第九十五話 幕間の物語
エルシィ達がトップファイブに挑戦している頃、ユメノプロダクションの事務所ではトロピカルの3人がレッスンをしていた。
「そろそろ先輩達の出番っすかね?」
時計を見て檸檬がそう言った。
「檸檬、気持ちはわかるけど練習に集中しなさいよ、今日そのセリフ10回ぐらい聞いてるんだけど?」
桃子がダンスの練習を続けながら言った。
「正確には9回目ですね、時間的にはあと30分は後ですよ、今はちょうど2等星戦ぐらいじゃないでしょうか?」
壁際で休憩中の柚子が時計とトップファイブ戦のタイムテーブルを見ながら言った。
「2人は実際、先輩達が勝つと思います?」
試すように檸檬が問いかけた。
「どうでしょうか?1等星の春風さんは通称化け物と言われるぐらいの方ですし、先輩達でもなかなか難し、」
「勝つわよ!先輩達なら、絶対に」
柚子の言葉を遮るように桃子が言った。
「桃子ちゃん、私もそうなって欲しいけど」
「なかなか厳しいってみんな言ってたっすよ」
「2人はエルシィ先輩のほんとうの実力を知らないからよ」
2人は頭にはてなを浮かべながら聞いていた。
「エルシィ先輩はね、グループ組んでるから意識的か無意識かわからないけどセーブしてるみたいなの」
「そうなんすか?そんなにすごいんすか?」
檸檬が興味をもったようで食い入るように聞いた。
桃子を2人に向き直り話出した。
「あれは、私が事務所に所属することが決まってすぐだったわ」
桃子は契約書をもらい帰る途中でレッスン室の近くを通った。
その時に微かに歌声が聞こえてきた。
ひょっとしたらエルシィが歌っているのかもとレッスン室の扉を少し開け中を覗いてみた。
そこにはエルシィがいて、軽く歌の練習をしているようだった。
邪魔をしては悪いと扉を閉めようとした時、
「さて、最後に久々にしっかりじっくり歌って終わりましょうか」
エルシィの独り言が聞こえ、なんとなくそれを聞きたくなった桃子は少し扉を開けた状態にしていた。
歌い出したエルシィの曲は聞き覚えのある「天使の遊び歌」とは別格だった。
歌は直接脳に叩き込まれるような心地よさ、本当に目の前で天使が遊んでるようなステップ、幻覚で羽が生えて浮いているような光景。
それらを直接体感した。
これがエルシィの本気なんだと桃子は感じ、この人ならアイドルの頂点に立てると実感したのだった。
桃子は2人にその時の感動を伝えた。
2人は体感していないが、桃子の熱量からかなりのことなのだと感じてはいた。
「ひょっとしたらエルシィ先輩の本気が今回見れるんじゃないっすか?」
「確かに、桃子ちゃんの話を嘘とは言わないけど一回先輩の本気は見てみたいかも」
2人の言葉に負けて、練習を中断し見学に向かうことにした。
念のため、桃子は昇に連絡し、会場へ見に行く許可をもらい現地に向かうのだった。
つづく




