表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/26

「をみなとはかゝるものかも」 

 mixiのコミュニティに「一行で笑わせろ」というのがある。ちょっと覗いてみたが、それで思い出したことがあった。

 大昔のことである。小学校の給食の時間は四、五人机を寄せ合って一緒に食べるのだが、その当時、面白いことを言って、相手を笑わせ、噴き出させるという遊びが流行っていた。


 この言葉は短ければ短いほど効果があった。ある時、私が「しんぶんがみ!(新聞紙)」と言った時だ、よほど上手く間を置いて発したのだろう、その時、M川ジュンコさんが飲みかけていたミルク(脱脂粉乳である)を飲み込み損ねて大いに()せた。その咽せ方があまりに(ひど)く、苦しそうだったので、周りの物は皆心配した。

 私も責任を感じて、前屈みになっているM川ジュンコさんの背中を(さす)ってやった。普段見ている姿とは思いもかけず、その背中は華奢であった。擦る手に感じたのは薄い肉と一本の湾曲した細い背骨だった。男兄弟しかいなかった私は、(服の上からではあるが)女の子の背中に初めて直接触れたその感覚を今でも掌に覚えている。女の子って、こんななのだと。


 昭和九年に、日野草城が俳句界に一石を投じた「ミヤコ ホテル」という連作がある。新婚初夜の様子を赤裸々に詠んだもので、賛否両論の大きな反響をもたらした。「けふよりの妻と泊るや宵の春」に始まる十句である。「枕辺の春の灯は妻が消し」など、イメージをかき立てられる句が続く。

 その中の一つに「をみなとはかゝるものかも春の闇」という句がある。私はこの句を初めて読んだ時、それとダブるようにして、往時むかし、M川ジュンコさんの背中を擦った時の、あの手触りを思い出したのだった。――実に遠い遠い昔の話ではあるが。


(2023. 2.22 mixiから)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