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#3 『悪友と彼女と合コンで』




『1. 空気を読め』


海里から借りた『合コンでモテる必勝法厳選ベスト10』

を開いてみるとイキナリでかでかと指南が載っていた。


「(前置きはなしかよ…。)」


と、読者に不親切だなぁ。 と思いつつも

ん~…。 なんて、アバウトな雑誌なのだろうと初っ端からため息が出る。

まぁ、いいや次。


『2. 相手にすすめられたら例えマズイとわかっていても口に運ぼう!

 それが男というものだ!!』


「・・・・・・。」

怒っていいか。 いや、なんとなくこの雑誌ではなく俺の悪友に…。

まぁ、いい。


『3. どんな小さな話にも乗ってあげよう!

 彼女たちを抱擁できるかどうかで決まるぞ!』


ワケわかんねーよ…。

抱擁って……。


『4. 王様ゲームでは場にあったお題を出そう!』


ん? 下に必勝法が書いてある…。


『①いきなりチューはアホな男。 さりげくさりげなく

 ボルテージをあげていこう』


『②テンションが上がってきたらお酒を頼もう。

 酔った勢いでのお遊びであれば大抵の事は許されるぞ!』


最悪な雑誌だぁ……。 なんか、もう色々と突っ込みたいところがあるんだけど…。

てか、飲酒を勧めるなよ…。 この雑誌の年齢層的に

俺達高校生が見る必要なくね?


『5. 連れ出すときはさりげなく。 自分から切り出すときは

 相手がレディーだということをわきまえて(はぁと)』


この、はぁとはなんなんだ……。

まぁ、なんとなくわからないでもないな。


『6. 紳士ならば、女の子がききたいこと、話したいことを察し

 先に聞いてあげよう。 君の感知能力の偉大さに思わずメロメロだ』


最後の方は置いておいて……。

まぁ、これもわかるな。 


『7. 人目につかないところにきたらチャンス!

 いけるとこまでイけ!!!!!!』


これだけ、やけに気合がこもってるな……。

って、いけるところってドコまでだよ……。


『8. メアドを聞くときはチャラチャラしたような感じではなく

 あくまでクールに!』


まぁ、わかるな。


『9. 最後は家まで送ってってあげよう。 夜道は……

 危険だからねぇ……』


なんで、これだけ、意味深なんだよ…。

うん? 注意書きがある。


『※ 人目のつかないところであるのなら狼になるのもまたよし』


なんだ、コレ……。

まぁいいか。


『10. 最後に……、頑張れよ』


最後の方必勝法じゃねえし……。

結局全然わかんねー……。


「明日……。 本当に大丈夫か? 俺………」


雑誌を読んだことにより、逆に不安になる俺だった……。




次の日。



「やぁ、一星。 どうだった? その本は」

「や、聞きたいんだけど、この雑誌って年齢層違うくね?」

「ああ、社会人が見るようだからな」

「しら~っと、言ってんじゃねえよ。全然役に立たん…」

「ん~、でもま、読まないよりは良かっただろう?」


・・・。


「あ、ああ……」


とりあえず、YESと答えておくことにする。

こいつも俺のこと思って貸してくれたんだから

貸してもらって、「逆に不安になった」なんて言えるはずないしな。


「じゃあ、今日は大丈夫だな」

「まぁ、ひっそりやるよ」


また、いつものように傍観にまわるか。

もちろん、空気を読みつつだが……。







「よし! いくぜ、一星!」

「は~いよ……」


カバンを持ち、席を立つ。 やっと授業が終わった…。


「気を付けなよ、一星。 変な女に騙されちゃだめだからね」

「そういうと…、琴吹にもだまされちゃだめなのか…」

「い、いや! 私にはいいっていうか…。 って! ち、違うの!!!!

 そ、それに私変な女じゃない!!!!」

「自己申告は自爆のもとだぞ?」

「うっ……。」

「そんなことより、早く行こうぜ。真田も待ってるみたいだし……。」


俺が指さす先には教室の出口で顔をきらきら輝かせながら

待っているクラスメートの真田がいた。

それに、気づいたのか海里が歩きだす。


「そんなことって……。 そんなことって……」

「じゃあ、刹那。 また明日な」

「う、うん。 楽しんできてね」


最後、顔ひきつってたけどどうしたんだアイツ?


