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#2 『悪友と幼馴染の妹と天体観測で』



「あ~…、やっと終わった…」


自習が終わり、担任が数分後に教室にきて今さっきHRが終わったところだ。


「今日は、なんも用事ないだろ?」

「おー…。 どうする? 今日も天体観測としゃれこみますかい?」

「そうだな。 じゃ、いつもの場所集合で。」


今日の夜は天体観測か…。

ここでいう、天体観測ってのは、ただたんに寝転がりながら

星を見てあ~でもない、こ~でもないとしゃべるだけなのだが

それが今の俺の癒し時間ヒーリングタイムとなっているといっても

過言じゃない。 今日は早めに勉強してしまうか。


「今日、朱希ちゃんは連れていくか?」

「ああ、用事がなければな。 俺の方から言っておくよ」

「へ~い」


その後、海里は用事があるというので先に帰ってしまった。

なんでも、『天体観測30時』とかいう本の発売日らしい…。

そんなことを考えつつ、2年生のクラスへと足を進める。


「おっ。 朱希奈~」


目標の人物を見つけると声をかける。

もう幾度となくきているので2年生のクラスの皆はこちらに無関心だった。


「ん? 今日も天体観測?」


俺がここに来る理由はそれしかないので最初の言葉はそれだった。


「そそ。 忙しい?」

「ん~…。 今日、天文部はないから大丈夫」

「部長職ってのは大変だね~…」


この子は、天文部部長の『琴吹朱希奈』。 刹那の妹で

姉と違い、成績優秀。 そのくせ、星知識は俺と肩を並べるほどだ。

2年生で部長をやっているのも頷けるというもの。

まぁ、部員は2年7人。1年8人という少数部活だけど……。


「ん~、そんなんでもないけど、中学より本格的だから大変と言えば大変」

「悪かったな、お遊びで」


実を言うと、中学の頃は俺も天文部に所属していた。

あの頃は、俺、海里、朱希奈しかいなくてほとんど趣味の範囲、そのものだった。


「別に。 星の天文部がお遊びとは思ってないよ。

 ただ、観測結果とかそのまとめとか

 推測とか推論とか観測行くたびにまとめるから面倒くさいだけ」


やはり、通常の天文部と中学の頃の天文部は勝手が違う。

そのせいか、本当に面倒くさそうだ……。


「ご苦労なこって…。 んじゃ、今日いつもの場所に集合な」

「おっけー。」




さて、と……。 どうやって時間を潰そうか………。

このまま帰って勉強してもいいんだけど……。


「あ! 一星~」

「ん?」


手持無沙汰だった俺の前に現れたのは道着姿の刹那だった。


「今、帰り? それにしても遅いね」

「ああ、朱希奈のところに寄ってきたんだ。

 今日、天体観測するから。」

「へぇ、またやるんだ~」

「刹那も来るか? 忙しくなければだけど」

「え? あ~、うん。 行きたいけど……。 今日は空手部のミーティングが

 長引きそうだから、また今度行きたいな」


すっかり忘れているが、刹那は空手部の部長だったよな。


「そっか、試合近いみたいだから頑張れよ」

「う、うん。」

「そんじゃ」



刹那を見送った後、完全に手持無沙汰になってしまった。

しょうがない。 家に帰って勉強するか。

カバンを持ち直し、帰路へとつく。

そういえば、今日は月間『スターday』の発売日だったような……。

ん~………。 どうすっかなぁ…。

そういや、今日の晩飯のおかずは何がいいかなぁ…。

卵…があるから、適当に炒飯にでもして食うか…。

いや、でも炒飯は1週間前食べたな…。

どうしたもんか……。

そんなことを考えているうちに家へとつく。

本当、人生無駄な事に試行錯誤すると時間が早く感じるもんだ。

若干17歳の高校生が人生を語っちゃいけないような気もするが…。






と、まぁ。 そんなこんなで夜になった。


「星~。」


玄関から、俺を呼ぶ声がすると、支度をし、父さんに一声かけて

外へと出た。 そこには制服ではなく至福の朱希奈が立っていた。

いや、当たり前だけど…。


「今日は、どこみようか…」

「ん~、まんべんなく……。 というか、本当に星を見てるのか

 どうかというのがなぁ~」

「たまに、スゴク面白い話して星見なかったときあったね」

「3人して腹かかえて笑ってたんだから空なんて見れねえだろ…」

「ごもっともで」


そして、"いつもの集合場所"にたどり着く。


「お~、お二人さん」

「今日は早いな」

