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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第30話 怪異の城②

挿絵(By みてみん)




 大食堂から階段を上った先の通路。


 窓はなく、赤い絨毯の道が続いている。


 その最奥には、両開きの鉄製の扉があった。


 扉には、ライオンと白い鎖とユニコーンと大盾。


 入り口の扉と同じ、イギリスの国章が刻まれている。


「いよいよラスボスって感じっすけど……王室は退魔の一族かなんかっすか?」


 扉の前でメリッサは、ふと疑問を述べた。

 

 この城は、有名無名問わずの怪異の巣窟だった。


 国章が描かれる以上、王室と関係があるように感じる。


 退魔の一族。と断定すれば、城の敵にも納得がいく気がした。


「王位継承の歴史を踏まえれば、その可能性もあるが、決して断定はできない」


 返事をしたのは、第一王子ミネルバだった。


 恐らく、実力的に考えれば、最も王に近い存在。


 その王子の発言には、ある程度の重みを感じられた。


(ふーん。これは、ちょっと訳アリっぽいっすね)


 歴史や伝承を鵜呑みにしない頭。


 知的好奇心が湧いてくるのが分かる。


 根深い話に繋がりそうで、ワクワクした。


「どういうことだ? それ以外考えられねぇだろ」


 次に反応したのは、ラウラだった。


 眉をひそめ、早く扉を開けろと言わんばかり。


「相変わらず、せっかちっすねぇ。雑談を楽しむ余裕もないんすか?」


「あ……? うっせぇな……。歴史の授業より、継承戦の方が大事だろ」


 売り言葉に買い言葉。


 昔と変わってない、犬猿の仲。


 今にも殴りかかってきそうな勢いだった。


(この程度なら、記憶の忘却は大丈夫そうっすね)


 ただ、これでもかなりマシな部類だった。


 本来の記憶なら、殺しにきてもおかしくない。


 今の関係が維持できているのなら、効き目は十分。


 歴史に軽く触れられるぐらいの猶予はありそうだった。


「まぁまぁ。ラウちーの言ってることも分かるけど、ここは大人しく話を聞いといた方がいいんでない? たぶん、ゆっくり話せる場所はもうないだろうし、奥にいる敵さんの攻略にも役立つかもしれないでしょ」


 すると、ソフィアはいい感じに口を挟んでくる。


 ラウラと同じ第一王子陣営に属する侍従からの指摘。


「ちっ。そういうことなら聞いてやる。続けてくれ」


 当然、折れる。ラウラは身内に甘い。


 止められれば、聞く耳を持とうとする。


 少なくとも、神格化される前の状態なら。


「我々の先祖である『純血異世界人』の出生には、諸説ある」


 早速、ミネルバは本題を切り出した。


 話を深掘る上で、避けて通れない話題。


 王室の秘密に繋がりそうなワードだった。


「姉さん、ここからは僕が引き継ぐよ。ある意味、専門分野だからねぇ」


 すかさず、アルカナは会話に加わっていく。


 封書庫の管理を任されている王子。歴史には詳しい。


(第二王子なら適任っすね。聞く必要もなかったんで、ちょうどいい機会っす)


 目的を手伝わせることを条件に仲間になった。


 第二王子が継承戦に勝てば、望んでいた願いは叶う。


 だから、王室のことをわざわざ深掘りする必要がなかった。


 ただ、分霊室を見る限り、目的にも繋がりがあるような気もする。


 せっかくの機会だし、見聞を広げるためにも情報収集しておきたかった。


「説は三つ。一つ目は、ファンタジーや伝承でよく見る、長命と長い耳が特徴の、魔法を得意とするエルフの一族。二つ目は、異世界に存在したであろう魔物の類を退治するのに特化した退魔の一族。そして、三つ目は……魔族だね」


 アルカナの説明に、場の空気は張り詰めていった。


 一つ目と二つ目は、想定通り。だけど、問題は三つ目。


 詳しい説明を省略された上でも分かる、一番最悪のケース。


(こいつは……聞く価値ありっすね……)


 メリッサは、早くも妙な手応えを感じていた。


 自らの出生に関わってきそうな、そんな気配があった。


「魔族……。盲点だったが、それなら分霊室とも、この城とも辻褄が合う……」


 顎に手を当てて、神妙な面持ちで語るのは、ダヴィデだった。


 真っ先に、最悪のケースから想定される事態に気付いたようだった。


「狩る側ではなく、狩られる側というわけですね……」


「魔を生み出す存在じゃったら、骸人むくろびとも鬼も生み出せる……」


 帝国出身であるアミと広島も、事の重大さに気付く。


 広島にいたっては、自国に及んだ被害にまで結びつけていた。


(帝国組も察しがいいっすねぇ。この中で気付いてないのは……)


 メリッサは視線を右往左往させ、辺りを見る。


 自ずと視界は、きょとんとした顔に吸い込まれる。


「……分かるようで、分からねぇよ。もうちょい、具体的に説明してくれ」


 頭をかきながら、ラウラは苦言を呈す。


 論理より、直感を優先する彼女らしい反応。


 おかげで誰かが要点をまとめてくれそうだった。


「つまり、魔族は、魔を使役できる者。城の『怪異』。分霊室の『悪霊』。体系化された『魔術』。鬼や骸人といった実在する『妖怪』。魔眼がもたらす『呪い』と『加護』。センスや魔術の延長線上にある『ダンジョン』。生きた人間の魂が宿る物質『聖遺物(レリック)』。死んだ人間の意思が宿った物質『邪遺物(イヴィル)』。人類に災いをもたらす、ありとあらゆる超常現象は、我々の先祖が起源である可能性があるわけだ」


 その期待通りに、ミネルバが発言をまとめて、話にオチをつける。


 もし、事実だとすれば、王室の評価がひっくり返るほどの特ダネだった。

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