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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第39話 案内

挿絵(By みてみん)




 分霊室。第一商業区。第二区に繋がる大門前。


 石造りの地面は割れ、大門は切り裂かれている。


 その切れ目から、暗い森が薄っすらと見えていた。


「――以上が、ライオンズゲートの説明となります」


 金髪のCAは、長ったらしい名所説明を終える。


 真偽は不明。正しいかもしれないし、嘘かもしれない。


 電波やオカルトの領域に、片足を突っ込んだような内容だった。


「進んでもいいのね……?」


 銀髪の少女リーチェは、慎重に尋ねる。


 彼女は条件達成型の移動系能力を持っている。


 下手に逆らえば、拠点へ強制送還。振り出しに戻る。


 だからこそ、相手の口から直接、許可を取る必要があった。


 それなら確実。案内を受けるという約束を破ることにはならない。


「はい。もちろんでございます。次の第二区画は、また別の話となりますが……」


 CAは、淡々と業務を遂行する。


 目的はあくまで、神父との貸し借りの清算。


 先を急ぐ心情を汲んでくれるような、良心はないみたい。

 

(先は長そうね……)


 とはいえ、相手の心情もなんとなく理解できる。


 部外者にこき使われて、あまり良い気はしないはず。


 溜飲を下げるためにも、わざと丁寧にやってるのかもね。


「はいはい。聞いてあげるから、さっさと次の場所に――」


 リーチェは呆れながらも、歩みを進めようとする。


 だけど、足が止まった。ふと目に留まったものがあった。


(ん? これって……)


 門の瓦礫に埋もれていた、金色の護符。


 しゃがみ込み、それを拾い上げて、確信する。


邪遺物イヴィル……。それも、とんでもなく上物……)


 死後に強まる人の意思が、物質に宿ったもの。


 それが邪遺物イヴィル。生前の思い入れが強いほど力は増す。


 制作者の意思の力が、意図せず反映されていることが多い。


 ただ、これは意図的に作られたもの。そう思わせる何かがあった。


「ご不満でも業務は……っと、そちらは王霊守護符でございますね」


 すると、その光景をCAに目撃されてしまう。


 勝手知ったる様子で、碧眼が輝いたように見えた。


(あぁ……もしかして、これも案内に含まれる……?)


 この後の展開はおおよそ察しがつく。


 長々とした説明地獄が待ち受けているはず。


 内容は知りたいけど、必要以上の拘束は避けたい。


「説明してもいいけど、案内じゃないなら三十文字以内に済ませて」


 だから、条件を指定してやった。


 さっきみたいに無視されるのは、勘弁。


(反応次第で、能力のラインが透けそうね……)


 相手は恐らく、『案内』という縛りで行動が制限されている。


 他のことはできない。そういうルールの上に成り立ってる能力。


 『案内』か『案内外』か。曖昧な部分を明文化すれば透けるはず。


 もし、説明が『案内外』なら、条件を守ってくれると見越していた。


「初代王の血族が『召喚』と詠唱すれば、守護霊が呼び出せます」


 CAは条件に従い、三十文字以内で簡潔に性能を述べた。


(条件は有効……。これは『案内外』ってわけね……)

 

 邪遺物イヴィルの情報を仕入れつつ、能力のラインが分かった。


 一度で二度美味しい展開。探ってみた甲斐はあったみたい。

 

「ありがとう。大体、理解したわ。そのまま『案内』を続けてもらえる?」


 リーチェは、皮肉を交えて話を進める。

 

 相手は敵か味方か、今のところ見えてこない。


 今は、あくまで神父との縁があって繋がってるだけ。


 これぐらいのドライな接し方が、一番合っている気がした。


「そうしたいのは山々ですが、お客様のようです」


 今度はCAが皮肉を返し、視線を送る。


(ようやく、初戦闘ね。肩慣らしにはちょうどいい)


 リーチェは目に微量のセンスを込め、前方を見る。


 薄暗い視界が晴れ、切り裂かれた門を通り抜ける人物。

 

 CAが『お客様』と揶揄した存在が、嫌でも目に入ってくる。


 長い銀髪、尖った耳に、黒いロングコートを着た、瓜二つの少女。


「……遊びに来たよ。過去の私」


 肩慣らしでは済まない相手が、そこには立っていた。

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