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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第91話 避けられない戦い

挿絵(By みてみん)




 両手に装着されるのは、黒の指貫グローブ。


 本革の滑らかな布地を親指で引いて、前を向く。


 白い廊下の真ん中に立っていたのは、褐色肌の少年。


 ジェノ・アンダーソン。帝国で一週間ほど過ごした関係。


 時間の長さは関係ない。同じ店を回した。体術を叩き上げた。


(アミは心を鬼にできん。うちが背負うしかないんじゃ)


 軽く息を吸って、重たい口をゆっくりと開く。


「――――何も聞かんで、うちと殺し合うてもらえる?」


 胸が張り裂けるような思いで、広島は宣言する。


 断言したかった。心の弱みがもろに出てしもうた。


 意思が揺らぐのを感じつつ、赤いセンスを体に纏う。


 上手く調子が出ん。量も安定感も、いまいちじゃった。


 光にムラっ気があって、本調子の四分の一がいいところ。


(人のことは言えんね……。ただ、任務を受けた以上は引けんのよ)


 殺しの任務で、100%の体調で挑めることは、ほぼない。


 緊張、不安、連戦、負傷、疲労、全部を総合して実力じゃ。


 例え、25%の体調でも、その内の100%を引き出せるのがプロ。


 滅葬志士『棟梁』の肩書きを背負う以上、泣き言は言ってられん。


「引き受けます。ただ、俺は殺す気ありませんから」


 ジェノは見覚えのない手甲を構え、言い放つ。


 拳を交える前から分かる。我流ながらも型は同じ。


 脇を締め、左手を前に突き出し、右手は腰まで落とす。


 古武道『般若無道流はんにゃむどうりゅう』。実戦で磨き上げられた、戦闘技術。


 刀や銃を自由に扱えなかった時代に生まれた、打撃特化の流派。


 骸人と呼ばれる、体皮が硬い種族を葬るために工夫された、暗殺拳。


(うちと戦えば、また勝手に強くなるんじゃろうね)


 あの子には、なーんも教えとらん。


 壊れん程度に、ぶちまわしただけじゃ。

 

 それが心身に刻まれて、型になりつつある。


(まぁ、暗殺拳を名乗る以上、活人拳には負けられん!)


 敵愾心を燃やし、無理にでも戦う動機を見つける。


 それでどうにか、正気は保てた。精神状態は持ち直した。


「ええ度胸じゃ!! 今回ばっかりは手を抜かんけぇなぁ!!!」


 迷いを振り切り、廊下を駆け、放つのは暗殺拳。


 皮肉にも、25%中の最高のポテンシャルを発揮した。


 ◇◇◇


 第四小教区。王墓所。

 

 宙を飛び交うのは、拳と蹴り。


 入れ替わり、立ち替わり、攻め立てる。


 息の合ったコンビネーションが、間隙を埋める。

 

「即席にしては……やる方じゃないかな」

 

 それをいとも容易く杖で受けるのは、マーリンだった。


 顔に疲労の色はなく、動きも最小限。無駄な所作が一切ない。


「「――――っ!!!」」


 対する二人。ベクターとルーカスは、杖の横薙ぎを受ける。


 半端に受ければ、即死級の一撃。互いが身を逸らし、回避する。


 会話に興じる暇などなく、攻防に全神経を割いて、このザマだった。


(ふざけるな……ここまで体術がいける魔術師がいてたまるか……)


 ひやりと汗が流れ落ち、ベクターは身近に死を感じる。


 杖に纏われる薄紅色のセンスは微量。魔術は使っていない。


 それなのに、この威圧感。体内に秘める顕在量が半端じゃない。


 体積が小さい割に、放つ一発一発の攻撃が星レベルの質量に感じる。

 

 防御に関しても同じで、殴ったところで意味がないようにしか思えない。


超電導疾駆リニアドライブ


 一方、相方のルーカスはアクセル全開。


 攻め手を休めることなく、ギアを一段上げた。


 合わせることは可能。ただ、上手くいく気がしない。


「待て……。一度、距離を取ってくれ……」


 肩をポンと叩き、小声で指示を飛ばす。


 ルーカスはこくりと頷き、意図は伝わった。


「「――――」」


 反発する力と共に、二人は勢いよく離れていく。


 それと同時に、観戦していたサーラの姿も消えていた。


「逃げたか。まぁ、好きにしたらいいよ。どうせ僕はここから動けない」


 その背を見送り、マーリンはぽつりと攻略のヒントを口にした。

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