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第3話 募集要項


 私とミナは新たな仲間を募る為、最寄りの街――メグニアーーにやって来ていた。




 メグニアは王都からは離れているものの、十分に栄えた交易都市だった。


 中心産業は交易を目的に立ち寄る商人や旅人を客層とした宿泊業や近辺のダンジョンから採れる魔石の輸出を主としている。魔石は協力な魔物から採掘される為、結果的に冒険者ギルドもそこそこ栄えている。私の目的にはピッタリだ――――とミナが教えてくれた。本当に頼りになる。




 私とミナは早速、ギルドに出掛け、受付にパーティの登録申請と新たな冒険者申請を同時に行う。申請はすんなりと通って、書類の提出もすぐに終了した。




「それで……どんな募集要項でメンバーを募集したの?」


 受付はパーティのリーダーが行う事が通例であった為に、私が行った。リーダーなんて大層なモノ、私には似合わないと主張したが、ミナ曰く「目的がある人がリーダーになった方が良い」との事で押し切られた。




 よってミナは冒険者ギルドの待合室にてお茶を啜りながら待っていたのだった。




 そんなミナに対して、私は募集要項の書かれた写しの紙を見せる。




 紙に書かれていたのは次のような文字。




『パーティメンバー募集! 特に強い男性は大歓迎! 今ならリーダーを務めるイヨ=クーデリアちゃん(十七歳)との模擬戦闘に勝てば、彼女に何でも一つ言うことを聞かせちゃえる権利が与えられる特典付き』






「どう!? 特典があれば皆たくさん募集に来てくれると思ったんだけど!」




「うん、こんな募集で来る奴は死ねば良いと思う」




「何で!?」


 いきなり盛大なダメ出しを喰らってしまった。




「どうしてなの、ミナ!?」




「むしろどうしてこれで良いと思ったのかを聞きたい」




「え、……だって私の目的って私より強い男性との婚約じゃないか。それならこういった条件を提示した方が私にとって特じゃないか。でも、条件ってなら躊躇すると思って、逆に特典って体にすれば気軽に募集に来てくれるかなって」




「もう一度言うわ。頭おかしいのか、テメェ」




「もう一度どころか、より強い罵倒になって返って来たんだが!?」


 ミナは深く溜息を吐きつつ、頭を抑えていた。




「良い、イヨ。この募集要項は考え得る限り、最悪です。一体どこが悪いのか分かるかしら?」




「…………………………、文字が下手なところ」




「確かに虫がダンスしているかのような下手な文章だけれど、そこじゃないわ。そうじゃなくて」


 ミナが私を見つめる目はまるで虫でも見ているかのようだった。




 何が一体お気に召さなかったのだろう、本当に訳が分からない。




「イヨ、あんたね、女の子が『何でも言う事聞く』なんて条件で募集を掛けたら、どうなると思う? どう考えても禄な相手が集まる訳ないじゃないの!」




「どうして? 確かに私に出来る事なんてたかが知れているけれど……それでもちょっとした頼みなら聞いてあげられるよ?」




「……例えば?」




「えーと…………、…………修行に付き合ったり、とか」




「…………イヨは子供はどうやって作るのか知っている?」




「え? そう言えば昔、村に訪れていた商人だかがベッドでダンスすれば自然と子供が生まれるとか何とか……、つまり神聖魔法か、または特定の儀式による副産物で出来るのが子供という事か」


まさか習得の難しい神聖魔法が使えないと子供が出来ないなんて世のお母さん達は皆険しい修行を頑張ったんだなぁ、大変なのに偉いなぁ。




「……、あたし、あんたのそう言う女の子とは思えないレベルの知識量しかないところ好きよ」




「憐れみの目で見られている!?」


 一体何故!? まさか呪術、あるいは創造魔法によるものとか!?




「そう言うミナは知っているんだよね? 本当はどうやって子供を作れば良いの?」


 私がミナにそう尋ねると、ミナは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。そして、明後日の方向を見ながら、




「……ベッドで天井を見ていれば、気付いた時には子供が出来ているのよ」


 と答えた。




「成程、ベッドで寝ている時に不意に発生する召喚魔法の類か。寝ている時に子供が出来ている可能性もあるから注意しておこう」




「ソウネ」


 ミナは何となく棒読みを感じさせるような音程で言う。




「それはともかく。貴方、さっきの募集要項の書かれた申請書は取り下げて貰ってきなさい。本当に禄な事にはならないから」




「え、でももう転送魔法の使える手紙屋さんにお願いしちゃったから、さっきの申請書は少なくとも近隣のギルドには送付されちゃったよ。いやー、こんなところに優秀な手紙屋さんが居てラッキーだったよ、はっはっは」




「それを先に言えぇええええええええええ!!!」


 その後、ミナは受付にまるで矢のように飛んでいったかと思えば、暫く経ってトボトボと帰ってくる。




「……やっぱり今から申請書を回収するのは無理だって。あぁ……一体どうなるのかしら」




「大丈夫だよ、ミナ。きっといっぱい集まってくれるよ。早く婚約者が決まって、ミナと気楽な冒険が出来ると良いね」




「…………ちなみにあんた、婚約者って何か分かってる?」




「え、あれでしょ? ベッドで一緒に寝る事になる相手…………ん、それならミナは私の婚約者?」




「そうね、私は割と頻繁にあんたとベッドで寝ているしもうあんたの婚約者って事で良いんじゃないかしら、うん、そうよね、そうしましょう」




「あ、でもミナは私よりは弱いから駄目だよ。あれ、じゃあベッドで一緒に寝るってどういう……」




「………………、イヨ。もうあんたは余計な事は考えないで良いわよ」




 物凄い落胆した表情を浮かべるミナ。




 どうしたのだろう、お腹でも空いてるのかな? それなら普段から世話になっているし、今日は御馳走を奢ってあげよう。




 ちなみに御馳走を頬張った後、ミナは「今日は一緒に寝るわよ」と頑なな様子で私のベッドに潜り込んできたのだった。



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