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Royal Road  作者: 木山碧人
第六章 イギリス

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第139話 ノルマ

挿絵(By みてみん)





 経験値がリセットされ、魔眼を封じられた戦い。


 こっちは無数の刺し傷があり、相手は無傷の悪魔。


 正体は不明。経緯も不明。出所も不明。能力も不明。


 ただ、意思の力を再履修してなかったら、殺されてた。


 少なくとも、戦い方を縛って倒せるような相手じゃない。


 能力と体術を限界まで引き出し、ようやく通用するレベル。


「お眠りなさい、我が主。目覚める頃には、全てが終わっている」


 すると悪魔は、倒れた少年を一瞥し、語りかける。


 反応から考えるに、あの子が悪魔を呼び出したらしい。


 契約内容は当然不明。味方じゃないことだけは確かだった。


(あぁ……。ダヴィちゃん帰らせて正解だったな……)


 考えるのは、同じく記憶障害を受けた相棒のこと。


 体術特化と補助特化。万全の状態なら、恐らく勝てた。


 でも、今の実力だと無理。ダヴィデを守ることもできない。


(私のせいで誰かが死ぬなんて、これ以上耐えられないよ……)


 視線の先には、致命傷を負ったミネルバの姿。


 連れてきてしまった責任が、心に重くのしかかる。


 後悔してる場合じゃないんだけど、嫌でも考えてしまう。


「…………さて、君に一つ提案がある」


 そんな中、正体不明の悪魔に動きがあった。


 歩みを進め、余裕たっぷりな態度で声をかけてくる。


「………………何かな」


 ソフィアは両腕に抱えた少女を地面に置き、出方を伺う。


 当然ながら、悪魔の言う事に耳を貸すつもりなんて一切ない。


 即戦闘を視野に入れて、万全な態勢を作るための時間稼ぎだった。


「黙って殺されてくれないか。約束を守るなら、他の者に手出しはしない」


 首を骨を鳴らしつつ、悪魔は図々しい取引を持ちかけた。


 相手の目的は見えないけど、死ねば他の人は助かるらしい。


 一瞬、耳を傾けそうになったけど、すぐに話の裏に気付いた。


「……いや、普通に無理。死んだら、どうせ反故にするつもりなんでしょ」


 悪魔が約束を律儀に守る保証なんてない。


 口約束に過ぎないし、死人に口なしってやつだ。


 約束相手が死んだ時点で、効力は失われる感じがした。

 

「じゃあ、君が断ったせいで、これから大量に死人が出るけど、いいんだね?」


 読み通りだったのか、悪魔は的確に痛いところを突いてくる。


 ミネルバを守れなかった責任。それを上手く刺激しようとしていた。


(これは……きっついなぁ……)


 問いに対し、ソフィアは即答できなかった。


 一番のネックは、悪魔を倒せる自信がないこと。


 最悪の場合、ダヴィデに被害が及ぶ可能性があった。


「迷ってるようだね。だったら、死後の待遇も良くしてあげよう。悪魔に生贄に捧げられた人間は、例外なく、地獄に送られる。そこで責め苦を受け続けて転生を待つか、悪魔になるかの二択を迫られるが、私が口利きをして、直属の侍従になるよう取り計らおう。そうすれば、他の人に比べて、苦しむ心配はないよ。好待遇の悠々自適な地獄ライフが待っている。これなら、いかがかな?」


 黙っているのをいいことに、悪魔は条件を重ねる。


 察するに、この体には、それなりの価値があるらしい。


 おかげで、相手の思惑が少し、見えてきたような気がした。


 価値ある人間の魂を取り立てることに、意味があるような感じ。


 ――例えば。


「そんなにノルマが大事……? 下心が見え見えだよ」


 ソフィアは質問を無視して、考察を述べた。


 悪魔は言わば、現代における営業のようなもの。


 ノルマを課され、達成できるかで地位が決まるはず。


 恐らく、地位を維持するには、相応の生贄が必要なんだ。 


「イエスかノーかで、答えてくれるかな。二度目はないよ」


 悪魔は肯定も否定もせず、ポーカーフェイスを貫く。


 ただ、さっきよりも低い声音で、選択を迫ってきている。


(図星か。悪魔も悪魔で大変なんだな……)


 苦労しているサラリーマンを見ている感覚。


 そう思えば、悪魔と言えども、身近に感じられた。


(まともな人なら話を聞いてあげたいところだけど……)


 そこまで考えると、方針は定まり、ソフィアは覚悟を決める。


「答えはノー。自分のケツぐらい自分で拭いたら」


「……そうさせてもらうよ。地獄で後悔しても遅いからね」


 そうして、悪魔じみた取引はアッサリと決裂。


 悪魔は何の手加減もなく、手からセンスを迸らせた。

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