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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第24話 立ち塞がる者

挿絵(By みてみん)




 第二森林区から、第三区に向かう道中。


 薄っすらと光る緑色のセンスが森を照らす。


 同行者であり同僚のパオロが発したものだった。


(順路は北……。このままいけば、先には進めるけど……)


 サーラは歩みを進めるも、顔色は暗い。

 

 能力で順路は分かったし、悪霊の気配もない。


 当然ながら、接敵もなかったし、順調な旅路だった。


(後ろのやつ、ただ者じゃない……。関わりたくないな……)


 ただ、気になるのは、後方にいる強い気配。


 上手く気配を隠しているけど、誤魔化せない。


 サーラは察知しながら、無視を決め込んでいた。


 触らぬ神に祟りなし。自分の命が世界で一番大事。


 どんな手を使ってでも、アレとは戦いたくなかった。


「……少しいいか?」


 すると、隣を歩くパオロが声をかけてくる。


 もしかしたら、後ろの気配を察したのかもしれない。


(助けに行こうとか言われたら、どうしよう……)

  

 真っ先に思いつくのは、最悪の展開だった。


 仲間がどうとか引き合いに出されたら、断れない。


 継承戦を言い訳にしても、論争で勝てる気がしなかった。


「なに? 手短にしてよ」


 ただ、返事をしないわけにもいかない。


 万が一の時、守ってくれるのはパオロだけ。


 関係が悪化すれば、見捨てられる可能性もある。


 打算だろうがなんだろうが、関係は維持したかった。


 どうせ話の中身は、後ろの件をどうするかだろうけどね。


「兄のこと、知りたいと思わないのか?」


 ただ、パオロが切り出した内容は、予想と違った。


 記憶がなくなる前のこと。ジェノに関する話題だった。


 状況から察するに、後ろのアレには気付いていないらしい。


 ほっとしつつ、サーラは聞かれたことに対し、考えを巡らせる。


(……兄っていうけど、たぶん、血は繋がってないんだよね)


 王位継承戦では、国王直系の血族が選ばれる。


 ジェノが直系の兄だったら、継承戦に選ばれるはず。


 それなのに選ばれてないってことは、義理の兄でほぼ確定。


 血縁者の可能性として残っているのは、腹違いの兄妹ぐらいかな。


 行きずりの女に、国王が種付けしたなら、直系でも継承権はないからね。


「別にどうでもいい。過去より、今の方が百倍大事だから」


 サーラは考えを切り上げ、返事を返す。


 ジェノが血縁者だったら、確かに気になる。


 だけど、血の繋がらない他人ならどうでもいい。


 あくまで過去は過去。気にする余裕なんてなかった。

 

「思い出せる手段があったとしてもか?」


 すると、パオロは、しつこくも過去に固執してくる。


 なんで関係ないこいつが、どうこう言ってくるんだろう。


 記憶がないのを知ってるんだろうけど、少し違和感があった。

 

「コウモリ型の聖遺物レリック。それに触れたら、記憶の忘却は元に戻るんでしょ、知ってるよ。その使い手も、聖遺物レリックもこの目で見たからよく覚えてる。……その上で、わたしには必要ないって判断してるんだけど」


 サーラは憤りながら言葉をぶつける。


 記憶の忘却は、適性試験が行われた会場。

 

 ガンズオブインフェルノという世界で起きた。


 その犯人とは一度接敵して、敗北した過去がある。


 思い出すと、無性に腹が立つ。イライラが止まらない。


 嫌な気分になるから、極力思い出さないようにしてたのに。


「……お節介だったか。今の話は忘れてくれ」


 当たりが強すぎたせいか、パオロは落ち込んだ様子。


 しゅんとしていて、すねてしまっているようにも見える。


(言い過ぎたかな……。半分は八つ当たりだったし……)


 ほんの少しだけ、申し訳ない気持ちになった。


 謝ってもいいかなと思えるぐらいの罪悪感もある。 


 というより、関係性を思えば、謝っておくべきだった。


「あの……」


 サーラは、謝罪の言葉を口にしようとする。


 ただ、その時感じたのは、些細な空気の揺れ。


 後ろからじゃない。前から二つの気配を感じる。


 気配は途中で分かれ、別々に移動を開始している。


(誰か、来る……)


 その一方は、真っすぐ、こちらの方に迫っている感じがした。


「話は終わりだ。構えろ」


 パオロも、それには気付き、身構える。


 顔は引き締まっていて、落ち込む様子はない。


(気にし過ぎだった……? いや、気にするのは後かな)

 

 サーラは言われた通りに構え、思考を切り上げる。


 優先順位は変わった。今は、目の前のことだけ考える。


「……手合わせ、願う」


 現れたのは、武器を持たない武道家。


 坊主頭で、背は高く、体は痩せ型の男。


 白色の道着に身を包み、拳を構えている。


 恐らく、体一つで押し切るタイプじゃない。


 センスを戦闘に一点特化させた、技量型の敵。


「体術に自信ありか……。こういうやつが一番厄介なんだよな」


 パオロは、顔をしかめつつ、敵を評する。


 彼の言っていることは、なんとなく分かる。


 自信がない人ほど不意打ちに頼る傾向がある。


 それをしてこなかった時点で、自信があるんだ。


 それも、二人相手に正面から挑めるぐらいにはね。


「自信ないなら、わたしがやるよ」


 どう考えても戦いは、避けられない状況だった。


 それならと、サーラは、懐から王霊守護符を出す。


 奥の手を発揮される前に、一発でケリをつけてやる。


「勝てないと誰が言った。僕が弱らせるから、とどめは任せたぞ!」

 

 パオロは簡潔に作戦を告げ、謎の武道家との戦いは始まった。


 ◇◇◇


 第二森林区。西端に位置する場所。


「さーて、遊んでばかりもいられないか」


 パメラは明後日の方向を向き、突然言い放つ。


 肩に引っ掛けていた大弓を構え、矢を番えている。


 体には、桃色のセンスを纏い、いつでも撃てる状態だ。


「……」


 同じく、狼男ガルムも爪を見せ、警戒していた。


 体には黒いセンスを纏い、いつでも戦えるようにしている。


(敵か……。全然気づかなかった……)


 姿は見えないけど、二人の反応を見て、ようやく察する。


 さっきの狂戦士と同じように、自我のある敵がやってきたんだ。


(あれは……)


 センスのおかげで、辺りが明るくなり、目を凝らさずとも見えてくる。


「……」


 金色の鎧を纏った、聖騎士。


 腰にある一振りの剣を抜いている。


 銀光を放つ剣には、呪文が刻まれていた。


 盾などはなく、両刃の剣だけを用いるスタイル。


 センスは纏ってない。それなのに、異様な圧があった。


「月の儀式の条件が揃うまで、手を出すんじゃないよ。いいね?」


 それでも、物怖じせず、パメラは作戦を告げる。


 ジェノは頷き、二人の戦いを見守ることになった。

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