表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

3-06 神々の饗宴〜或いはDOTCHの料理グランプリ〜

 はぁ……まったく、なぁんでこんなことになっちまったかなぁ。

 っと、失礼。

 ことの発端はウチの親父……あ、ギリシャの雷神ゼウスと(自称)唯一神ヤハウェの大喧嘩。

 お互い売り言葉に買い言葉で決着つけようとなった内容が、何故か『多神教の神 VS 聖人』の料理対決七番勝負!

 どっちが美味いモノを作れるか! あ、神様なんだから楽勝とか思うじゃん?

 コレがさぁ、なかなかそう簡単にもいかなそうな話でね……。


「ヘルメスさぁん! 本番、そろそろ始まりますよぉ!」


 はぁい! 今行きます!

 それじゃ! 本番でお会いいたしましょう!


  ※※※


 作者からのお願い

 構想段階で某戦闘がリアルで勃発してしまいましたが、特定の宗教を貶める意図はありません

 有識者の皆様へ

 作者の知識・財力・時間に限界があり全ての宗教に触れているわけではありません

 あくまでも娯楽小説としてお楽しみください

 皆さま! ようこそ競技場(スタジアム)へ!

 さあ! いよいよ開催となりました! 第一回DOTCHの料理グランプリ!


 司会は私、オリンポス十二神が一人! 伝令神ヘルメスと!


「四大天使にしてテレビ・ラジオ関係者(マスコミ)の守護聖人、ガブリエルでお送りいたします〜」


 いやぁ、ガブリエルさん。ご一緒できて光栄です。


「こちらこそ。お手柔らかにお願いいたしますわね〜。ヘルメスさん」


 とまぁ、一体全体突然どうしたものかといいますと、騒動の発端はウチのクソ親父げふん、ゼウスと唯一神(ヤハウェ)の大喧嘩でございますよ!


 詳細はまぁ……うん、ぶっちゃけ聴いていたら大して面白くなかったんで省略いたしますが、あーだこうだと擦ったもんだの挙句、多神教対一神教で、料理対決することに決まりまして……。


「あらあらまぁまぁ……血を見ない、とっても平和な争いでよかったですわね〜」


 そこは私もガブリエルさんに全力同意ですよ。はい。


 ──と、話が逸れましたが、そんなわけで多神教からは各国の神々から、一神教の中からはガブリエルさんのような守護聖人の中から代表者を選んで、これから料理対決七番勝負をおこないます!


 なお、選手は事前に主催側で指名させていただいておりますが、誰が出てくるかドキドキワクワク感を損なわないために、ご観覧の皆様方には直前まで秘密とさせていただきます!


「さぁ〜! 十四名の選手の皆さま? ご準備はよろしいかしら?」


 それでは! 早速ですが、最初の対決に参りましょう! ガブリエルさん、お題発表をお願いします!


「はい、お題は「アミューズ」! 歴史は浅く、いわゆる「お通し」・「つきだし」と呼ばれる少量かつシンプルな存在(モノ)ですが、それでいてフレンチ・フルコースの最初を飾る大切な料理ですわ」


 ありがとうございますガブリエルさん! それでは皆さま、大変長らくお待たせいたしました! 


 第一試合を担当する選手が双方とも、間も無く入場です!!!



  ※※※



 ──と、大会(本編)を始めるその前に。

 読者諸君には自分(ヘルメス)視点ではあるが、多神教側の事情(ココだけの話)を語っておこう。



 時は数日前に遡る。


「どうしてくれよう……」


 頭を抱える親父──げふん、最高神(ゼウス)を横目に、オレは内心盛大にため息を吐いた。


 おろおろと落ち着きなく慌てる姿に神の威厳は無く、その姿はただの濃い髭面のおっさんである。


「そもそも、なんでこんな見切り発車な企画(こと)をすることになったんです?」

「そうじゃそうじゃ」


 円卓に座っている複数の神々が、好き放題口を開く。


 主催(ホスト)ギリシャ(ウチ)最高神(ゼウス)だが、北欧代表(オーディン)中国代表(女媧・伏羲)ケルト代表(ルー)エジプト代表(イシス)インド代表(ヴィシュヌ)日本代表(天照大御神)アステカ代表(コアトリクエ)──などなど、古今東西南北を問わず集まった客神たちも、親父(ゼウス)に引けを取らぬほど高位の神々であった。



