#4 『俺と幼馴染と俺の家で』
「で? どうだったのよ」
「は? え、なにが?」
合コンという難関が終わった次の日。
俺を待っていたのは機嫌が著しくない
空手部部長の幼馴染。 琴吹刹那だった。
「なにって、合コンよ、合コン。 どうだったの?」
「え…いや………」
俺は昨日のことを思い出す。
まぁ、俺的に成功と言えば成功だな。
合コン的には失敗だけど……。
「そ、そその、女の娘と仲良くなったの?」
ん~…。 仲良くなったといえば仲良くなったよな。
だから。
「うん。 合コンの席では二人とも緊張しちゃったけど
外に出た時は話しやすくて面白い娘だったよ」
「なっ…!」
「ほ~う、一星もなかなかやるよのぉ……」
「あ、おはよう。 海里」
いつからいたのかは知らんがカバンを置いて会話に入ってくる海里。
「昨日はどうだったよ。 成功か?」
「ま、俺的に成功かな。 あ、あとサンキューな海里。」
「いや、いいってことよ。 これで一星くんにも春が来たな。」
海里にはお礼をいっとかなきゃと思っていたから
言えてよかった。 うむ、やはり感謝を口にするというのは
いいことだ。
「で…、で? 一星はその娘と付き合ってるの?」
「その娘? あ、音姫!」
「「へ?」」
噂をすれば影。 音姫がいたので声をかけ、
二人を置いて、廊下に出た。
隣のクラスだから、そういえばここの教室の前通るんだな。
「あ、いっくん。 昨日はどうもありがと」
「こちらこそ。 そういえば、今週は暇あるかな?」
「うん、今週は夜暇だよ?」
「い、いいいいいいいいい、一星くん!!!!!!!!!!
もう、そこまで進んでいたなんてッ!!!!! 母さんビックリ!!!!!!!」
「い、いい一星…? そ、そそそ、そうね。 これは夢だよ。
妙に生々しいとかそんなのき、気にしないからね!」
・・・・。 とりあえず…お前ら何言ってるんだ……。
「何言ってるかわかんないけど、夜って天体観測の事だよ。」
「「は?」」
なんだ、お前らのその唖然としたような驚愕したような表情は…。
というか、夜といったらそれしかないじゃん……。
「な~んだ。 母さん、ビックリしちゃって一星をころs…。
いえ、なんでもないわ」
「お前、今なんて言おうとした? というか、その口調やめろ」
「あ、昨日、合コンでお会いした!」
「お~、覚えていてくれたんだね」
「つか、つかもちかいとさん!」
「い、いや、塚本海里だから。 もしかして一星以外眼中になしか…」
「ん?」
「いや、なんでもないよ」
何やってんだ、海里は……。
最後の方よく聞き取れなかったんだけど…。
はぁ…。 ま、いっか。
「改めて、コイツは俺の友達の塚本海里。 で、隣が
幼馴染の、琴吹刹那。 空手部の部長なんだ」
「わ~、すごいね! わたしは隣のクラスの天河音姫です。
海里さん先ほどはごめんなさい…。」
「よろしくね、音姫ちゃん。」
「ふ、ふん……」
何を怒ってるんだ刹那は……。
「ほれほれ、琴吹もちゃんと挨拶しなきゃ~」
「わ、わかってるわよ。 琴吹刹那。 よろしく。 天河さん」
「よろしく。 刹那さん」
「・・・」
なんだ、この空気……。 海里も微妙に感じ取ってるのか苦笑している。
「あ、そうだ。 海里。 今度の天体観測、音姫も連れてっていいかな?
