ある妄想
買い物に行こうと、舗道を歩いていると、一軒の家の前で、おばちゃんが段ボールの切れ端を両手で掬うようにして、「これ、どうしよう、どうしよう」と言いながら、小さな生き物を転がしているのに出会った。
見れば、その生き物とは生まれたばかりのネズミだった。まだ、満足に動くこともできないくらい幼いネズミだ。その家にはネズミが出るのだろうか。ネズミ取りを仕掛けていて、捕まえたのだろうか、その辺はよくわからないが、とにかくおばちゃんは「これ、どうしよう、どうしよう」と言いながらも、その小さな生き物を車道の方へと追いやっている。
小さな命は段ボールで転がされながら、どうすることもできず、手足をバタバタさせているだけで逃げ出すこともできないでいる。車道に出されてしまったら、もう命はない。
結局、私は無情にも、足を止めることはせず、後ろも振り向かないでその場を去ったのだが、大分経ってから、ふと、思いついた。
もしも、あの時、浦島太郎が子ども達に虐められていた亀を助けたように、
「あの、もしもし、そのネズミ、あまりにも可哀想じゃありませんか。私に譲ってくれませんか」と声を掛け、安全なところに逃がしてやっていたらどうだったろう。
ある日の夜、ピンポーンと、玄関のチャイムが鳴る。
出てみると、綺麗な女性が立っていて、
「私は、あなたに助けていただいた子ネズミの親でございます。このたびは、息子の命を助けていただき、本当にありがとうございました」とか何とか……。
「で、お礼と申しましても何もできませんが、次回のロト7の当選番号をこの紙に書いておきましたので、どうかお納めくださいますよう」とか何とか……。
愚にも付かない、こんな妄想を続けながら、買い物に行ったのだが、あのネズミ、どうなったのだろうか? ちょっと気にはなっている。
(2016年10月17日 mixiから)
昔のmixiの日記を見ていたら、書いたことさえ忘れていたものもある。今回の話もその一つ。7年前である。よくもこんな馬鹿々々しいことを書いたものだと自分でも呆れたが、たまにはこんなのもいいかなと、この匣に収めることにした。