 またこの神々以外にも、この円卓を囲むよう、様々な神が控えて、会議の内容に耳を傾けている。


 そのままではあるが、『多神教同盟ポリセイズム・ユニオン』というのがこの集まりの一応の名前である。


 ──まぁ、そんなことはさておき。


「だってのぉ……」


 親父(ゼウス)は頭を抱えて机に突っ伏した。


「売り言葉に買い言葉。議論が白熱していくうちに、アレよアレよと……」


 親父(ゼウス)が頭を悩ます相手。それはとある地域において『唯一神(アッラー)』とか『絶対神(ヤハウェ)』と呼ばれている神のことである。


 かの神が現状数多(あまた)の人間に信仰される、大変強い力を持った神である──ということにまぁまず間違いは無いのだが、はた迷惑この上ない話ではあるのだが、かの神は「唯一柱の神である自分以外で、神を名乗る者は『悪魔』である」と、失礼極まりない主張を昔から繰り返していた。


 親父(ゼウス)は『多神教同盟ポリセイズム・ユニオン』の代表として、苦情を申し出に行ったわけなのだが──。


「売り言葉に買い言葉で、どうやったら『料理七番対決』とか、よくわからない展開になるのですか」

「正直、頭に血がのぼってたんで覚えとらんです……」


 エジプトのイシス様の呆れたような冷たい視線に、情けないほどしおしおになっている親父(ゼウス)


「どうせ皆、宴会好きだから、なんとかなるだろーとか思ったんだろ」


 北欧のオーディン様がガシガシと頭をかきながら、ため息混じりに図星をついてくる。


「貴様も同席したのなら全力で止めよ。ヘルメス」


 いやいやいやいや──自分はタダの広報担当なんで無理ですよ! と、インドのヴィシュヌ様に突然話を振られたオレは全力で首を横に振った。


「しかし……意外というか、予想外というか……」


 中国の伏羲(フッキ)様の隣で、同じく中国の女媧(ジョカ)様が深くうんうんと頷いて続ける。


「コレだけ多種多様な神が集まっているのだから、一柱(ひとり)くらい『料理の神』が居ても良いじゃろ普通……」


 そう。そうなのだ。


 親父(ゼウス)の目論見が外れた一番の理由(ポイント)

 国や国境を越えて豊穣の神や火の神、竈門(かまど)の神や酒の神は数多(あまた)あれど。


 何故か『料理』を司る神が居ないのだ。


 あ、いや、訂正しよう。日本の天照大御神(アマテラス)様の管轄に、近い権能を持つ神々が居なかったわけではないのだが──。


伊勢神宮外宮(私の料理番) 豊受大神(トヨウケヒメ)ならともかく、他の豊穣神がねぇ……ちょっと難ありというか……」


 視線を盛大にそらしつつ、天照大御神(アマテラス)様は長い黒髪をいじりながら、もにょもにょと口ごもる。


「その、全年齢向けじゃ無いというか……食べ物が、口やら鼻やら尻から出るというか……」


 ナニをどうしたらそんな誰得の権能が求められるのか。特殊性癖(ニッチ)にも程があるだろソレ。

 ──流石はHENTAIの国JAPAN。


「あと一応祀られてはいるけれど磐鹿六獦(イワカムツカリ)田道間守(タジマモリ)は元は純粋な人間なんで、我が国のことながら、はたして神様カウントしていいものかどうか……」


