表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/156

第29話 怪異の城①

挿絵(By みてみん)




 分霊室。第三回廊区。イギリスの国章が描かれた扉の中。


 その先は、見知らぬ城内に繋がり、化け物が溢れ返っていた。


 現れた敵は、コウモリ、メデューサ、ミイラ男、フランケンなど。


 まるで、怪異の城だ。上階に進もうとするほど敵の強さは増していく。


 ただ、連合のおかげか、攻略は思いのほか順調に進み、手応え的には終盤。


「はぁぁぁっ!」


 ミネルバは叫び、フランケンが真っ二つになる。


 大剣による一刀両断。有無を言わせぬ、力技だった。


 それにより、奥の扉が開いて、上階に続く階段が見えた。


 今いる部屋は大食堂。中央に食卓と、囲うように椅子が並ぶ。


 白いテーブルクロスの上に、銀製のナイフやフォークや皿がある。


 皿の上には人間の頭蓋骨があり、とても趣味がいいとは思えなかった。


 室内は薄暗かったが、目減りしないろうそくが辺りを照らしてくれている。


「さすがだな。……ただ、いいのか? あれから一度も守護霊使ってねぇだろ」


 フランケンを一瞥しつつ、声をかけてきたのはラウラだった。


 ここまで大剣で押し切った。守護霊の成長を考えての発言だろう。


(正論だな。頭では分かっている。分かってはいるが……)


 脳裏に浮かぶのは、負傷したラウラの姿。


 あの悪いイメージがどうしても抜け落ちない。


 守護霊を使わなければ、起きなかった事故だった。


「さっきのを引きずってんなら、やめろよ。余計なお世話だ」


 沈黙から心情を気取られたのか、ラウラは一方的に告げる。


 実際、図星だった。一言一句、的確にひよった心を刺してくる。


(継承戦を優先するか、仲間を優先するか……)


 目の前にあるのは、二択だった。


 現在は、五対五という配分で戦っている。


 ただ、この先のことを考えると、必ず偏りが出る。


 敵の強さが増す以上、今の配分で戦える余裕はきっとない。


(王を目指すなら侍従は使い捨てろ。そういう趣旨か……)


 継承戦の侍従は、外部から選ばないといけない仕様だった。


 内部から選べないようにしたのは、捨て駒の扱いを覚えるため。


 付き合いの長い者は情に流されやすいが、短い付き合いの者は別だ。


 継承戦を口実に切り捨てやすい。そう考えれば、システムに納得がいく。


 パメラの侍従は例外に近いが、準備期間内に用意できた外部の人間でもある。


(選ぶなら、早いうちが得策か)


 連携を取るためにも、指針を決めるのは重要。


 どちらつかずは、この先で全滅を招く恐れがある。


 決めるのなら、今がちょうどいい頃合いかもしれない。


「――私はアレを二度と使わん。人命を最優先とする」


 ミネルバは逡巡の末、答えを出す。


 民を蔑ろにする者は、王になる資格はない。


 ここにきてようやく、自分を掴めたような気がした。

 

 ◇◇◇

 

 怪異の城。大食堂。食卓の隅。


 そこにはアルカナ一行が立っていた。


 このフロアでの戦いは、見守っていた形だ。


 共闘は窮地の場合のみ。それまで部屋ごとに交代。


 そういうルールを設けていて、律儀に守ってあげていた。


 互いに経験値を稼ぐ必要もあるから、賢い作戦だと思っていた。


「馬鹿だなぁ。そんな甘ったるいこと言える状況じゃないのに」


 アルカナは、ミネルバの発言を聞き、感想を漏らす。


 相手は、姉にあたる存在。曲がりなりにも敬意はあった。


 でも、今ので幻滅しちゃったな。底が見えたと言ってもいい。

 

「だったら、あんたはどういう方針で先に進むんすか?」


 合いの手を挟んだのは、隣に立つメリッサだった。


 敬っているようで、全く敬ってない態度を見せている。


 最初は違和感があったけど、今ではもう慣れたものだった。


 むしろ、この不遜な口調が逆に心地よく感じてしまうぐらいだ。


「王になるためなら、僕は喜んで君たちを切り捨てるよ。覚悟はしててね」

 

 だけど、継承戦には必要のない感情だ。


 第一王子のように、人名を優先し過ぎない。


 第三王子のように、自分だけを優先し過ぎない。


 第四王子のように、継承戦以外の謀略は巡らせない。


 侍従を捨て駒にしても、勝つ。それがあるべき王の姿だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