重低音
「……警戒されてしまったか、怖がらせてすまない。お詫びに私がその部屋まで送り届けよう。地図を見せてくれるか?」
怖がられたことが少しショックだったようでヘルセルは苦笑いする。
『お嬢様、ここは地図を見せたほうがいいと思うぞヘルセル自身も少しショックみたいだ。それにこのまま迷い続けるわけにもいかない。どうする?』
なんとなく年下の女の子に避けられるヘルセルがかわいそうになりこの状況を動かすためにも俺はエーリアに話しかける。
『わ、分かってるわよ!』
心の中で叫んだエーリアはその言葉とは裏腹におずおずとヘルセルにB4サイズの地図を渡す。
「……ふむここか、初等部の女子寮だな、ここから歩いて1時間、走って40分ってところだろう。君は方向音痴のようだしもう少し時間がかかるだろうが私が送るから大丈夫……出きる限り早く送ってやる方法……」
ヘルセルが腕組みをして考え込もうとしたとき艦艇の静かな給排気音に包まれた部屋の空気を蹴散らすかのような爆音が響いた。
『な、なに!?』
『こんな爆音、聞いたことないぞ!?』
「……あー……あいつら、そういうことか、まぁ確かにこれが確実で1番早い方法だな……」
和太鼓を打ったときのような胸にズシッとくる重低音の轟音にエーリアとなぜか俺もが耳を塞ぐ中平然とした様子で立って考察しているヘルセルは1人納得すると頷いた。
はぁ!?ちょっと待て!なに1人で納得してるんだ!?あ、だけど音がする方向……いや艦艇ってレーベだこの音からして……
ないはずの耳を精神的に塞ぎながら考えると不思議とある結論にたどり着くが俺はその考えを少し疑った。
「エーリア!今からその女子寮の近くの訓練場まで送る!あのレーベに乗るぞ!」
轟音に負けないように近づいてから声を張りヘルセルは言う。
確かにレーベの甲板までには梯子が掛かっておりこの重低音の大きさも機関始動時のものであるとわかるだがしかしこの世界の艦艇は重力圏内で自力で動くことができないはずだ。
エーリアも同じことを思ったようで両手で耳を塞ぎながらもヘルセルに問い返す。
「そんなこと言ったってここは重力圏内ですよね!シュネーブ船が曳航しないと移動できないはずです!」
その言葉を聞いたヘルセルは薄く微笑む。
「確かにそうだな、まぁとりあえず乗ってくれ。話しはその後でも良いだろう?ここじゃ大声で喋らないといけないしな!」
そういうとヘルセルはエーリアの手をとり先に甲板に登ると手招きをした。
『ま、乗り掛かった船とか言うじゃないか。それにこれ以上迷うわけにはいかないだろ』
その言葉に対する返答はなくエーリアは梯子に足をかけスルスルと登りあっという間に甲板に着いた。




