方向音痴
舞い散る粉塵が晴れてくるとそこにあったはずの壁はなくなり直径15メートルもの巨大なクレータができていた。
「ケホッ、思った以上の威力だったわ」
「景気づけにと作ったやつだったが、水蒸気爆発がここまでの威力になるとはな。急いで防御魔法を張っといて良かった」
並みの魔法攻撃もちろん物流攻撃をものともしない高位の防御結界を張りエーリア達よりも離れた場所にいた試験官すら吹き飛んだ中エーリアたちは文句を言いながらもへいぜんと立っていた。
「で先生判定はどうでしょうか?入学できますか?」
ポンポンと僅かに制服に付いた砂埃を払うとクルリと後ろを向き言う。
「あ、ああもちろんだともここに書かれている部屋に行きなさい」
あまりの出来事に吹き飛ばされた後も放心していた試験官はビクッと痙攣するとばね仕掛けのように立ち上がり1枚の地図をエーリアに渡す。
「ありがとうございます」
試験官に1礼したエーリアは地図を確認しながらパルテノン神殿のように大きな学園の中に足を踏み入れたのだが……
「ねぇ照本……ここ、どこかしら?」
エーリアは肩をプルプルと震わせながら俺に尋ねる。
場所はまったく人気のない学園の廊下のどこか。
「どこって、まさか……お嬢様まさか道もわからずに進んでたのか!?」
驚いたせいで俺は制御を誤り体がいつも浮かんでいる高さから外れ通常より高く飛んでしまう。
「仕方ないじゃない!あそこまで派手に壁を壊して目立ってしまったのよ!?カッコつけてスタスタ歩いてるうちに道がわからなくなったのよ!」
逆切れしたエーリアは『リトルスパーク』で俺の体を引き戻しながら言う。
「お嬢様があまりにも堂々と歩いてるせいで忘れてたが……お嬢様は方向音痴だった……」
落ち着きをいまいち取り戻しきれていないエーリアの横顔をちらっと眺めて俺は金属で出来た体なのに無性にため息をつきたい気分になった。
「まぁわかったから落ち着け。とりあえず『聴覚強化』でも使え。俺が使った方が早いだろうがトリガーは絶対に主人が持つことになっているようだからな」
全然落ち着けていないエーリアに代わり基部から制御術式まで全て構築し待機させエーリアが使用するのを待つ。
「分かってるわよ『聴覚強化』!」
周囲の魔素がマナへと変換され聴覚強化が発動する。
「よし、発動したな。お嬢様とりあえず人の声がするほうに進もう。人がいれば道もわかるはずだ」
エーリアの魔法により強化された耳を頼りに行きついた先は恐らく1つの空間としては最大を誇るであろう場所だった
「凄い……シュヴァルベ級巡洋戦艦の4番ロンディネ、エンテ級巡洋艦の2番艦アナトラ、ライアー級駆逐艦の3番艦エロンそれにレーベ級戦艦の1番艦レーベ……30年前に騎士団所属だった主力艦艇に準主力艦艇の筆頭たちだわ!練習艦として学園に譲渡されたとは星間通信社の記事で知っていたけど本当だったのね」
学園最大の場所それはドックだ学園にそれぞれ二つずつある露天式ドックと覆いが取り付けられた密閉式のドック。壁にでかでかとペンキででかでかと書かれているのは『密閉ドック1』
入学前に速達で届いた学校の施設案内に書かれていたことが確かなら最も遠い場所に来てしまったことになる。
「おい!そこのお前!何してるんだ!」
突然の怒鳴り声にエーリアは体を震わせ、俺はエーリアの肩にドスンと落ちてしまった。