「今日、調子悪いのかアイツ?」

「お前にはまだわからんさ……」

…? まぁ、いいか。




そんなこんなで、合コンとなってしまった……。


「いや、お集まりいただきありがとう」

「いえいえ、こちらこそ。」


海里と女性陣のリーダーっぽい人が会話していた。

この人たちとか……。

ちなみに席順は右から俺、海里、真田だ。


「じゃあ、まずは自己紹介。 俺は塚本海里。

 天川私立百武高校3年生。 趣味は天体観測と読書かな」


うまい具合に海里が自己紹介する。

読書って……。 いや、やめよう。

今日は合コン。 場の空気を読もう。


「俺は、真田流火。 塚本と同じ高校の3年、サッカー部所属。

 趣味は……、やっぱりサッカーかな」


真田も、やるなぁ……。

というか、どうすっかなぁ……。

そんなことを考えていると、真ん中の席に座っている

海里が肘でつついてくる。あ、俺の番か。


「俺は、高嶺一星といいます。同じく高校3年生です。 

 えと、趣味は天体観測です。」


・・・。 うわ、なんだ海里の目。

さっそく俺しくったか?


「まぁ、いいや。 じゃあ次は女性陣のかた達どぞ!!!」

「アタシは、天川私立水実高校3年、平岸桃香。

 趣味はサッカーで、一応サッカー部のマネージャーやってるよ」


そう言うと、平岸さんは真田にウィンクしていた。

真田もまんざらではないみたいだな…。


「私は、天川私立百武高校3年、一縷駕亜美。

 テニス部所属で、趣味はもちろん、テニス。好きなものは甘いものだよ」


というか、俺から見て女性陣のレベル高いと思うの俺だけか?


「ほら、次、貴方の番だよ」

「わわ、え、ええっと……。 最近天川私立百武高校に転校してきた

 天河音姫です。 えっと、前は天文部に入っていて、その

 ほ、星が好きです!」


突然、先生に授業であてられたみたいに緊張しながらしゃべる女の子。

心なしか、3人の中で一番かわいいと思った。

って、俺、何顔赤くなってんだ……。

星が好きです。 って、俺なわけないだろ!!!!

冷静になれ、一星。 うん、俺はまだ大丈夫だ。


「それじゃ、一通り自己紹介したところで何か食べる?

 食べながら話そうぜ」

「あ~、私この、マドモアゼルプリンが食べたい」

「私は、アイスコーヒー」


と、どんどん注文していく一同。

はぁ、俺も何か頼むかな……。


「一星は?」

「あ、俺はコーヒーのブラックで」

「へぇ~、高嶺くんはブラックのめるんだ」

「え、あ…。 一応」


突然、一縷駕さんに話しかけられてさほど会話が広がらない対応をしてしまう。

ヤバイ……。 海里の目が怖い……。

こ、ここは……


「そ、その甘いものとか苦手だから」

「ふ~ん………」


あ…。 相手の女の子メチャクチャつまらないものを見る目で…

ヤベェ、海里がマジで睨んできた。

はっ!!! そうか、確かこの娘自己紹介で甘いものが好きって言ってたな。

もしかして、もうアウトか!!!!

俺、THE・空気読めない男か!!!!!


