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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第72話 待ち構える者

挿絵(By みてみん)




 

 第三回廊区。月星紋が描かれた扉の先。


 屍天城天守閣。最上階。入母屋造いりもやづくりの屋根の上。


 上空には赤い三日月が浮かび、月光が辺りを照らす。


 八階建ての禍々しい城を一から攻略し、踏破したのは三人。


 残るは頂上。この世界の中心核に位置する敵の出現を待っていた。


「……ここが終点でいいんですよね?」


「そのはずだよ。衣装合わせに手間取ってるのかね」


 人影のない屋根上で、ジェノとパメラは語る。

 

 ここまでは、階層ごとに番人のようなものがいた。


 一階から七階。計七体の敵。骸人むくろびとという亜人種らしい。


 八階には敵がおらず、屋上にいると踏んだけど、この有様。


 ここだけ法則に反しているのも考えにくいし、ボスがいるはず。


(もしかして、リーチェがすでに倒した……?)


 ふと気になったのは、攻略済みである可能性だった。


 仮に道中をすっ飛ばして、最上階にいるボスだけを討伐。


 結果、第三回廊区に戻る扉が生じ、リーチェたちと出会った。


 そう仮定すれば、最上階だけ敵が湧いてこないのにも納得がいく。


「まぁ、出てこないならちょうどいい。ガルム……腕を見せてみな」


 そう考えていると、パメラは前向きに事態を捉える。


 隣には、先の戦いで右腕を負傷している、ガルムの姿。


 黒い体毛を伝って、ぽたりぽたりと青い血が滴っていた。


(傷が思ったより深い……。手強かったもんな、七階の番人……)


 七階での戦闘を振り返り、ふと感想を抱く。


 骨の鎧を纏った骸人むくろびと。奥の手はアーマーパージ。

 

 尖った鎧の破片が、散弾のように広域に射出された。


 それを一人で受け切ったのは、他ならないガルムだった。


 そのおかげで勝てた。一歩間違えれば、きっと全滅していた。


(ひとまず様子見が賢明か。あの件は治療が終わってからでも――)


 ジェノは空気を読み、口をつぐむ。


 休める時間ができたのは、いいことだ。


 先のことを考えれば、人手は多い方がいい。


「……さて、じっとしといておくれよ」


 するとパメラは、白衣の中から黒い鉱石を取り出す。

 

 拳大サイズの手頃な石。ただ、それには見覚えがあった。

 

黒鋼くろはがね……。待てよ。これって、まさか……)


 黒鋼。地下世界の最下層にある世界最硬の鉱物。


 リーチェの眼鏡を直すのに必要だった、素材の一つ。

 

 黒龍と御前試合をして、ようやく勝ち取った貴重な品だ。


 詳細は不明。ただ、あれを用いる使い手を、一人知っている。


「天地開闢を遂げし、創世の主よ。我に力を与え給え」


 傷口に鉱石を当て、パメラは聞き覚えのある呪文を唱える。


 すると、鉱石は白く輝き、瞬く間にガルムの傷を癒していった。


(黒鋼。地下世界。魔物。狼男。キメラ。遺伝子操作能力)


 ジェノは頭の中で言葉を並べる。


 一つ一つの事柄は大して気にならない。


 問題は全ての点が、一本の線に結ばれたこと。


(くっそ……。なんで気付かなかった。喋り方とかそのままだったろ……)


 目の前にはいるのは、王家の血を引く存在じゃない。


 パメラの皮をかぶった人狼。継承戦に潜り込んだ部外者。


 地下世界で、魔物を創造し、ルールを作り、支配していた主。

 

(頼む、間違ってると言ってくれ)


 不安を掻き立てられながらも、口は勝手に動き出す。


「マルタおばさん……。いや、聖女マルタ……っ!」


 相手はこちらを向くと、きょとんとした顔を作る。


 見当違いだったように思える。勘違いだったと思いたい。


 しかし、頭につくティアラを外すと、その正体が明らかになった。

 

「ようやく分かったか。気付くのが遅かったね、クソガキ」


 現れたのは、長く白い髪が特徴の若い女性。


 十代後半の美貌を保つ、養母によく似た人物。


 第四王子の遺伝子で、身分を偽装した化け物だ。



改稿点

王冠→ティアラ

に変更しました。描写ミスです。

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