第27惑星の周回軌道上にて
無事第30級魔獣が討伐され俺たちが乗る船は、私兵団所有船1隻、このあたりを警備していた第27警備団所属船5隻の武装した船艦艇とは言いたくないに護衛され、魔獣がこれ以上近寄ってこないとされるセーフティラインと呼ばれる境目を越え第27惑星の周回軌道上にある星内進入用船が停泊している建造物に到着し星内船に乗り込むために船を下りた。
「皆、すまない助けに来てくれてありがとう。自警団はもちろんいち早く異変に気づき自警団に知らせ危険を省みず真っ先に駆けつけてきてくれた私兵達もだ」
船から下りた矢先トーラスは既に全員揃っていた私兵団と警備団のメンバーに礼を言った。
「だがなにより1番、俺が謝らないといけないのは……」
そう言うとトーラスは俺とトーリアのほうに来ると2人まとめて抱き締めた。
「すまない……領民のためにと護衛代を削って領民と同じぐらい大切な2人を危険な目に遭わせてしまった。今度からはしっかり護衛をつける」
俺にとって今回が初めてだからよくわからないが、トーラスはずっと前から護衛を付けず浮いた分を他に当てていたのだろう。
ただ今まではそれでも運良く大したことにはならなかった。だが今回は命を捨て俺、正確にはエーリアだけでも逃がそうとするほど切羽詰ま
っていた。トーラスなりに今回の件で思うところがあったのだろう。
「なに言ってるのトーラス。あなたが危険を冒してまで浮かせた資金のおかげで領地を豊かにすることが出来たのよ。今回は死ぬかと思ったけどもうそれは別に良いわ。だって私が惚れたのも貴方のそういうところなのだから」
抱擁を解いてもらい、1歩後ろに下がったトーリアは顔をやや赤らめながら微笑む。
「そうですよ、旦那様!私たち領民が雨漏り1つない家で明日の晩ご飯に困らずに暮らしていけているのもシュペー家の方々が無駄な出資をせず、倹約に努めその分を私たちのほうに回してくれているからです。そして今度からの護衛は微力ながら私たち私兵団に努めさせてください!もちろん護衛の報酬はいりません!」
今まで寸分たりとも動かず、黙って立っていた私兵団の内の人のよさそうな顔をした男性が前に進み出ると宣言する。
今だ俺を抱き抱えているトーラスは嬉しそうな顔をしたが、すぐにその表情は曇った。
「その言葉を領民から聞けることは領主として大変名誉だと思う。しかし護衛というものはとにかく危険が伴うものだ。それに俺達シュペー家が私兵達に与えられる船は旧式化してボロボロになったあれがせいぜい、しかもそんな危険な仕事に何の報酬もなく領民を動かさせるわけには……」
トーラスに抱きしめられながら俺は、ああこの人は本当に領地の人達の事を第1に考えていて領民の命は自分のそれより重いと思っている人なのだなと思った。だがそれと同時に助け合いよりも蹴落とし合いになることが多い場所では苦労することになるだろうなとも思った。
却下の言葉を告げられた私兵団は却下の言葉を告げられた瞬間、メンバーが1ヵ所に集まり数秒だけヒソヒソと話し合うと先ほどの人のよさそうな顔をした男性がまた進み出てきた。
「旦那様がどうしても報酬がなければならないと言うのでしたら、報酬はいただきましょう。ただ報酬内容はこちらで決めてもよろしいですか?」
意を決したように堂々と立ちながら雇い主であるトーラスに提案をする。
「ああ、もちろんそれで良い。ただし俺の手が及ぶ範囲しか払ってやれないからそこは分かってくれ。で報酬内容はどんなものにしたのだ?」
当然のように頷いたトーラスはそう言うとやや緊張した面もちで尋ねる。
「はい。護衛に伴う私兵団に支払ってもらう報酬は……そのとき護衛に就いた私兵達に葡萄酒を一杯、この第27惑星に帰ってきたときにシュペー家の方々と共に飲ませて頂くことです」
数秒間、ただ待機状態にある魔力供給機が静かに響くだけの間があった。
その間トーラスは無表情で必死に私兵達のその願いの真意は何か本当にそれを望んでいるのかを探ろうと思案しているように見えた、が
「えー本当にそれで良いのか?葡萄酒1杯よりそれと同じ値段の硬貨のほうがまだ使い勝手が良いと思うのだが……」
必死に考えたがそれっぽい答えが見つからなかったのだろう。
困惑した顔をしながらトーラスは聞き返す。
ここの葡萄酒がどんなものかも1体どれだけの値段するのかも検討がつかないが異常なほど高いわけではないだろう。
そう結論づけた俺も行動には出さなかったが頭の中で何故?と首をかしげていた。
「旦那様、確かに葡萄酒1杯よりそれに相当する硬貨をいただくほうが実用的ではありましょう。ただ私たちにとってはそれはただの葡萄酒ではありません。シュペー家から労働の対価として頂いた葡萄酒です。仕える家の方々と頂いた葡萄酒を飲まさせてもらうのは私たち仕える者にはとても名誉な事だと思うんですよ。旦那様が自由に決めてよいと言ってくれたので私たちはそれをもらうことにします。皆、文句とかはないよな!」
男性の言葉に同意するように後ろに並んでいる私兵達は頷く。
「わかった。君たちがそれで良いと言うのなら、俺はなにも言うまい。今度、皆と飲むため用に新しく葡萄酒を買っておかねばな」
シュペー家に対する信頼の厚さに驚きよりも照れのほうが勝ったのかトーラスは頭を軽く掻いた。
「さて、第27警備団の方々よ。待たせてしまったな」
私兵の護衛の件をまとめたトーラスは今まで黙って待機していた警備団のほうに声をかけた。
「いえ、主従の絆を間近に見れ嬉しく思います」
周りの警備団員とは違い帽子を着けていない男性が表情1つ変えずに応える。
「そうながしてくれるとこちらも対応に困らない」
そのトーラスの言葉に首をかしげる。
さっきの警備団のリーダー的な人の表情といい、トーラスの対応といい、シュペー家と警備団は何かしらの確執でもあるのだろうか?
「さてトーリアとエーリアは先に家に帰っておいてくれ。俺は警備団に今回の報酬の件について話し合わないといけないからな。すまないがオットー2人を屋敷まで送ってやってくれ」
俺の困惑をよそにトーラスは私兵達のほうを向きオットーと言う名の人を呼んだ。
「はい!」
トーラスに言われ進み出てきたのはあの人のよさそうな顔をした男性、名前はオットーだったのか。
「さ、こちらです」
人のよさそうな顔をした男性改めオットーに誘導され俺たちは星内進入船に乗り込んだ。
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