表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/156

第82話 追体験②

挿絵(By みてみん)




 11世紀初頭。イングランド王国。首都ロンドン。


 グレートブリテン島内にある国々が分裂していた頃。


 南のイングランドは、北のデンマークから侵攻を受ける。


 ロンドンは、デンマーク側の王が率いる軍に包囲されていた。


 場はロンドン内にある人気のない修道院。日の陰りが見える時間。


「王位簒奪(さんだつ)は目前。我々、『白教』なら逆転は可能ですが、どうされます?」


 教壇を境に問いかけるのは、霊体化したマーリン。


 仮想の白い修道服を着て、生前持っていた白い杖を持つ。


「……見返りには何を求めるのかね」


 対面するのは、王冠をつけた茶髪の男がいた。


 横髪の毛先がくるんと丸まり、濃い茶髭を生やす。


(かつては『剛勇王』と呼ばれた人が、落ちぶれたものですね……)


 赤いマントを羽織り、顔は病的に白く、やつれていた。


 彼は剛勇王の異名を持つ、イングランドの王エドマンド2世。


 侵略に奮闘する姿勢を評された名だが、病を前にその面影はない。


「イングランド……いいえ、グレートブリテン島を治める王の座を頂きたい」


 マーリンは口角を上げ、要望を伝える。


 それと同時に前に突き出したのは、右手の甲。


 対等の立場なら握手だが、この取引は対等ではない。


「……」


 エドマンド2世は、しばしの沈黙の末、片膝をつく。


 そして、手の甲に口づけをし、絶対の服従と忠誠を誓った。


 ◇◇◇


 デンマーク軍は補給により、ロンドンを撤退する。


 白教は追走し、ロンドン南西のオットフォードで撃退。


 敗走を強いられたデンマーク軍はイングランド東部を侵攻。


 エセックスと呼ばれる地区の、丘上にある集落を占領していた。


 時刻は夜更け。闇に乗じて、敵地に赴こうとする二人の影があった。


「敵は三千人規模のヴァイキングだよ。やれんの?」


 声をかけるのは、白いローブを着たサーラ。


 フードを深くかぶり、木の陰に隠れて、尋ねる。


 視線の先には、赤い松明が灯る敵拠点が見えていた。


 農村を根城にして、入り口付近を武装した兵士で固める。


 村の周辺には、木の幹と棒を連ねて、高い柵が作られていた。


「なんとかするよ。そのために魔法を覚えたんだから」


 応えたのは、同じ白いローブを着たリーチェ。


 片手には木製のロッドを持ち、杖先には透明の水晶。


 水晶は、五十八面にも及ぶ、ブリリアンカットが施される。


(これで歴史が変わる。……いや、違うな。元の歴史をたどる)


 サーラは、複雑な胸中で状況を見る。


 歴史的に考えれば、ここは大きな転換点。

 

 成功すれば、イングランドは異世界人の手中。


 将来、王位継承の歴史を作ってしまうことになる。


(止めようと思ったら止められる。リーチェはわたしの言うことなら聞く)


 まさか、当事者になるなんて思ってもみなかった。


 継承戦を否定したのに、加担するとは思わなかった。

 

 見過ごせば、マーリンと同罪。関係ないとは言えない。


 かといって、ここで干渉すれば元の世界に帰る術を失う。


(あぁ……。悔しいなぁ……。あいつに抗う力があれば……)


 羨望の眼差しで、サーラはリーチェを見つめる。


 すると、彼女の両目に宿す黄金色の瞳は、輝きを放つ。


 水晶を通して、制御不能の能力を制御することが可能になる。


「侵略する人はみんな、寡黙な石になればいいのに」 


 能力は反転。願いを意識的に操り、概念を書き換える。


 その日を境に敵味方問わず、侵略に加担した人は変わる。


 石でありながら、動物の形を模した、非生命体が生まれる。


 彼女は戦いの武勲を評され、『至高の魔女』の異名がついた。 


 後に被害者は『聖遺物(レリック)』と呼ばれ、白教が代々管理していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