「俺は、甘いもの好きだな。 甘いものっていいよな。

 一気に疲れ飛んじゃうみたいでさ」

「うんうん。 わかるわかる。 こ~、じゅわ~って

 疲れ取れちゃうよね~」


・・・・・。

海里って、すげーなぁ……。

なんとなく、変なところで悪友に関心を持ってしまうダメ男だった。

はぁ……。


「真田君はさぁ~、ポジションどこなの?」

「あ、俺はFWだよ。 今は、夏の大会に向けて練習中」

「へぇ~、じゃあもしかしてうちとも当たることあるかもね」

「うん。 その時はお手柔らかにね」

「あはは。 私は試合に出ないけど会った時はヨロシク」


真田もすげーな…。 なんだかんだいって俺空気乱してないか…。

目の前の女の子。 つまり天河さんを見ると

オロオロして、緊張気味らしい。 なんとなく同じような人がいてくれて

よかったな~。 って思う反面。 男がこんなんじゃダメだろ。

という、考えがよぎる。 そういえば、星が好きって言ってたな…。


「え、えっと。 天河さんって天文部とか入ってたの?」

「え、あ、はい。 前の高校で入ってました。」

「じゃあ、今回も入るの?」

「い、いえ…。 その、もう3年生なので今から入っても2ヶ月くらいしか

 活動できないから普通に1年過ごすつもりです」


お~!!!!! やっと、マトモな会話が成立したぞ!!!

料理や飲み物が運ばれてきてからも会話は続いた。

その後は天河さんとは会話しなかったけれども

まぁ、いいか。 無難にやり終えたし……。


「じゃあ、俺は亜美ちゃんと行くかな」

「あ、俺は桃香さんと……」


お前ら、たったの2時間ちょいで下の名前か……。

男として、なんかスゴイ敗北感を感じるが………。

まぁいい。 4人ともすぐに出ていってしまった。

てことは、必然的に俺がこの娘だな。


「あの!」

「あ、は…はい」


声をかけようと思っていたのだが、先に声をかけられてしまったので

少々驚く。 というか、立ってみてわかったけどこの娘

結構小さいな。 俺と頭一個分違うや……。


「その、えっと……」


彼女のことを見て脳裏に何かがよぎる。

『6. 紳士ならば、女の子がききたいこと、話したいことを察し

 先に聞いてあげよう。 君の感知能力の偉大さに思わずメロメロだ』

こ、これか!!!! 今、これを使うのか!!!

別に、メロメロはいいけど!!!


「と、とりあえず外でようか」

「はい」

なんつー、誘い方だ。 ここで、海里がいたら八つ裂きにされてたな…。



でも、外の風は思いのほか気持ちよかった。

もっと暑いと思ってたのにな……。

そして、頭が冷えたのか肝心なことを忘れていた。

俺がここへ来た意味は別に彼女が欲しいからじゃない。

仕方なく…。 という前置きで来た。

こんな気持ちで恋愛やっちゃ、なんかダメな気がする。

だから……。


「あ、あのさ。 その、ごめん。

 俺、実は友達に人数足りないからって誘われただけで…。

 彼女とかは……」

「わ、わたしも! その、転校してきて試しに合コン行かないって…。

 誘われただけで…」

「そっか」


なんだ。 彼女もそうだったのか。

よかった…、これで怒鳴られでもしたら俺立ち直れない気がするしな。


「あの、貴方も…。 百武高校なんだよね?」

「うん。 でも、見ない顔だから違うクラスだよね」

「はい。 わたしは3年D組です」

「あ、俺はC組。 隣のクラスか」


あれ、なんか自然に話せてる。 なんでだろ……。


「あ、改めましてわたし天河音姫です。

 よろしくね、"いっくん"」

「……………へ?」


い、いっくん? そ、それって俺の事か??????


「え、いや! ちが、え~っと……、ほ、本名は!!??」


俺が不思議そうな顔をすると、天河さんは我に返って

いきなり詰め寄ってくる。


「あ、ああ。 高嶺一星」


それに、おずおずと答える。 って、この頃こんなんばっかだな。


「そ、そう! いっくん!」

「・・・・・・・・・。」


少しの沈黙の中。

さっきとかわんねーだろ…。 ってつっこんじゃ負けなんだろうな。たぶん。


「はわ! ち、違うの。 いっく、え、いや…」

「い、いや。 いっくんで構わないよ。 そう呼びたいのなら

 きにしないから」

「うぅ……………」


なんだ、この娘。 ちょっと、おもしろいかも。


「ご、ゴメン…。 へ、変かなぁ?」

「いや、面白くていいと思うよ」

「あ、あの。 あなたもわたしの事名前でどーぞ!」

「え?」


い、イキナリ名前!!???


