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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第87話 異常

挿絵(By みてみん)




 生まれたことが異常だった。


 正常な方法では生まれなかった。


 遺伝子操作。ゲノム編集。体外受精。

 

 それぞれの配分はおおよそ、一対一対一。


 非人道的で倫理観に反する、違法な出生方法。


 ――呪われし子供達計画。


 組織『ブラックスワン』による人体実験。


 聖遺物レリック、UMA、英雄の遺伝子を組み込んだ。


 そこで生まれたのが、人の形を模倣した化け物。


 非凡であることを生まれる前から強要された生命体。


 ――体は異常で出来ていた。


「……バイタルは安定。実験は成功したようだね」


 実験室内には、凛とした声が響いた。


 白衣を着た、長い白髪が特徴の若い女性。

 

 組織の研究者の一人。遺伝子操作を担当する。


 名前はマルタ・ヴァレンタイン。伝説の元代理者エージェント


 年齢は不詳。組織を創設したメンバーでもあるらしい。


 そばに置かれた心電計を見て、実験の成功を確信している。


「被検体008。声が聞こえたら首を縦に振ってください」


 次に語りかけてきたのは短い紫髪の少女。


 臥龍岡ミア。卵子を提供した遺伝子学上の母親。


 年齢は11歳。初経を迎えた瞬間、体外受精を担当した。


 実験当時は10歳。最高に頭が狂ったマッドサイエンティスト。


「…………」


 全て理解できる。こくりと頷き、反応を示す。

 

 培養槽の中にいたのは、長い紫髪にギザ歯の女性。


 ナガオカ・メリッサ。被検体007から生まれた後継機。


 年齢は0歳。にもかかわらず、体はすでに発育済みの大人。


 遺伝子操作で強制的に成長させられ、脳に知識を叩き込まれた。


 腰には008と印字されているのが見える。まるで商品みたいだった。

 

『新生児を成人に発育する方法の確立。再現性があればノーベル賞もんか』


 淡々と事実を並べるのは、一匹の白い兎。


 聖遺物レリックフェンリル。ゲノム編集を担当していた。


 外部遺伝子の導入を得意とし、思念通話テレパシーの能力を持つ。


 その能力の応用で、彼の知識を同期させられることになった。


(……倫理観が欠如した、サイコパスの集まり)


 ここにいる二人と一匹がいわゆる家族。


 ミアが母親。フェンリルが父親。マルタが養母。


 普通じゃない生まれ。普通じゃない体。普通じゃない親。


 知識があるからこそ、一般人との差を感じる。不幸だと思える。


 次第に生まれたことに腹が立った。イライラをぶつけたくなってきた。


「――」


 メリッサは、憤りを培養槽に向ける。


 両手を伸ばし、分厚い透明のガラスに触れた。


 すると、ガラスがピシリと割れて、培養液が溢れ出す。


「おはようございます。気分はどうですか?」


 二人と一匹は微動だにせず、ミアは平然と尋ねてくる。


 胸の内は、生まれて初めて口にする言葉はすでに決まっていた。


「……くそくらえ」


 そうして、メリッサは悪態と共に、この世に生まれ落ちた。

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