表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/156

第81話 追体験①

挿絵(By みてみん)




 第十回王位継承戦より約千年前。


 イタリア半島の南端に位置する場所。


 地中海の中央付近という好立地にある島。


 交通、軍事、通商において、価値のある拠点。


 様々な派閥や勢力が争奪し、支配が繰り返された。


 その因果は巡り、都市パレルモの官邸で歴史は動いた。


「悪いね。今から、この島は僕たちが支配させてもらうよ」


 モザイク装飾が施された広い寝室には声が響く。


 声を発したのは、白い修道服を着る長耳金髪の男。


 マーリンは、白い両手杖の先端部分を振り下ろした。


 ぐしゃりと音を立て、頭を潰されたのは褐色肌の中年。


 黒の民族衣装に白いターバンを巻いていた異文化圏の男。


 この島を支配していた総督は、闇討ちによって敗れ去った。


 これが異世界人の支配の始まり。後にマーリン朝と呼ばれた。


 ◇◇◇


 異世界人の支配より、十数年後。


 マーリン朝の栄光は長く続かなかった。


 異変が起きたのは、千年前の12月25日の正午。


 雲が一つもない青空から、陽の光が差し込んでいる。


「や、やめろ。やめてくれっ!!」


 島の南端にある集落で、鬼気迫る声が響く。


 膝を崩したマーリンは、白銀の鎧と対面する。


 右手で頭を掴まれ、白い光が集約されていった。


「――」


 やがて臨界点を迎え、頭部が破裂する。


 肉片が飛び散って、辺りを赤く染めていく。


 直後、上空から隕石が生じ、集落に降り注いだ。


 一件の家だけを避けるように、破壊の限りを尽くす。


(これが、白き神の力……)


 その様子を傍から見ていたのは、サーラだった。


 霊体と同じように、意識と仮の肉体が存在している。


 服装は黒のワンピース。背中と胸の一部分が破れている。


 マーリンの力なのか、自分の力によるものかは今のとこ不明。


 少なくとも、今まで過去を覗いた時に体が生じたことはなかった。


「お前が、お父さんを……島のみんなを……殺した……」


 残った一件の家から声が響いてきた。

 

 白いワンピースを着た、銀髪の少女リーチェ。


 金縁の眼鏡を両目にかけ、黄金色の瞳は血走っている。


(こっちのも、かなりヤバイな……)


 マーリンの記憶の一部が流れ、詳細が理解できる。


 魔眼を制御する眼鏡と、暴走しかけている反転の魔眼。


「――殺して、やる。お前だけは、殺してやるっ!! この手で、必ずっ!!!」


 眼鏡の一部がひび割れ、能力は行使される。


 白銀の鎧は消え去り、少女は一人取り残される。


 殺したい気持ちが反転して、殺せない運命に変わる。


 白き神という親の仇の消失。彼女は自分に呪いをかけた。


(皮肉だなぁ。殺したいと思うほど、仇から遠ざかるなんて)


 サーラは一部始終を見届けながら、思考を重ねる。


 介入はできない。介入したところでどうにもならない。


(まぁ、気に病んでも意味ないか。どこまでいっても他人だし)


 物陰から足を一歩踏み出して、辺りを見回す。


 隕石で集落は潰れ、死体が転がる、ひどい有様。


 ぱっと見だと、生き残りがいるようには見えない。


(それより、この悲惨な状況から、どうやって復興したんだろう)


 事実を元に生じたのは、ふとした疑問。


 未来では異世界人がイギリス王室に寄生した。


 そこから、王位継承戦の歴史が始まったことになる。


 生き残りがいるんだとしても、かなり絶望的な状況だった。


「――誰?」


 すると、血走った目が向き、声をかけられる。


 推測じゃなく、断定。明らかにこちらを認識してる。


 ビクリと肩が揺れて、放つ殺気に屈してしまいそうになる。


(あーそういう感じね。完全に理解した)


 置かれた状況を察して、サーラは覚悟を決める。


 この悲劇の回想と復興は、仕組まれた歴史の一部。


 マーリンの能力が干渉して、過去に霊体を送られた。


 つまり、やることは決まってる。やらないと戻れない。


「わたしはサーラ。一族の復興を手伝いに来た、守護霊だよ」


 隕石の余波で、島は少しずつ沈み始める中、サーラは名乗りを上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