第十三話 カウントダウン
昇が武雄から聞いた策をエルシィに伝えるために事務所に来ていた。
そこでは、エルシィが一人黙々と練習をしている姿だった。
縁と麗には来れなくなると事前に聞いていたが、その姿はこみ上げる何かがあった。
「昇、ちょっと相談があるんだが?」
篤は昇に声をかけた。
「ぼくも相談がある、エルシィのことなんだが、武雄さんの計らいで今度のコンテストに出れることになったんだが、練習が間に合うかわからないんだ」
昇は逆に相談をした。
篤は少し驚いた顔で
「そのコンテストって隣町でする駅前のコンテストか?」
「あぁそう聞いてる」
昇の答えに篤はニヤリとした。
「それは都合がいい。俺の方にも考えがあってな」
昇はその案に乗ることにした。
縁と麗は昇から今後の方針を聞き、一週間後のコンテストにひとまず焦点を合わせることにした。
固定の予約以外は受付ないようにし、エルシィに関わる時間を増やしていた。
エルシィの現時点での課題は3曲すべてを同じレベルのパフォーマンスに合わせること。
一曲目「天使の遊び歌」
二曲目「エンジェルエール」
この2つはアップテンポで乗りやすいため、すぐに上達した。
問題は三曲目「シャインステージ」
この曲は他の曲を元気系とするとクール系になり、エルシィが苦戦している理由でもあった。
エルシィ自身も三曲目が縁のお手本と比べて自分は何か違うのを感じていたが、具体的にどう違うのかはわからない状態だった。
あと一歩何かが足りない、ピースがハマらない状態でエルシィも戸惑いと焦り感じていた。
駅前コンテストまであと5日に迫った三曲目もなんとかダンスはできるようになったが、歌だけがネックな状態が続いていた。
「何かこうもう少しで掴めそうなんです。でも、その少しがすごく遠くに感じてしまってるんです」
珍しいエルシィが縁に弱音をはいていた。
「今は、焦ってはだめよ。だれでもぶつかる壁なのよ。自分のイメージと違うものを表現するのは難しいの。今のあと一歩がつかめればあなたは一気に成長できるわ。だから、焦らないで」
縁はエルシィに向かって言った。
「大丈夫、あなたならできるわ。もし、自分を信じれないならあなたを信じてる、私や昇、麗や篤を信じて」
「わかりました。みなさんを信じてもう少し考えてみます。ちょっと外の空気吸ってきますね」
そう言ってエルシィは練習室をあとにした。
横で見ていた篤は、縁に
「そろそろ例の作戦をしてもいいか?ちょっとエルシィには荒療治かもしれないが」
「そうね。お願いするわ。たぶん、いい刺激になると思うわ。そこから成長するかはあの子達次第ね」
縁はそう返した。
篤は頷き、電話をかけた。
つづく