 訂正。もはやなんでもありだな日本……。


「一つ質問なのだが、ウチのダグザが持ってる大釜のような、調理を補助する魔法の品(マジックアイテム)の持ち込みは可能か?」


 ケルトのルー様がおずおずとその長い手を挙げた。しかし。


「ワシもソレ思ったが、即刻却下くらってしもーた。純粋に技術・技量の戦いであるため、魔術付与(エンチャント)祝福(チート)の類も禁止じゃと」


 親父(ゼウス)が突っ伏したまま返答。

 一部の神から「えーッ!」と不満げな声が聞こえたが、質問をした当のルー様はというと「まぁ、アレ、ヤツの好みでほぼ粥専用だしな……」と、何故か満足げに頷いていた。


 そんな中、エジプトのイシス様が目頭を押さえながら口を開く。


「決まってしまったことは致し方ございませんね……とりあえず誰が出るか、選出しましょう」

「七番勝負……ということは、お料理の詳細も決まっておりますの?」


 アステカのコアトクリエ様が長い舌で、ご自身の舌をぺろりと舐める。


「じ……こほん、()肉料理なら、審査員として私も食べたいですわ〜」


 残念ながら審査員は会場でランダム抽選、料理は二十世紀末のフレンチ・フルコースディナー基準なのですよ。


「まぁ。残念ですわぁ……」


 オレの言葉にしょんぼりと肩を落とすコアトクリエ様。

 はい。言い直されましたが、さすがに人肉(・・)は絶対に出てこないと思います。


「フランス料理なら一番最初は前菜とかの軽食だろ? なんだったらオレが出てもいいかい」


 円卓の向こう側(一般席)から、ひらひらと動く白い手が伸びた。聞き覚えのある声に、オレは思わず顔を(しか)めた。


「おぉ……お前か!」


 親父(ゼウス)が顔をあげ、嬉しそうに声を弾ませる。


親父(・・)が持ってきた話の割にはなんだかんだで面白そうだし、まぁ、なんとかなるでしょ?」


 ね! と、何故かオレの方に向かってウィンクしてくる兄弟(・・)に、オレはげんなりとため息を吐いたのであった。



  ※※※



「さぁ! 選手入場! まずは我が神の(しもべ)から! ローマ皇帝プブリウス・リキニウス・ウァレリアヌスの御代! 我が神に殉じて死を選んだ敬虔なる殉教者! ローマ・ロッテルダム・スリランカ・カナダの守護聖人であり、()()()()()()()()が、満を持さずにいきなり登場! 聖・ラヴレンティウスー!」


 おお! 最初からフルスロットル! 聖人側の本気を感じます!


 対する多神教同盟(こちら)は我がギリシアはオリンポス十二神が一柱! 父ゼウスと人間の間に生まれ、放浪の末自力で信者を集めに集め、神へと昇格した葡萄酒(ワイン)狂乱(らんちきさわぎ)酩酊(のんだくれ)の神ディオニュソス!


「うわー。兄上紹介めっちゃ雑ー! それ全然褒めてなーい!」


 うるせぇ。異性装(コスプレ)神と紹介しなかっただけマシだと思え!


「ちょっとぉ。弟扱い酷すぎない?」


 気のせいだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 第二十回 書き出し祭り 第三会場の投票はこちらから ▼▼▼ 
投票は1月13日まで!
表紙絵
― 新着の感想 ―
[一言] 【タイトル】料理がテーマに見えるタイトルだが、小説媒体でこれは茨の道だと思う。 【あらすじ】ヘルメスのキャラを立てて、作品の方向性を示す。やることはやっているあらすじだが、「作者からのお願…
[一言] 3−6 神々の饗宴〜或いはDOTCHの料理グランプリ〜 タイトル:グルメバトルかな? あらすじ:ドタバタ劇が始まる予感!神が食べるのではなく作るんだね。 ひと言感想:多神教同盟の個性的…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