元天文部で星が好きみたいなんだ」
「お~! カワイイ娘なら大歓迎~。 バッチOK」
「お邪魔じゃないかな?」
「ぜ~んぜん!」
「私、先教室戻るから……」
・・・。 行ってしまった。
「あ、あの……。 わたし、刹那さんを怒らせちゃったのかな?」
「ん、いや。 違うでしょ。 そうだね、あれは一種の病気かな。
病気。」
「え? そうなのか?」
病気なんて俺聞いてないけど……。
「一星にはわからんが女にはいろいろあるんだ。
おっと、そろそろチャイムがなるな」
「あ、じゃあいっくん、海里さん。 また今度」
「うん、また今度」
音姫と別れると、海里と共に教室へと入る。
席に着くと隣で不機嫌そうな刹那を見る。
「どうしたんだ? 調子、悪いのか?」
「別に……」
顔を背けたまま仏頂面で頬杖で別にはないだろう。
「まぁ、体には気をつけろよ」
それで会話を終わらせ教室に担任が入ってきてHRが始まった。
そして最後の授業中も刹那は不機嫌モードだった。
ほんとどうしたんだろうな……。
「(な、なぁ…。 海里)」
「(う~ん?)」
小声で前の席の海里に声をかける。
「(なんで、刹那はあんなに機嫌悪いんだ?
いままでの2倍くらい機嫌悪いぞ?)」
「(う~ん…、お前がこの頃付き合い悪いとか?)」
「(ん~? そうか?)」
「(たぶん、空手の部活で忙しいんじゃないか?
休憩がてら誘ってみればいいんじゃね?)」
ふむ、そうだな……。 この前、天体観測には来れなかったし
空手部。 この頃、忙しそうだもんな。
「(そうだな。 帰りにどこか誘ってみるよ。)」
「(補足だが、ラッキーなことに今日空手部は休みだ。)」
「(おー、サンキュー。)」
さて、放課後誘うとこまでは決まったのだがどこに誘えばいいかな…。
まさか、行くあてもなく誘うのもなぁ……。
そして、授業終了のチャイムが鳴る。
HRが終わると、俺は刹那の元へと行った。
「あのさ、今日空手部ないんだろ?
たまにはどこか遊びに行こうぜ?」
「え……。 わ、私?」
「いや、刹那以外どこにいるんだ? って、俺が話しかけてるの
お前しかいないじゃん」
「あ、う、うん。 その、いいの?」
なんで、顔赤いんだ? もしかして、本当に風邪気味とか?
「いいも何も、誘ってんの俺だから。
というか、大丈夫なのか? 体調とかさ」
「あ、全然! もう、大丈夫だよ!」
ビシッっと椅子から立ち上がる刹那。 それを見て体調は大丈夫とわかる。
「ん~。 具体的にどこ行くか決めてないんだけど……。
どこ行きたい?」
「え……。 わ、私はどこでもいいよ。(一星と一緒なら…)」
「ん? 何か言ったか?」
「い、いや!!!! 別に!!!! と、とりあえず学校から出よ!!」
「あ、ああそうだな。」
よかった。 機嫌は直ったみたいだな。
「で、どこ行こうか?」
学校の通学路とも呼べる、この坂『天の坂』を下っている最中
刹那に話しかける。
「え、え~っと…。 一星の家がいいな」
「家? なんで?」
家って、結構来てないか?
というか、家で遊ぶもんあったかな~。
「や、別に…。 その、理由は…、ないけどさ」
「ふ~ん、まぁいいや。 じゃあ行くか。」
「へ? いいの?」
なんで、そこで驚くんだ?
やっぱ、疲れてんのか?
