第十二話 重なる障害
「どうしてもムリでしょうか?」
昇は武雄に向かって真剣な眼差しで言った。
「残念ながらムリやな。ステージの復旧だけでも一ヶ月はかかる。それにあんな事故があってはすぐにはつかえん」
武雄も厳しい顔で答えた。
新人コンテストに向けて、昇は、モールのステージで実践を積ませる予定だったが、あてが外れてしまった。
「モールはつかえんが、別で準備しておる。」
武雄の言葉にうなだれていた昇が顔を上げる。
「それはどういう?」
「モールとは別のステージを手配してやる。ただそれでも半月はかかるからな。それに、1曲では出れんから3曲は歌えるようにしておけよ。まぁ、新人コンテストに出るつもりならもう準備はしてると思うがな」
「ありがとうございます、武雄さん!」
昇は満面の笑みで答えた。
「じゃがまったく問題がないわけでもない」
「それは?」
「わしが協賛しておるが、主催ではないから贔屓はできんからな。しっかり実力を見せてこい」
昇はその言葉に力強く頷いた。
とある部屋にて
「武雄さんからの要望なので、一応今度の大会への出場は認めたが、うちの子たちが万が一でも負けることのないように手を打たないといかないなぁー」
それの人物は、武雄の記念パーティでエルシィの歌を聞き、自分の事務所の障害になるといち早く理解し動いていた。
モールでの事故もこの人物の策略だった。
次の大会でもなにかを企み、笑みを浮かべていた。
エルシィ側にも想定外のことが起こっていた。
縁も麗も急な仕事が入り、しかも、大口のため断ることもできず、今までほぼつきっきりだったエルシィのレッスンが一時的にストップしてしまっていた。
篤は1人で黙々と練習をするエルシィを端で見ていた。
実は篤にも急な仕事が入っていたが、縁や麗と違って相手がいないため、超速で終わらせていた。
曲のストックもあったので、普通なら3ヶ月ほどかかる仕事を一週間と経たずに終わらせていた。
篤自身、なにか裏があるように感じられたのも仕事を終わらせた理由だった。
実はこれは篤の勘が当たっていた。
もし、エルシィ1人になっていたならこのビルが火災に合う予定になっていた。
しかし、篤がいたため中止になっていた。
昇、エルシィそれぞれに妨害という名の障害が立ち塞がっていた。
それも、同一人物の手によって。
「これは俺も動かないといけないかもしれないなぁ」
誰に言うでもなく!エルシィを見ながら篤は呟いた。
つづく




