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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第38話 街路王

挿絵(By みてみん)




 独創世界。街路王ストリートキング


 武道家が放つ芸術系の秘奥。

 

 心象風景の具現化。唯一無二の世界。


 舞台は、フランスのパリ市内にある、凱旋門。


 巨大な石造りのアーチで、交差点の中心にそびえ立つ。


 仮想の月に照らされ、人気のない凱旋門の前に立つのは、二人。


「独創世界の使い手……。お前は、ベクター・フォン・アーサーっ!」


 状況を半分ぐらい理解し、サーラは声を荒げた。


 同じ技が使われたのを、一度、この目で見ている。


 武道家の正体は、ほぼ間違いなく第三王子ベクター。


 さっきの戦いで、独創世界の能力の条件が満たされた。


 それによる、強制移動。独創世界の中に閉じ込められた。


「……改めて、手合わせ願う。……エリーゼ・フォン・アーサー」


 武道家は右拳と左の手のひらを合わせ、一礼。


 肯定とも言える反応を見せながら、両拳を構える。


 すると、両者の頭上には二本のゲージが出現していた。


エリーゼ

体力『□□□□□□□□□□』

必殺『■』


霊体ベクター

体力『□□□□□□□□□□』

必殺『■』


 当然、サーラの視線は、現れたゲージに吸い寄せられる。


 ゲームじみたシンプルな表記。説明されずともルールが分かる。


(正体はベクターで確定……。この場は、体力を0にした方の勝ちと……)


 互いの頭上を眺めつつ、ほぼ全ての状況を把握。


 勝敗がつかないと現実に戻れない、シンプルな仕様。


(必殺ってのがよく分かんないけど、巻き込まれた以上、やるっきゃない!)


 残る疑問は、必殺。


 だけど、考える暇はない。


 後は、戦いながら考えればいい。

 

 そう思いながら、サーラは前を向いた。


「……っ!?」


 迫っていたのは、正拳突き。


 気付けば、目の前に武道家がいた。


 腹部に向けて、容赦なく拳が振るわれる。


 センスを纏った様子はなく、生身の一撃に近い。


(防御……。いや、ここは、あえて……)


 サーラは思考を重ね、身構える。


 恐らく、アレは、挨拶代わりの一発。


 加減をして、反応を見定めるためのもの。


 全身をセンスで覆えば、致命傷にはならない。


「――」


 そう判断し、サーラは正拳を素通りさせた。


 相手が探りなら、こっちも探りを入れるまで。


 敵の力量とルールの把握。この一撃で見定める。


 恐らくこれで、ゲージの役割と増減が掴めるはず。


「……」


 武道家は、無表情で拳を迫らせた。


 拳が腹部に到達するまで、ほんの数ミリ。


 すんなり受ければいい。感触を確かめればいい。


 ただ、妙な違和感があった。ほんのりと漂う死の気配。


(いや、違う……。お腹を集中防御……っ!! じゃないとっ!!!)


 直感。と言えば聞こえは悪いけど、こっちは感覚系。


 それで飯を食ってる。その感覚に従い、腹に意思を込める。


 白っぽい光が集まり、迫る生身の拳に対し、一点集中で防御した。


「……あぐっ!!!!」


 正拳は腹部の中心を捉え、衝撃が走った。

 

 センスと筋肉を貫き、骨にまで振動が伝わる。


 加えて、内臓が圧迫されるような感覚さえあった。


 直後、スパンと音を立てて、サーラの体は吹っ飛んだ。


 生身の拳とは、到底思えない一撃。あり得ないぐらい重い。


「……直感か。……運がいい」


 武道家は、涼しい顔をして、拳を振り抜く。


 そのほんの一瞬。膨大なセンスが拳を覆っていた。


 センスの緩急。インパクトの瞬間にセンスを集中させた。


 それを気取られないように、ギリギリまで、気配を断っていた。

 

 独創世界に来る前、拳にセンスを集めていたのも、油断させるブラフ。

 

 全力で打ってくる時は、拳にセンスを集中させると、思い込ませるための罠。


(っざけんなっ!! 山張ってなかったら、今頃……っ!!!)


 吹き飛ばされながら、サーラは武道家の技前を理解する。


 戦闘に特化したスタイル。武道で人を殺すために磨かれた手法。

 

 腹部にセンスを集めていなければ、今の一撃で戦闘不能になっていた。


エリーゼ

体力『□□□』

必殺『■』


霊体ベクター

体力『□□□□□□□□□□』

必殺『■■■■■■■■■■』MAX


 そこで、表示されるのは、ダメージが反映されたゲージ。


 今の一撃で七割が吹っ飛んだ計算。それも相手は必殺満タン。


 恐らく、相手に与えたダメージにより、必殺技が強化される仕様。

 

 条件達成型なら、必殺技の威力は元来の数倍になると考えていいはず。


(あー、この世界……。クソゲー過ぎるんですけどっ!!!)


 敵の力量とルールを把握した上で、サーラは心の内で叫ぶ。


 目の前に広がるのは、圧倒的に不利な状況と敵に有利な土俵。


 この無理難題をどうにか攻略してやらないと、未来はなかった。

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