退治7
見覚えのある景色だ。
だが、誰もいない。
なにもない世界。
「・・・・・・おにぃちゃん」
声は背後から届く。
振り返れば、砲竜が1匹。
・・・・・・・・・、この世界じゃ全員が人間の姿をしていたはずだった。
そのせいで認識が遅れる。
「・・・どうして?」
しかも、そのまま後手を取らされちまった。
「もう、やめようよ・・・」
「・・・そいつは無理な相談だな」
「どうして?」
「ここでアイツを見逃せば、同じことをしでかすからだ」
「なんでそんなこと、言い切れるの?」
確かに、証明はできねぇだろう。
ただそれでも。
「ここがどこかはわからねぇが、今はそんな姿なんだな」
「・・・気が付いた時には、この体の中に居たの」
「元がドラゴンだから、近い姿に引っ張られたのかもな」
「そう、なのかな? でも、それがなにか関係あるの?」
「どうだろうな? ハッキリとはわからねぇさ。ただ、この世界は精神――つまり心を写してるんじゃねぇか?」
「心を・・・?」
「モノがないのは、そういうことなんじゃねぇかと思ってな」
遠くを見る。
いや、見ようとする。
目に映るのは白だ。
地平線すら見えやしない。
「だとしたら・・・だとしたら、どうして・・・おにぃちゃんは―――」
「アイツは精神を現実に干渉させられるほど濃く描いた。にもかかわらず、アイツは飛べねぇんだよ。翼があって、肉体は空を飛ぶのに・・・だ」
「それが・・・、どうしたの?」
「地に足がついてるって言やぁ聞こえこそいいが、縛られてるんだよ。自分の考えに。社会から浮いてる自覚がねぇのさ。その上で、飛べねぇほど心が重くなっちまった」
世界を変える方法は2つしか存在しねぇ。
1つは自分の認識を変えること。
もう1つは、自分以外の認識を変えること。
重くなって、凝り固まった考えを新しくするのは難しい。
外から捻じ曲げるのは不可能に近い。
俺達の関係性から考えれば、まず無理だ。
「そ――っかぁ・・・・・・」
俺には砲竜の顔から表情を読み取ることができない。
細められた目に帯びる感情さえもだ。
「お前はどうしたい?」
どうしたかったのか、なんてのは訊いたって仕方がねぇ。
コイツは妹だった。
アイツの・・・そして、ほんの僅かとはいえ――俺の。
兄を助けたい。
それが最優先だったはずだ。
数多の精神が自我を失い、自立するだけの人形になるまでの時間の中でも、兄を探し続けたほどだからな。
だがそれは叶わない。叶えられない。
だから。
「・・・・・・それならね、私は―――」




