夢 その二
夜中、寝ていると、あたりに何か違った気配を感じ、ふと目を醒ました。 ぼんやりまなこで部屋を眺めると、閉めていたはずの雨戸が開いているようで、ベランダのガラス戸を通して、月明かりで染められたのか、まだ青暗い夜が、歪に巻き絞られたレースのカーテンの隙間から見える。
「ん?」と思って、目を凝らすと、部屋の隅に、何か人のようなものがうずくまっているようだ。左手をその方向へ差し出すと、「コンッ!」という小さな音がして、甲に当たるものがある。ギョッとして手を引っ込め、もう一度その一角をよくよく見ると、うずくまっているのはまだ若そうな女であった。太い黒縁の眼鏡で、太いボーダーの入ったTシャツを着て、背を丸めながら、じっとこちらを見つめかえしている。
「何だ! こいつは?!」
泥棒や強盗でもなさそうだが、気味が悪い。ただうずくまり、じっとこちらを睨んでいる。驚きを通り越して、恐怖に近いものを感じ、横に寝ていた妻を起こそうとするが、舌が咽喉に塞がって声が出せない。無理矢理声を出そうとしたが、「ググッ…!」という自分でも情けない声。
その自分の発した声で目が醒めた。夢だった。
雨戸はきちんと閉まっているし、人の気配など何処にもない。
時計を見ると、夜中の二時過ぎ。丑三つ時、というやつか。世の中の魑魅魍魎が暗躍する時間だが、若い女の魑魅魍魎もいるのか。
顔ははっきり見定められなかったが、今から思えば、誰かに似ていたのかもしれない。 誰だ?
しかし、夢でよかった。本当だったら、どうしようもないもの。
(2011年10月09日 mixiから)
極悪人日めくり
これまで見た恐い夢の中でも五本の指に数えられるのがこれ。夢の中で「日めくり」が出て来るのだが、そこに写っているのは見るからに恐そうな男の顔である。凶悪犯の指名手配写真のようでもある。皆違った顔ではあるが、それぞれ強面で恐ろしい。それが夢の中で勝手に一枚ずつめくられていく。その度に怖ろしい顔が私の頭にパッパッと映像として映るのだ。ほら、この顔だ、そら、こんな顔だ、ほら、ほらと、否応なしに次々と現れる極悪人の顔。止めてくれと願っても止まることなく、スライドショーみたいに現れてくる。そんな夢。
寝覚めの悪いことこの上ない。
(オリジナル)