「断る理由はないだろ。 お前が行きたいのであれば…」
それに、今日は刹那を休ませるためなら都合はいいのかもな。
変に遊びに行って疲れたら本末転倒だし。
「ただいま。」
「お、おじゃましま~す」
「今更、そんなかたくなるか普通…」
「い、いいの!」
俺は、先に部屋に行ってるように言うと、
台所でお茶の準備をする。 確か、あいつ砂糖2つだったな。
あとは、適当にお菓子でも出すか……。
「ほい、コーヒー」
「あ、言ってくれたら私が出すのに」
「一応、客だろ。 まぁ、刹那にとっちゃ違和感あると思うけど…」
とにかく! 今日は刹那を休ませる。
それだけが目標。 いわば、優先事項だ。
「あんまり、変わってないね。 一星の部屋」
コーヒーを飲みながら部屋を見渡す刹那にそんなことを言われる・
「いや、1週間前来なかったっけ?」
「そういうんじゃなくて、昔から」
「ん~、そうか?」
見慣れた部屋を変わらない…。 ん~、まぁ変わらないかも。
模様替えとか面倒だし、確かに変わってないかもな。
「あ~、このポスター覚えてる? 一星が愛読してる
『スターday』の付録でさ~。」
「あ~、確かその付録ほしかったんだけど受験最中で買う暇なかくて
ここらじゃ売ってなくて………」
「そうそう。 二人で都心部の方まで行ったよね~。
しかも、歩いて!!」
「帰ってきたの夜遅かったしな」
その後、親に怒られたのは実は内緒であったりする。
「そうだ、トランプやろうか」
「ん? 今更?」
刹那がトランプを俺の机の引き出しから出す。
「やろうよ。 久しぶりだもん」
「ん~、ま…。 この頃やってないからいいけど」
ちょっとボロボロのトランプ。
よく4人で遊んだと思う。
しかも、朱希奈や海里がやたらと強くていつもビリ争いは
俺と刹那だった。
「今日は、ビリにはならないからね」
「へいへい」
そんな感じで2時間くらいトランプをしていた時、
7並べの時で手が止まった。
「…刹那?」
刹那の番なのに場にカードが出てこないどころか
声すらも聞こえない。
「すー……、すー……」
あれ……。
手にカードもったまま寝るって器用なことすんな~、コイツ。
って、そこじゃないな。 うん。
とりあえず、カードを置いて……。
布団は……。 ええい、面倒くさい。
そのままベッドに寝かすか……。
俺は、起こさないように刹那をゆっくり持ち上げると
ベッドへと寝かせる。
あ~、制服だけど……。 まぁ、いいか。
「ん~……」
ヤバッ!? 起きたか?
「ん…。 一星~」
「え…?」
布団をかぶせようと思った時そんな声が聞こえる。
「の…、バカ……」
「・・・・・・。」
枕で窒息させてやろうか……。
って、まぁ、いいか。 この頃疲れてるらしいから。
そっとしておこう。 って、そうなると俺が暇になるよな……。
トランプを片づけながらそんなことを思う。
「とりあえず、朱希奈に電話して…」
携帯をカバンから取り出して、電話をかける。
2、3回のコールで主が出た。
『もしもし?』
「あ、朱希奈か? 俺」
『あ~、星? どうしたの?』
「今、刹那俺のところで寝てるから晩飯食わせて返すわ」
『りょ~かい~。 まぁ、そのお話は次の天体観測の時に
聞かせてもらうから~』
「あ、わかったわかった。 そんじゃな」
電話を切ると、もう一度刹那を見る。
「やっぱ、疲れてるときには上手い飯だよな」
そう思った俺の行動はとても早かった。
まず、スーパーまで自転車をこいで
食材を買ってくると、即行家に帰り、晩御飯を作る。
「お~、いい匂いじゃないか」
「あ~、父さん。 お帰り」
そんなこんなで父さんが帰ってくる。
あ、もうこんな時間だ。
「刹那~。 飯だぞ。 刹那」
「ん…、ん~? 一星? あれ? 私…」
「疲れて寝ちゃったんだよ。 飯出来てるから食って帰れ」
「ん~…」
まだ、夢の中なのか反応が鈍いな。
ま、飯を食えば元気になるか。
「お~いしい!」
「だろ? 今日は頑張った」
「いつも、こう手の込んだ料理だといいんだがな」
「父さんは黙りなさい」
ん、でも自分が作った料理を他人に食ってもらうってのはいいもんだな。
刹那も笑顔だし、今日のノルマは達成だな。
「今日はどうも」
「ん、気をつけて帰れよ」
「すぐ、隣じゃん…」
「はは、まぁまぁ。 んじゃ、また明日」
「うん、また明日」
帰る刹那を見ると、朝の不機嫌はどこへやら
足取りの軽い刹那を見送った。
不定期更新が続きます…。 はい。