「あ、あれ? 合コンの時、皆もう、下の名前だったから……。

 はわ! や、やっぱり、変かなぁ~?」


そんな目で見ないでください……。

それって軽く反則技じゃ……。


「じゃ、じゃあ…。 音姫…。さん」

「し、下の名前で呼ぶなら呼び捨てがいいな」

「うっ……」


顔赤らめて何言ってるんだ、この娘。 そんなことしたら……。


「お、音姫。 こ、これでいいかな…?」

「う、うん。 ありがと、いっくん」


男として、やらねばならなくなるだろ、オイ………。

あ~、でもなんとなくさっきの敗北感はなくなった気がするな。うん。

だが、なんか、付き合い始めたカップルの空気が漂ってる。

イカン! これでは、何かがイカン!


「そ、それじゃあ。 夜遅いから送ってくよ。」

「え、あ…い、いいの?」

「うん。夜道は危険だしね」

「あ、ありがとう!」


って! 何やってんだ俺――――――!!!!

さらに、状況悪化させてんじゃんかよ!!!!!


「そ、その。 いっくんは星好き?」

「うん。 好きだよ。 中学の頃は天文部だったからね」

「え? 高校ではやらないの?」

「………………。」


俺が、高校で天文部をやらない理由。

でも、これは………。


「うん、高校ではやってないかな」


ちょっとした作り笑いで返すことに良心が痛むが

今の俺にはこれしか言えない。


「そっかぁ~…。 あ、わたしね、実は天文部の副部長さんだったんだよ」

「へぇ~。 楽しかった?」

「うん! でも、都会だったから観測にはそんなにいけなかったんだ~。

 でも、ここなら見晴らしがよさそうだし、ちょっと歩けば観測できそうだね。

 それに、昨日夜空を見てたら都会とは違ってとってもきれい!」


純粋無邪気に笑顔ではしゃぎながら星空を見る彼女。

17年間、ここの星空を見てきた俺にとって自分が見てきた空の事を

キレイと言ってもらえて新鮮で嬉しい気持ちがこみ上げてくる。


「そうだ。 今度、天体観測をするんだけど君もどうかな?」

「え…。 でも、いっくん。 天文部は…」

「うん。 やってないけど、中学の時の天文部の友達2人と

 たまに、天体観測してるんだ。」

「そうなんだ~! で、でも…。 わたしが行ってもいいのかな?」


途端に、彼女が心配そうに尋ねてくる。

それに対して俺は笑顔で言った。


「うん、もちろん。 星が好きな人は大歓迎。 

 と…いっても、たまに話が脱線したりして星見れなくなるから

 天体観測と言うよりも…。 そうだな、星空の下での会話かな…」

「あはは。 でも、おもしろそう!」

「うん、次開催するときは必ず呼ぶよ」

「どうもありがとう、いっくん!」


その後、少し会話をすると彼女の家へとついた。

以外に俺の家と近いことがわかる。


「今日は本当にありがとう。 楽しかったよ」

「合コンの席にいた時とはえらい違いだな~」

「それは、いっくんにも同じことが言えるよ」

「はは、ごもっともで」

「じゃあね、ばいばい」


元気よく手を振って、彼女は扉の奥へと消えていった。


さて、と……。 俺も帰りますか……。

明かりの少ない道で俺が思ったことは一つだけ……。

もしかしたら、合コンもいいのかもしれない…。

自分の世界観が今日一日で広まったことの新鮮感と

海里に少しの感謝と…。 あとは、音姫に会えたことに……。

たまには、こういう浮いた感じも悪くないと。

帰路につく俺の口元はかすかに緩んでいた。




簡単な人物紹介pert3 ※補足程度


天河(あまかわ) 音姫(おとひ)

3年D組所属。 ヒロイン。


平岸(ひらぎし) 桃香(ももか)

天川私立水実高校(てんかわしりつみなみこうこう)の3年生。

サッカー部のマネージャー。


一縷駕(いちるが) 亜美(あみ)

3年D組所属。 音姫の友達。

テニス部所属。


用語解説pert2 ※補足程度


『合コンでモテる必勝法厳選ベスト10』

海里が2年前に買った本。

著者は六車六道で年齢層的に30代くらいの雑誌。

アバウトかつ斬新で一時期話題を呼んだ一冊であったが

あてにならないことが判明し、ブームはすぐに去った。

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