「いや、なに。 本屋に寄ってからまっすぐ直行したからな」

「飯は?」

「来る途中に済ませた」


そう言うと、近くのコンビニで買ったと思われる袋を見せてきた。


「あと、これも読んでいた」


高々と少し分厚い本を差し出してきたので

俺と朱希奈はそれをパラパラとめくる。


「どんな本だっけ?」

「『天体観測30時』。 超おもしろいんだよ」

「でも、なんで30時なの?」

「それは俺も思った」


俺が疑問に思っていたことを朱希奈が先に言ったのでそれにのる。


「あ~、これは最後まで読まなきゃわからんな」

「30時っていうと、朝方6時くらいだろ?」

「まぁまぁ、後で貸すから待ってろ」


海里が本をしまうと3人して寝転がり星を見る態勢をとる。

まだ、空は少し明るい方だが、夏は比較的明るく光る星が見えるので大丈夫だ。




「ねぇ、星~。 ぶっちゃけ姉のことどう思ってんの?」

「ん~?」


夏の大三角であるデネブとアルタイルとベガを探している最中

隣から、声が聞こえた。


「だから、姉のことどう思ってるの?」

「姉って、刹那?」

「そう。 というか、私に姉は一人しかいないんだけど……」


そりゃ、ごもっとも。 俺も知らないしな。


「琴吹はもっと恋愛するべきだよな」


そこに、海里が入ってくる。 それは、今日聞いたような気がするな…。


「海さん知っておいてそれってどうよ?」

「あっはっは、知り合ってから6年間何も起きないんだし

 そろそろ、俺は我慢の限界だな。 閉じ込めて無理やり…」

「それ、犯罪。 まぁ、わからないでもないけど…」


こいつらは一体何の話してるんだまったく……。


「とうの本人が気付かないという…。 前途多難な恋だとは思っていたけど

 ここまでとはねぇ~…」

「それに、こっちもちょっとワケありだしね~。

 恋愛に臆病になるのはわかるよ」

「おい、お前ら何の話してるんだよ」


恋愛関係の話は苦手と言うかそんなしないのでわからないが

さすがにここまで蚊帳の外だとちょっと虫の居所が悪くなる。


「何って……」

「ねぇ~…?」

「むっ……」


なんだ、お前らのその「察しろよ」みたいな目は……。


「一星くん…。 キミは恋愛に興味がないのかい?」

「や、興味がないわけじゃないけど……。 二の次、三の次って言うか…」


海里が起き上がり、グイッっと俺の前に顔を寄せてきたのでたじろぐ。


「そんなこと言ってから、何年たった?」

「えっと…、4年……かな」

「ダメだね。 星。 ダメすぎ」


隣の朱希奈はもはやため息以上の息をはいている。

なんだよ、二人して……。


「というか、朱希奈だって恋愛に無関心じゃないのかよ」

「私の周りに、私が興味のある男子がいないのよ。

 それは、私のせいじゃなくまわりのせいでしょ」


とってつけて、「星と海さんは論外というか恋愛対象外だし…」

なんて、呟きが聞こえたのは俺だけか?


「そうそう、朱希ちゃんはこれでも恋愛に関しては鋭いんだぞ?

 そうだな、星や琴吹のざっと25倍くらい鋭いな」


なにいってるんだか……。

刹那はともかく、俺はそんなに鈍くないと思うんだが……。


「星、今、自分そんなに鈍くないとか思ったでしょ?」

「な…」

「あまい! あまいよ! 一星くん!!!! そんなことでは

 第2の彦星になんかなれないぞ!!!!」

「いや、なりたくねえよ。 てか、彦星って超遠距離恋愛のプロじゃねえかよ。

 なんで、俺がそんなのになりたいんだよ……」

「だから、君はチョコラテのように甘いんだ!」


なんか、もう会話がわからなくなってるな。 戻そう。


「で? 結局、お前らは何の話してたんだ?」

「ダメだよ、海さん…。 ちっともわかってない…」

「うむ、まだまだ超ウルトラ鈍感度は100%のままだな」


何が言いたいんだよ、こいつらは………。


「しょうがない。 お前も明日の合コンで彼女ゲットだ!」

「え、え~!? 星、合コンに行くの?」

「いや、なんだよ。 その驚きよう…。 仕方なくだけど」

「あの星ヲタクで、星が大好きで、星マニアで、星がいればいいさ~。

 の星が合コン!?」


星、星うるせえな…。 しかも、俺をさす星って最後だけだしな…。


「よく、姉が許したね……」

「俺が、負かした口で」

「え? 海さんが接吻したの? 姉と? えぇぇぇ………」

「な、なんだね。 朱希ちゃん、その最後のキモチ悪い声は…。」

「だって、姉のファーストが海さんに奪われるんだよ?

