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第八話 モールステージの悲劇

約束通り武雄のショッピングモールにて歌える機会をもらった。

具体的には、毎週日曜日にモールステージにて行われるイベントの前の時間だった。


エルシィの持ち歌はまだ一曲のため長く時間を取れなかったのと、武雄がすぐにステージに立てるように無理やりねじ込んだためだ。


本番の朝からリハーサルを行っていた。

無理やりねじ込んだため、時間がシビアで登場と退場の時間がきっちり決まっており、一つのミスで後ろに影響を与えるためだ。

武雄はそこまで気にしなくて良いとのことだったが、昇は今後のためにも時間はきっちり出来るようにしようとしていた。

ライブや生放送などは遅れることは許されないと昇は考えていたためだ。

と言っても、前後10分程度の余裕はあるため練習にはちょうど良いというのもあった。

「どうだエルシィ?本番も大丈夫そうか?」

昇はお昼前にエルシィに声をかけ、様子の確認をした。

「はい!初めてのことなのでまだ少し慣れてないですけども、皆様優しくしてくださるのでなんとかなりそうです」

アイドルは歌ったり、踊ったりだけではなく裏方の方ともやり取りし、本番でも支えてもらえることが重要で、今回そのコミュニケーションの練習にもなっているようだ。

エルシィ自身、天真爛漫で人懐っこいためアイドル向きな性格だった。

「そうか、そろそろ休憩して本番に備えようか」

昇がそう言った時に視界端にすっと人影が通り過ぎた。

そちらを見るも誰もいなかった。

(きのせい?あっちは機材とかあるからスタッフさんかもしれないな)

そう思ったが、なぜか一抹の不安が残った。

「どうかしましたか?」

エルシィに声をかけられ、なにもと返し昼休憩に入った。

エルシィの出番は14時のイベントの前だ。

準備も含めて13時には戻らないといけないため少し早めに休憩に出た。


本番直前、昇は胸騒ぎが収まらず、むしろ徐々に増していた。

「昇さん?大丈夫ですか?なにか苦しそうですけど」

エルシィに言われ、ハッとなり慌てて笑顔を向け、

「大丈夫だよ。久しぶりのアイドルデビューで緊張してるのかも」

ハハハって軽く流してみたものの、言いようのない不安は拭いきれなかった。

(エルシィの準備は見てる限り問題なかった。ここのスタッフはいつも設営してるからミスもないはず。そのはずなんだ)

自分に言い聞かせるようにしていた。

「それじゃあ、行ってきます!客席で見てて下さいね!」

あぁと返しステージ裏にかけていくエルシィを見送り、昇はステージ側に回った。


客席にはイベント待ちのお客たちがそこそこ集まってきていた。

エルシィ登場5分前、客席の奥にいた昇はなんとなくステージを見ていて、ふとステージの端ちょうどエルシィが出てくるところにキラキラ光るものが見えた。

目を凝らしてみてもよく見えない。

オペラグラスで見てみると、線ようなものがキラキラしていた。

その瞬間昇は駆け出していた。


同時刻エルシィ側

本番前に登場から退場するまでの流れを確認していたエルシィに

「エルシィさん、出番なんで登場位置に移動お願いします」

スタッフに声をかけられ、エルシィはステージ袖に移動した。

(こっち側から出て、向こう側に抜ける。よし!大丈夫!)

そう、心のなかで気合を入れて、

「エルシィさん、どうぞ」

スタッフの合図で、エルシィはステージに向かった。

エルシィが出ようしていたステージの端にワイヤーがピンっと張ってあったがエルシィは気づかずそのワイヤーに足を引っ掛けてしまった。

エルシィはそのまま前に倒れ込んだ。

その上からワイヤーに引っ張られた角材が、エルシィに降り注ぐように倒れてきた。

エルシィは思わず目をつぶった。

しかし、エルシィにはいつまで経っても痛みはやって来なかった。


ワイヤーを見つけた昇はワイヤーが引っ張られると角材が倒れてるようになってると気付き、すぐさまエルシィのものに駆け出していた。

しかし、手の届く目の前でエルシィがワイヤーを引っ掛けてしまった。

倒れ込むエルシィに倒れる角材。

昇はエルシィに覆いかぶさるようにし、エルシィを角材から守った。

ガラガラ、ガタガタ、ガターン

いくつもの角材が昇の上に倒れ込んだ。

すぐさまスタッフたちによって角材は退けられたが、昇はエルシィをかばったまま意識を失っており、病院へ搬送されることになった。

つづく

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