↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/156

第16話 肉弾戦

挿絵(By みてみん)




 銀の光と黒濁の光に包まれた森の中。


 見つめ合うのは、少年と黒い鎧を纏う亡霊。


「その右手、物質分解能力だな。代償は血液っつぅところか。触れられたら厄介だが、さっきの攻防と失血で、あと一発が限界。かといって、肉弾戦でも歯が立たねぇときた。……さて、空っぽなお前には、一体何が残ってる」


 狂戦士は、退屈そうな声音で、唐突に言い放った。


 脅威と思われる〝悪魔の右手〟を見据え、考察を語る。


(当たってる……。壊れたコイツは眼中にないか……)


 ふと目に入るのは、左手に握っていた、9mm口径の拳銃。


 先の攻防で、銃身が折れてしまっている。使い物にはならない。


(洞察力も鋭いし、斧なしでも俺より強い。だけど……)


 ジェノは、壊れた銃を懐にしまい、身構える。


 〝悪魔の右手〟と、何でもない左手を握り込む。


 クラシックが壊された先に見えた、新たなる王道。


 期せずして至った、新たな戦闘スタイルで言い放つ。


「死んでも諦めないド根性。それだけあれば十分です」


 そうして、第二ラウンドは本格的に始まった。


 ◇◇◇


 第二森林区。北端。第三区画に繋がる大門前。


 そこには、二つの集団が期せずして、邂逅する。

 

 その先頭を率いるように歩いていた、二人の王子。


「「あ……」」


 ミネルバとアルカナは、気まずそうな声を上げる。


 同時に背後にいた配下たちが、臨戦態勢に入っていく。


 一触即発の空気。殺気と敵意が混ざる嫌な緊張感に満ちた。


 そんな中、両陣営の配下二人が王子の一歩前に出て、口を開く。


「ぶっ飛ばされても、泣くんじゃねぇぞ」


「いつから、うちの格上になったんすか」


 ミネルバ陣営のラウラとアルカナ陣営のメリッサだった。


 二人は両陣営のナンバー2に位置し、発言権は、二番目に強い。


 選定基準は、王子に信頼されているかどうか。強さが基準ではない。


 だからこそ、二人が動けば、この場が動いてしまうほどの効力があった。


「その必要はない。今はまだ、な……」


「うん。そうだね。僕も同じこと考えてた」


 対し、両陣営のトップ。ミネルバとアルカナは語る。


 いがみ合うラウラとメリッサは耳を傾け、動きは止まった。


「「共闘しよう」」


 声が重なり、二人の王子の意思決定が下される。


 こうして、第一王子と第二王子の連合チームが出来上がった。


 ◇◇◇


「うらぁ、うらぁ、うらぁ! そんなもんかぁ!?」


 狂戦士の声が響き、拳の乱打が浴びせられる。


 直情的で、直線的な動き。だけど、とにかく速い。


「……くっっ」


 自ずとジェノは拳で応対するも、手数で押し負ける。


 防戦一方だった。それも、拳の威力が上がってる気がする。


(ここで何か掴まないと、負ける。付け入る隙を見つけるんだ)


 乱打戦の中で、ジェノは情報を整理する。


 手数は上。威力も上。防御力も上。センスも上。


 能力は不明。〝悪魔の右手〟は、後一回しか使えない。


 戦闘技術はセンス頼りで、甘い。力は強いけど、技術がない。


(恐らく、失血効果は斧の能力。本体は俺と同じ肉体系だな……)


 ジェノは、殴り合いつつ、考察を進める。


 吐血したのは、黒斧を横腹に食らった時だけ。


 拳は、センスで体を守れば、致命傷にはならない。


 肉体系は、高度な能力を付与することが得意じゃない。

 

 肉体と関連するものほど、強い互換性を発揮するタイプだ。


 だから、自ずと狂戦士の系統が透ける。能力が絞り込めてくる。


(能力は、肉体の強化。複雑なことはしてこない。それなら……)


 予想を重ね、仮説を出し、それを踏まえて考える。


 相手の得意なフィールドで戦えば戦うほど、不利になる。


 直線で押し負けるなら、わざわざ付き合ってあげる必要はない。


「……ッ!」


 ジェノが迫らせたのは、〝悪魔の右手〟。


 血の代償を払い、分解能力のある赤い光が生じる。


 恐らく、次は使えない。この戦いにおける、最後の切り札。


「おいおい……そんな安売りしていいのかぁ?」


 狂戦士は、右手を十分に警戒し、後退していく。


 避けられたら終わり。相手を打ち破る手はなくなる。


(そうくると思ってた……)


 単純な動き。直線的な行動。センス頼りの戦闘スタイル。


 思い描いた通りの展開。これ以上ないほど作戦がハマってる。


「超原子《アトミック》」


 狂戦士が後退した分、距離を詰め、左拳を振りかぶる。


 センスを拳に一点集中。その分、体の防御が手薄になる。


 そこを狙われたら、ジャブ程度でも失神してしまうだろう。


 だけど、相手は回避を優先している。迎撃は、間に合わない。


「こいつ……フェイントを……っ!!」


 当然、狂戦士は、必殺技に気付く。


 警戒して、左拳に意識を集中させている。


 相手との距離は一歩分。腕を伸ばせば届く射程。


(違うよ……。両方、本命だ……っ!)


 ジェノが先に力を込めたのは、左拳ではなく、右手。


 赤い光は強く発光し、飛翔する物理現象へと変化を果たす。


「赤い、雷、光……っ!?」


 雷光の射程距離は、拳の比じゃない。


 近距離技だと思い込んだ狂戦士は、硬直。


 無防備な状態で、狂戦士の鎧兜に迫り、直撃。


 赤い雷光は鎧兜を分解し、露わになったのは顔面。


(肉体系といっても、全力のこいつには、耐えられないっ!)


 これまでにないセンスの高ぶりを感じる。


 今まで繰り出した中でも、最高の威力を出せる。


 身を守る障壁はない。いくら霊でもただじゃ済まない。


「拳《インパクト》……っ!!!!!」 


 ジェノは、力のままに左拳を放つ。

 

 狙いは、狂戦士の顔面。当たれば一発KOだ。


 センスの防御は間に合ってない。これで、押し切れる。


「…………」


 油断も慢心もなく、ジェノは全力の一撃を放った。


 敵の思い込みを突き、鎧兜を打ち破り、急所を狙った。


 なんの誤算もない予定通りの展開。思い描いた通りの現象。


 ただ予期せぬことが起きた。拳を止める事態が生じてしまった。


「ルーカスさん……?」


 鎧兜の中から現れたのは、仲間の顔。


 無精ひげを生やした、短い黒髪の中年男。


 ルーカス・グローリーと瓜二つの存在だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。