿。うんとうんと昔から居て、ずっと姿が変わらない。

「研究対象になるんじゃ?」

「そ!なってないから、信憑性の低い『噂』留まりなんだろうけどね」

本人の雰囲気が胡散臭いからそんな噂を立てられるのでは、とココットは笑う。

迂闊なようで巧くやっているのだろう。ちょっとした遊びのつもりなのかも知れないなと思った。


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