 最悪じゃん」


今、さりげヒドイこといったな、朱希奈……。

まぁ、わからなくもないが…………。

親しみやすいものの、海里は女に対して軽いからなぁ…。

その点では、実の姉のファーストキスがコイツだとそんな声も出したくなるだろう。


「まぁ、俺がキスしてしまったらお話が兆速で動き出すけどやる?」

「いい。 デメリットが大きすぎる。 というかそんなことしたら

 姉の空手でもう二度と日の目を見られなくなっちゃうけど……。

 それでもいいの?」

「・・・・・・・・。」


きまったように、沈黙する海里。 たぶん、想像しているのだろう。

春の対抗試合を応援しにいった俺たちは知っている。

相手選手が刹那を挑発して挑発しまくった結果

刹那の回し蹴りをモロにくらい、肋骨にヒビが入ったとのことだ。

会話を聞いていた審判のおかげか両成敗と言う事で終わったが

あの光景を見た瞬間、俺たち二人は今後刹那に対する冗談はほどほどに…

なんてのを暗黙の了解としてきた。


「ね? 海さんならわかるでしょ?」

「は、ははははは。 この作戦はなかったことに…」

「うん、私も海さんの亡骸を見るのは嫌だからね~。

 なかったことにしておくよ」


もしかしたら、海里に対抗できるのは朱希奈しかいないかもしれない。

と、このとき再確認した俺である。

てか、俺この二人に口げんかで勝てる気がしないな…。


「星も気を付けなよ~。 この前、姉が『一星のバカ!』って言いながら

 友達からもらった誕生日プレゼントのクッション、グチャグチャにしてたから」

「え…」

「冗談だよ」


その笑顔は信じていいのか否か…。 本当に朱希奈にはかなわない。

うん、たとえ、天変地異が起きたとしても俺は朱希奈に勝てない。


「朱希奈ちゃん、怖えーなぁ…」

「ああ、あれは絶対大物になる。 お前の両親よりうまい交渉人になるかもな」

「犯人が朱希奈ちゃん見ただけできっと、すぐに籠城解放だろうな」

「ん~? なんか言った?」

「「いいえ、何も言ってません」」


コイツ、本当にあの刹那の妹なのだろうか……。

姉と妹のスペックが違いすぎるよ、絶対。


「そろそろ帰る?」

「ん~、そうだな。」


時刻は11時をさしたところ。

その話を聞いていたのか、海里はごそごそと荷物をまとめ始めていた。


「一星よ…。 キサマにこれを貸す」

「なんだ、コレ…」


手渡された本には『合コンでモテる必勝法厳選ベスト10』と

書かれていた。


「いや、いらねえよ」

「いや、お前は明日までにこれを読んでおく義務がある。」

「星、読んでおいたほうがいいよ?

 ただでさえ、あの場は空気が鎮まったり空気を乱す奴がいたら

 ダメな社交の場所なんだからね」

「なんで、お前が合コン詳しいんだよ…」

「呼ばれたことあるからね~……」


恐ろしく、その場の空気とか聞きたくなったが

たぶん、聞かない方がいい。 そして、怖くて聞けない…。

まぁ、朱希奈のことだ。 社交辞令は得意だから乗り切れたんだろうな…。


「まぁ、まぁ……。 一応」


二人にすすめられ、おずおずと手に取りカバンに入れる。

読んどいた方がいいのかな…。 やっぱ……。


「んじゃ、一星また明日な」

「じゃ、行こうか」

「お、おう……」


そして、微妙な気分の俺を置いてお開きとなった。

・・・。 帰ったらちょっと読んでみよう…。

簡単な人物紹介pert2 ※補足程度



琴吹(ことぶき) 朱希奈(あきな)

2年A組所属。 琴吹刹那の妹。

天文部部長を務める。


簡単な用語紹介


『スターday』

月刊雑誌。 毎月12日に発売。 星や天体を題材にしたコラムや

マンガ、トピックスがのってある。 一星、朱希奈、愛読の1冊。

朱希奈はお金を出すのが面倒なので一星に借りている。


『天体観測30時』

海里愛読の一冊。恋愛ものだが一部ギリギリのネタがある。

タイトルの由来は結ばれた男女が朝方6時まで一緒にいることから。


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