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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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156/156

第156話 エピローグ④

挿絵(By みてみん)





 ニューヨーク。マンハッタン。黒い教会。


 そこで待ち受けていたのは、大量の銃口だった。


 黒服の男女が横一列に並び、引き金に手をかけている。


「……あわ、あわわ。何がどうなって」


 両手を上げ、狼狽するのはエミリアだった。


 いつもなら閑散としてる教会内は、珍しく盛況。


 真逆。矛盾。違和感。慣れ親しんだとも言える変化。


 ここまでお膳立てされたら、さすがに状況を理解できた。


「関係値の反転……。分霊室に同じ魔眼の使い手がいた……」


 リーチェは、至った答えを口にする。


 ただ、その言葉を鵜呑みにする者はいない。


「ここにいる全員がお前に復讐したいらしい。覚悟はいいか?」


 指揮を執るのは、正面に立つ神父。


 復讐を望めば、復讐が付きまとう人生。


 歓迎してあげてもいいけど、相手は元味方。


 反転による変化だと分かった上で戦いたくない。


 分霊室に戻るにしても、彼らを巻き込むことになる。


 ――だから。


「どこでもいいから、さっさと飛んで!」


「……で、では、トルクメニスタンをご案内致しまぁす!」


 直後、銃声が鳴り響き、二人は教会から姿を消した。


 ◇◇◇


 プライベートジェット内。操縦席。


 機内に乗客は一人もおらず、搭乗者は二人。 


 雲を抜け、朝焼けの光が窓辺から差し込んでいる。


「ダヴィちゃん。また一から鍛え直しだね」

 

「ノウハウは残ってる。どうにでもなるだろ」


 ソフィアは操縦桿を握るダヴィデと会話を交わす。


 王位継承戦で生じた最大の問題は、戦闘経験値の忘却。


 知識は残ったままだけど、身体が全くもってついてこない。


 先の戦いでの不甲斐なさから、不安がどうしても勝ってしまう。


「それは分かるけどさ。元に戻せる自信、ないんだよね……」


「元以上になるさ。白教の総本山『トルクメニスタン』に行けばな」


 ダヴィデは自信満々に目的地を告げ、航空機は驀進を続ける。


 何の根拠も確信もなかったけど、今はその言葉が心の支えだった。


 ◇◇◇


 イギリス。ロンドン。ヒースロー空港。受付ロビー。


 時間は朝方だが、大勢の利用客がロビーを闊歩している。


 航空券を買い、入国審査と手荷物検査をすれば、出国できる。


 そのはずが、全く気が進まない。帰りたいとは、微塵も思えない。


「親父は生きてる、か……」 


 ラウラは、受付の前で固まっていた。


 全ては第三回廊区で得た情報によるもの。


 霊体ラウロの口から語られた親父の生存報告。

 

 それが妙に引っかかり、やるべきことを拒絶する。


「おい、どうした。ホームシックか?」


 異常を察し、問いかけてくるのはパオロだった。


 持ち込めない荷物は組織の人間に預け、帰る気満々。


 合衆国で、飼い犬同然の生活に戻ることへの抵抗がねぇ。


 以前なら同じ思考だったが、今は向いてる方向が少し違った。


「家はもうねぇよ。それよか、聞きたいことがある」


「なんだ?」


「脱走した構成員の捜索が、主な活動内容だったよな?」


「あぁ。知っている範囲なら答えられるはずだ」


 パオロは尋ねられた質問に対し、真面目に答える。


 内容と空気感からして、話の深刻さを理解したらしい。


 やっぱりこいつは優秀だ。飼い犬にしておくのは勿体ねぇ。


「カモラ・マランツァーノの最終目撃地点を教えてくれ」


 ラウラは相手の性格を信じ、機密であろう情報を探る。


 同じ組織の犬だろうと、話せることと話せないことがある。


 自身の任務内容に関することなら、同業者でも話せねぇはずだ。


 もし、情報漏洩がバレたり、探られたのをチクられでもしたら罰則。


 組織から追放される恐れもあったが、こいつなら答えてくれると信じた。


「ドイツ、ミュンヘンにあるドイツ博物館の地下一階だ。外部に漏らすなよ」


 その期待通り、パオロは機密情報をサラリと語る。


 分かり手だな。深く事情を聞いてこねぇ点も、高評価だ。


「あぁ、分かってるよ。……それと、悪ぃんだが、もう一つ頼み事があって、僕はこれから、ドイツ行きの便に間違えて乗ることになる。組織には上手いこと言っといてくれ。三日以内には、必ず生存報告を入れるようにするからよ」


 すかさず、ラウラは、素直に手の内を明かしていく。


 チクられたらやべぇ情報だったが、パオロは信頼できる。


 タイムリミットも設定したし、どうにか飲んでくれるだろう。


「貸し二つだ。組織に属するなら、その重みは分かっているよな?」


「オーケー。生きて帰れたら必ず返してやるよ。僕に返せるものならな」


 二つ返事で取引は成立。握手を交わし、向かう方向が変更される。


 目的地はミュンヘン。親父の跡を継いだカモラが、次のターゲットだ。


 ◇◇◇


 9月2日。昼頃。飛行機内。一万フィート上空。


 次の行き先はマカオ。席はファーストクラスだった。


 フカフカのクッションに、革製の座席に、広々とした足場。


「あのさ……どうして、大奥形成のためにマカオに行く必要があるの?」


 ジェノは席を満喫しながら、隣の座席の女性に問いかける。


 大奥に全面的に同意したわけじゃないけど、大事なのは理由だ。


「うちらは組織を抜けた無法者アウトロー同士。地に足ついた生活をするには、安心安全の拠点が必要不可欠っすよね。マカオに行くのは、そのための投資っすよ。元手となる種銭は第二王子が王に選ばれたおかげで、たんまり手に入ったっすからね」


 黒服姿のメリッサは、指で丸を作り、心情を語る。


 どうやら王位継承戦は、競馬気分で参戦していたらしい。


 それが見事的中し、大奥のための資金として運用するみたいだ。


 ただ、問題は投資の内容。行き先から考えると、雲行きが怪しすぎる。


 「まさか、ギャンブルに全部突っ込むとか言わないよね?」


 ジェノは思いつく限り、最悪の方法を口にする。


 馬鹿らしいけど、彼女ならやりかねない、そんな選択。


「そのまさかっすよ! マーチンゲール法で、うちは天下を取るっす!!!」


 メリッサは悪い意味で期待に応え、愚かな目的を堂々と宣言。


 先が思いやられる展開だったけど、なぜか悪い気は全くしなかった。






















 ここまで読んでいただきありがとうございました。今までの章に比べて、かなりの長尺になってしまいましたが、これにて六章は完結です。五章でのあとがきで書いたようにプロットは作らなかったのですが、エピローグ③だけはやることが確定していました。後はどういう経路でそこにたどり着くかはキャラに全て任せていましたが、個人的には満足のいく結果になったと思っています。


 次は七章に続けるつもりですが、『ブラックスワン』シリーズの漫画化の作業を進めているため、毎日投稿が維持できるかだけが懸念材料です。裏を返せば、他は特に問題に感じていませんので、今後もよろしければ本シリーズをよろしくお願いします。

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