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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第92話 作戦会議

挿絵(By みてみん)




 王墓所内、中央付近に位置する場所。


 壊れた墓石と斬撃の跡が残る、緑地の霊園。


 墓を彩る草木が埋められ、中心には大樹があった。


 全長三十メートルほどの針葉樹。葉には赤い果実が成る。


「アレは手探りで勝てる相手じゃない……。所感を共有してくれ……」


 ベクターは、大樹の近くで語り始める。


 顔は真っ青で、体の震えは止まっていない。


 一般的な魔術師から外れた男を相手にしたせい。


(所感か……)


 サーラは話を聞きつつ、言葉に詰まる。


 どこからどこまで話していいのか分からない。


 千年前に遡って、共に分霊室を作ったなんて言えない。


「なーる。そういう寸法か。……俺っちは、そうだなぁ。とにかく硬い!」


 代わりに返事するのは、隣にいたルーカスだった。


 言語化能力に乏しく、なんの考察材料にもなってない。

 

(この内容の薄さだと、朝までかかりそう)


 辛辣な感想が浮かびつつも、サーラは喉元で止める。


 発言するなら、実入りある内容を提供しないといけない。


「要約すれば、俺も同意見だが……。エリーゼはどう思う……?」


 すると、ベクターはこちらを向き、話を振る。


 一瞬、誰のことを言ってるのか理解できなかった。

  

 でも、すぐに思い出した。ここでは、第五王子なんだ。


 そう意識を切り替えると、曇った思考が少しスッキリした。


「硬いのは、長年かけて膨大に蓄えた潜在センス量が原因。肉体じゃなく、精神を崩そうとしたけど、無理だった。それに、未来を予知できる魔眼と、霊体を召喚する能力まで持ってるし、他にも手札を無数に隠し持ってるはず」


 サーラは淡々と聞かれたことだけを答える。


 ここにいる誰よりも、マーリンとの付き合いは長い。


 ただ、直接戦ったところは、今まで一度も見たことなかった。


 いつも単独で行動し、歴史の影に暗躍し、気付けば終わってる感じだ。


 過去では、目の前のことで頭も手も一杯だったし、考える余裕も暇もなかった。


「やけに詳しいな……。アレとどれぐらい戦っていた……」


 目を見開きながら、ベクターは反応を示す。


 発言の内容じゃなくて、理由が気になったっぽい。


「それ……マーリン攻略に関係ある? あるなら話すけど」


 ここは、お茶を濁すしかない。


 悪知恵だけは、過去で培ってきた。


 話す理由がないなら突っ込まないはず。


「いや、いい……。余計な質問だった……」


 目論見通り、再び話は本題に戻っていく。


 なんの不都合もなく、生産的なやり取りのはず。


 だけど、ベクターの物悲しそうな顔がふと目に入った。


(これで、いいんだよね……)


 なぜかズキンと胸が痛んだ。


 直接、嘘をついたわけじゃない。


 特に間違ったことは言ってないはず。


 そう思いながらも、少し罪悪感が残った。


「しっかし、事実だとしたら、勝てる気がしねぇなぁ」


 すると、ルーカスは仕切り直すように言った。


 微妙な空気を読んで、気を回したのかもしれない。


「有効打は守護霊。恐らく、マーリンに対しての特攻効果がある」


 サーラは懐から守護符を取り出し、議論を進める。


 さっきは使わない前提で戦ってたけど、実力差は明白。


 安全に倒すなら、使う選択肢を考えてもいいように思えた。


「しかし、それは……。百年後にツケを回すことになるぞ……」

 

 ベクターは的確にデメリットを伝える。


 正論だった。結局、問題を先送りにするだけ。


 イギリスはマーリンの支配下に置かれたままになる。


「……じゃあ、どうするの? このままだと誰か死ぬよ?」


 だけど、敵との実力差があり過ぎる。


 守護霊なしで倒すのは、どう考えても難しい。


「それは……」


「そうかもなぁ」


 実力差を痛感する二人は、バツの悪い反応をする。


 結局はこうなる。全ては、マーリンの手のひらの上。


「決まりだね……。わたしがケリをつけるよ」


 仕組まれた未来に抗いたい気持ちはあった。


 だけど、これ以上、他人を巻き込みたくない。


 自分のために、誰かを犠牲にするのはもう嫌だ。


 覚悟を決め、サーラは妥協して、楽な方へ流れる。


「それ……私ならどうにかできると思うけど、どうする?」


 その流れを食い止めようとする人がいた。


 突如、背後から現れて、声をかけた少女がいた。


 サーラは振り返り、分かり切った正体を確認していく。


「……リーチェ」


 過去に遡り、育て上げた弟子。ついた異名は『至高の魔女』。


一騎当千の実力者であり、戦術を超えた、戦略兵器の登場だった。

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